ここまでするぞ!働き方改革 休暇中は業務連絡NG 仕事終われば30分前退社 全社員の前で副業公言

総合ここまでするぞ!働き方改革 休暇中は業務連絡NG 仕事終われば30分前退社 全社員の前で副業公言

働きやすく、働きがいのある職場をどうすればつくれるか。働き手不足に直面し、企業は働き方改革に知恵を絞る。とかく常識に縛られがちな大手と異なり、自由な発想で大胆な施策を打ち出し、成果を上げている会社がある。今後の働き方の変化を知るヒントがそこに隠れている。

終業20分前に同僚にあいさつして繰り上げ退社する近藤充弘さん(右)(東京都中央区、ランクアップ本社)

終業20分前に同僚にあいさつして繰り上げ退社する近藤充弘さん(右)(東京都中央区、ランクアップ本社)

「オフシーズンのバリ島の旅行代金はピーク時の半分程度。観光客も少なく、妻と2人で思い切り満喫できた」と、IT企業、ロックオンに勤める遠藤良さん(32)は笑顔で話す。今年1月末に会社の「山ごもり休暇」を使って、季節外れのバカンスを楽しんだ。

同制度は全社員に年1度、連続9日間の休暇を義務付けているもの。休暇の強制取得なら他社でも聞くが、同社がユニークなのは仕事に関するメールや携帯電話のやり取りを禁止していることだ。休暇中は会社との連絡を完全に絶つ。「山ごもり」と名付けた理由がここにある。

遠藤さんはエンジニア。365日24時間システムは休みなく稼働しているので通常なら何かあればすぐに連絡が来る。「仕事の連絡が絶対に来ないと分かっているのでリフレッシュに集中できる」と話す。

同社は2001年設立。創業期は有給休暇も取らずに皆、よく働いた。だが全力疾走を続けていてはいずれ社員は疲弊して生産性が逆に落ちてしまう。そこで11年に「山ごもり休暇」を導入した。連絡を絶つために休暇前に担当業務を同僚らに完璧に引き継ぐ。それは社員一人ひとりが年に1度仕事を棚卸しすることにつながった。

休暇中を任された同僚が新鮮な目でその仕事を見直すことで、業務の無駄に気付くこともある。「心身のリフレッシュに加えて、仕事の属人化を防ぎ、業務の効率化が図れている」(人事部)

「お先に失礼します」。化粧品の開発・販売を手掛けるランクアップ(東京・中央)では午後5時を過ぎると、社員が次々と帰途に就く。正式な終業は午後5時30分。だが、その日の仕事を終えていれば30分繰り上げて退社できるルールがある。効率よく働く意識が社内に浸透しているので社員の残業はほぼゼロだ。

経営戦略室マネージャーの近藤充弘さん(45)が時計の針が午後5時を回ると、そそくさと帰り支度を始めた。「週の半分は終業時間を待たずに帰る。家で愛犬が待っている。早く帰って妻と散歩に連れて行く」。09年に入社。転職前の勤務先では夜9、10時まで当たり前に働いていた。「今は残業をしない分、日中に集中して働かなくてはいけない。ただ退社後に社外研修に出るなど時間を有意義に使えるので、むしろ成長できている」と話す。

ネット事業を手掛けるエンファクトリー(東京・渋谷)は専業禁止を掲げて、社員に副業を推奨する。ペット用品のネット販売やコーヒー豆の輸入、防災コンサルタントなど社員約20人のおよそ半数が実際に副業を持っている。加藤健太社長は「事前相談や申請はいらない。副業も貴重な成長機会。スキルが向上したり経営センスが磨かれたりすれば本業で会社への貢献が期待できる」と話す。

裁量労働制やフレックスタイム制度、在宅勤務などを導入しているので、成果を上げていればいつどこで働くかはもともと自由。なので副業をしやすい。唯一の条件は半年に1度、副業の状況を全社員の前で報告することだ。「公言することで責任感が高まる。本業がおろそかになったケースはない」

政府は3月に働き方改革実行計画をまとめた。同一労働同一賃金の確保や時間外労働の上限規制、テレワークの導入支援、兼業の推進など19項目の対応策を盛り込んだ。国を挙げて働き方改革に取り組む背景には生産年齢人口(15~64歳)の減少がある。国の推計によると15年の生産年齢人口は7728万人に上るが、今後20年で約1200万人も減ってしまう。

人手不足は将来の懸念ではない。リクルートワークス研究所(東京・中央)でサービス業の働き方改革を調べる研究員の城倉亮さんは「働き手が就業スタイルを調整するのではなく、働き手の都合に合わせてビジネススタイルを見直さないと人を採用できなくなっている。いずれは同様の問題が大手企業でも起きる。前例にとらわれず、大胆に働き方改革をやらなければいけない」と助言する。