賃上げムード先行、後追い労組に戸惑い 雇用不安で

総合賃上げムード先行、後追い労組に戸惑い 雇用不安で

政府が賃上げを要請し、一部の大手企業が前向きな姿勢を見せたことで来年の春季労使交渉に向けて賃上げムードが高まっている。本来は歓迎すべき立場にある労働組合側は後追いの形となり、ムード先行に戸惑い気味だ。背景には長期的な雇用へのぬぐえない不安がある。

記者会見する連合の古賀会長(24日、東京都千代田区)
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記者会見する連合の古賀会長(24日、東京都千代田区)

 「一切関係がない。我々が主体的に議論してきた結果だと理解してほしい」。5年ぶりのベア要求を打ち出した連合。古賀伸明会長は24日の記者会見で、デフレ脱却を掲げ政府が繰り返し賃上げを要請していることと、今回の連合の方針とは無関係だと強調した。

 傘下にある産業別組合、企業別の単組はともに表向きには静観を貫いている。産別は例年、基本方針を年明けの1月に決定。単組はこれを受けて要求を決め、2月に経営側に提出する段取りだ。この間、組合員からのボトムアップで議論するため、この時期の「舌戦」は尚早と映っているようだ。

 それでも、産業界の労使交渉に影響力を持つ日立製作所の川村隆会長らがベースアップに前向きな姿勢を示すなど賃上げムードはすでに高まっている。産別の多くもベアに相当する賃金改善を掲げる腹は固めている。

 ただ、心中は複雑なようだ。日本企業の業績は足元で上向いているが、その主因は円安や海外事業の伸長。国内の生産や販売が大幅に伸びたわけではない。連合も傘下組合も長期的な雇用確保が最大の使命。過度な要求は会社の経営を圧迫し、自らのクビを絞めるとの懸念は、長く続いた景気の低迷で労組に染みついた。

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 「賃金は安易に上げたり下げたりする性格のものではない」(トヨタ自動車労組の鶴岡光行執行委員長)。国内は人口減で右肩上がりの成長を前提とできないだけに、体質は闘争型から協調型へと変化しつつある。

 経団連の試算によれば、国内全産業を合わせた企業内の余剰人員は465万人(11年末時点)。年金改革を受けて60歳以上の継続雇用比率を現在の74%から90%に高めれば、今後5年間で賃金総額は2%増える。社会保険料の増加も企業経営に重くのしかかる。

 自動車各社の好業績を受けて、自動車総連はベア統一要求を検討するが、三菱自動車は再建途上、マツダも無配が続く。日産自動車が主力車種の生産を海外に移管するなど、長期的な国内雇用への不安は消えていないのが現実だ。円安でも海外への生産移管の流れは変わらない。「目先のことと生涯のものを比べるのか」。大手自動車労組の幹部はつぶやく。