総合若手の退職を止めたいなら「嫌な上司」を探し出せ
厚生労働省が2016年10月に発表した調査によると、新規学卒者の3年以内の離職率は大学卒業者の場合30%以上、短大や高校など卒業者の場合は40%に上ることが報告されている。この比率はここ20年ぐらい大きくは変化していないにもかかわらず、最近、企業が第二新卒の採用に注目している。
第二新卒採用における課題、さらに、採用した後の退職を防ぐ方策について、第二新卒に特化した人材紹介事業を展開しているUZUZ 代表取締役 今村邦之氏に話を聞いた。
UZUZ 代表取締役 今村邦之氏
──近年、第二新卒市場に企業が熱い視線を送っていると言われています。第二新卒が注目され始めた時期やきっかけについて教えてください。
今村氏:我々が第二新卒市場が熱くなってきたと感じたのは、1年ぐらい前からで、今もその熱は高まっています。これは当社への企業からの問い合わせはもちろん、第二新卒の受入れ企業の増加からも明らかです。また、当社のサービスの登録者数もここ1~2年で一気に増えました。UZUZの設立当初(2012年)の紹介手数料はかなり抑えられましたが、今は中途採用の一般的な紹介手数料同様、年収の30%が当たり前となりました。
第二新卒が注目される理由の1つは、時期を問わず年中採用できること。ただ、追い風が吹いているかというと、新卒採用ほどではありません。第二新卒を採用している企業の割合は10%以下だと思います。
──第二新卒を積極的に採用しているのはどのような企業なのでしょうか。
今村氏:IT、医療、飲食、介護、建築などの業界で第二新卒採用のニーズが高まっています。これらの業界はいずれも人材が足りていないからです。首都圏では、特にIT業界が顕著です。IT業界は新卒・第二新卒、中途も採用ニーズが高まっており、これまでは理系出身者に限定して採用していた企業が、文系出身でも素養があれば採用するという方向に進んでいます。
第二新卒を採用している企業に共通しているのは、働き方の制度や教育制度をしっかり整備しているところです。
──そういう企業では第二新卒は「新卒の代わり」という位置づけなのでしょうか。
今村氏:第二新卒を「新卒の代わり」として扱う企業と、「新卒のちょっと先輩」といったように「中途の代わり」として採用する企業とに分かれます。
ただ、研修に関しては中途と同じ扱いをする企業が多いと思います。というのも、新卒の場合は、最初にビジネスマナーに関する研修を行った後に、その企業の理念や事業、業務に関する研修を行い、OJTに進みます。
一方、中途の場合は、その企業に関する研修を受けたら、OJTに進みます。第二新卒と一口にいっても1年未満の人から約3年の経験のある人までさまざまですが、ビジネスマナーの研修は前職で受けているはずです。したがって中途と同様の研修内容を採用しているところが多いです。
若手の退職を防ぎ成長を促す「4段階指導」
──第二新卒採用における課題について教えてください。
今村氏:第二新卒採用に限った話ではないのですが、1~2人の少人数しか採用しないような企業では、「若手に同期ができないこと」が課題です。
同期がなぜ必要かというと、同じ境遇の仲間と話すことで、仕事に対する不安を払拭することができ、その絆が強ければ強いほど退職率の低減につながるからです。しかも直属の先輩や上司との世代間ギャップがある職場だとなおさら重要になります。理想を言えば、第二新卒採用でも、一度に5人ぐらい採用し、「同期」をつくることが望ましいですね。
──第二新卒を5人まとめて同じ時期に採用できる企業はあまり多くないのではないでしょうか。
今村氏:そうなんです。中小企業の場合、一度に5人も採用できません。そこで重要なのが、若い層をミドル層とつなげるための仕組みです。その一例がメンター制度です。
──今村さんが考える「メンター」とは、どういう存在なのでしょうか。
今村氏:メンターは、仕事はもちろん、プライベートなことまでも面倒を見る存在です。チューターのように個人的に指導をすることなく、対話することでメンティー(メンターから指導を受ける人間)が自発的に気づきを得て成長していくことを目的としています。
成長を促したり、気づきを与えたりする段階には、「カウンセリング」「ティーチング」「コーチング」「権限移譲」の4つがあります。
「カウンセリング」は、指導における第一段階です。メンターがメンティーの悩みを聞いて相談に乗ったり、前向きに働くイメージの形成を助けたりする段階です。
第二段階は「ティーチング」。これは、具体的業務やテクニカルな知識、業務におけるさまざまな「判断の仕方」を教える段階です。ある程度自分のメンタルと向き合いながら働けるようになった人には、こういった指導が始まるわけです。
第三段階が「コーチング」。ここでは、「ティーチング」とは違い、メンターから答えを提示することはしません。「今、我々はこういう状況にあるけれど、君はどう思う?」といったように、メンターは「メンティーの考えを引き出すこと」に専念する段階です。
そして最後の段階が「権限移譲」です。つまり、メンターがメンティーに「仕事を任せる」段階です。
メンティーの成長度合いにもよりますが、メンターの主な活動はカウンセリングとティーチングです。「この会社で働いていくイメージが持てない」「集中力が続かないとか」など、そういった心の悩みを解決するときは、カウンセリングをします。仕事を円滑にする上でのテクニックに関して教える際はティーチングを行います。
とはいえ、メンティーはこの4段階を一方向に進むのではなく、行ったり来たりしながら徐々に成長していきます。そのため、メンターには忍耐強さと寛容さが必要です。
評価制度にも「若手仕様」が必須
──そのほかにも課題はありますか。
今村氏:もう1つの課題が「若手を育てていこうとする文化」の醸成です。教育制度だけでなく、評価制度も若手に合わせた制度になっているかを見直すことが必要です。
──「若手を育てていこうとする文化」は評価制度によって支えられるということですね。
「若手とベテランでは評価されるべき内容も異なる」という
今村氏:そうです。評価制度は画一的なものではありません。40代も20代も同じ項目で評価ということでは成り立ちません。
評価には定性的評価と定量的評価があります。定性的評価では仕事に取り組む姿勢や努力など数字に表せないものを評価すること。一方の定量的評価は業績など数字に対する評価です。
定性的評価と定量的評価の割合を年代によって変えていく。たとえば入社した年は定性的評価のみとし、1年、2年と経験年数が増えていくにつれ、定量的評価の割合を増やしていくんです。40代になると定性的評価の割合は2割で、8割を定量的評価にするという具合です。
第二新卒の退職を止めたいなら「嫌な上司」を探し出せ
──やはり若手が定着しない企業は、「採用時のミスマッチ」よりも、採用後の教育といった「採用後の運用」に問題があるということでしょうか。
今村氏:以前は、「採用」でミスマッチがなければ8割が定着すると言われていました。しかし今は、入社後の「運用」が大事だと言われています。
──ではまず、採用の際に企業が力を入れるべき点をお教えください。
今村氏:外部への見せ方に力を入れた方が良いです。求職者が企業探しをする場合、ほとんどはまず該当企業のホームページを見ます。どういう事業を営んでいて、どういう沿革で今に至っているのか、どういうことを目指しているのか。それがきちんと書かれていることで、その企業に興味・関心を抱き、入りたいという気持ちが生まれます。そこをサボっていると、応募者は増えません。だからまずは過去〜現在〜未来の成長戦略と、働いているメンバーの露出を綺麗にすることです。それができたところで、どんな人事や労務、給与制度を用意しているかを明らかにすることです。
──では、定着率を上げる為にはどのようにすれば良いでしょうか。
今村氏:出来る限り意思決定プロセスに巻き込む事が重要かと思います。取締役はもちろん、各部門のキーパーソンが集まり、まずは自分たちの企業について議論する。その上で営業戦略や採用戦略について決めていくのです。
もう1つ定着率を上げるために有効なのは、過去の退職者が退職した本当の理由を把握し、改善に努めることです。
退職者が本音で退職理由を話してくれるかどうかは、日々のコミュニケーションの密度にかかっています。週に1回ぐらいの割合でそれなりに長い時間をとって若手と定例ミーティングを設けることです。時間が長ければ、仕事の話がやがて尽き、家族や個人の話に発展していくからです。仕事だけではなくプライベートなことまで話し合える環境を作っておくことが大事なんです。
──とはいえ、言いにくい退職理由もあると思います。
今村氏:「上司が嫌だった」というような理由はなかなか口に出せないですよね。そういうどろっとしたことも、吐き出せるような仕組みを作ることが本来、大事なんです。当社の場合は目安箱を設置したり、性別や役職別に仕事や制度に対する不満を自由に発言するぶっちゃけ大会を定期的に開催しています。
ここで大切なことは、「嫌な上司」をそのままにして若手社員の退職を放置するのではなく、「嫌な上司が『嫌な上司』と言われる理由」を紐解き、前向きに改善し、退職を防ぐことです。
こういった場合、次の3つの方法があります。(1)直接言う。(2)指摘する役割・ポジションの人を置く。(3)サーベイ(アンケート)を実施して、その結果を本人に伝える。
(1)はそのままですね。ですが、これができる職場では「嫌な上司」はそもそも問題にならないですね。(2)は、担当者が仕事として改善点を当事者に伝える。指摘する方もされる方も「仕事」と割り切って改善に取り組めます。とはいえ、これもベテランがその役割に就くのか、若手が就くのかで中身が変わってくる可能性があります。仕組みとしては良いのですが、実際のところ運用が難しい。そうなると、多少手がかかりますが、(3)のサーベイがやりやすいかもしれません。
女性社員の8割に「マネジメントが最悪だ」と評価された管理職を抱える会社の相談に乗ったときに、3つめの「サーベイ」をお勧めしました。その会社ではサーベイを実施し、「最悪だ」と言われる理由を本人に伝え、自分を変える材料にしてもらいました。すると1カ月後には本人の意識が変わり、今では彼のマネジメントを「最悪」と言う人はいません。
──管理職やベテランに「改善の余地があること」を伝え、前向きな改善を促す制度を作ることが、若手の定着率改善につながるということですね。
今村氏:その通りです。サーベイでは、どれくらいの人数からどのような問題が指摘されたかなど伝えることが大切です。こうすることで、職場の雰囲気を悪くする根っこを見つけ、改善していくことができるでしょう。ただ、この方法もやはり「運用」が肝です。目的は「組織を良くすること」であり、「嫌われ者をあぶりだして糾弾すること」ではありません。一貫して「前向きに組織を改善すること」を意識することが何よりも重要です。
求職者には積極的に退職者の退職理由を伝えるべき
──サーベイでは、ネガティブな情報を伝えることでプラスの効果が得られるということですね。これは求職者に離職率や退職理由を明らかにすることにもつながりますね。
今村氏:求職者は働き方を知りたがっています。だからこそ、退職理由を開示することがお勧めです。
求職者からしたら、自分がこれまでの退職者のようになるかもしれない、という不安があるわけです。理由を開示することで、求職者は「そういう理由なら自分はあてはまらないだろう」と安心できたり、「改善が進んでいるんだ」とポジティブな印象を受ける。もし、「自分も以前の退職者のようになりそう」と思う求職者がいるなら、その方には入社していただかないほうがお互いのためかもしれません。
もちろん、ここでも重要なのは「本当の退職理由」を公開することです。自社に都合のいいようにアレンジした退職理由をお伝えするのはお勧めしません。本末転倒です。また残業時間や休暇日数、給与体系などもしっかり提示した方が良いでしょう。
──ベテランしかいない職場では、特に若手の採用・定着が難しいと思います。そういった企業での採用のコツを教えてください。
今村氏:モノづくりの会社で成功しているケースは、若手を採用するのと同時にベテランをも凌駕するようなスキルを持つシニアを1人入れるという方法です。シニアは若手を育成したいという思いがある。一方、若手もプロから教わりたいという要求がある。つまり両者のニーズが合致するのです。このような採用をすると、私的な面でのコミュニケーションは難しいですが、仕事でのコミュニケーションは活性化します。
最近、エッセンスやサーキュレーションという顧問を派遣する会社が急成長しているのもこれが理由です。トップの意識改革や硬直化した組織を変革することもできます。
──最後に第二新卒の採用を検討している企業、若手の退職防止に取り組んでいる企業へのメッセージをお願いします。
何より大切なことは「前向きに改善すること」だと語る今村氏
今村氏:退職者が出たという事実を退職者のせいにしたり、採用がうまくいかないのを求職者のせいにしてはいけません。定着率が上がらなかったり、採用がうまくいかない原因は、その会社の露出の仕方、教育制度、働き方にあります。どこに問題の根っこがあるのか、他社と比較してそれを見つけること。採用がうまくいかないのは、マネジメントに原因があるということを肝に銘じてください。
退職者と求職者に問題の原因を求めるマインドでは、いつまでたっても定着率も採用も改善できません。何においても「前向きに改善すること」が最重要課題であることを忘れないでください。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。
