部下からの「突飛な相談」にどう対応するか?~ヤフーの人材育成「1on1」の舞台裏

総合部下からの「突飛な相談」にどう対応するか?~ヤフーの人材育成「1on1」の舞台裏

人事の領域で職場内コミュニケーションの手法として関心を集めつつある「ヤフーの1on1」ミーティング。部下が明らかに間違っていたり、常識に照らして突飛なことを言い出したとき、あなたはどのような反応をするだろうか。頭ごなしに叱ったり、非難じみた発言をしてしまうこともあるかもしれないが、少し我慢が必要だ。

部下は、どうしてそんなことを言い出したのか、その理由・背景を聞く姿勢が信頼感を生み、ひいては成長へと導くことになる。

批評するより大事な
「部下がなぜそう考えたのか」

今回は、「レコグニション」についてです。今のところ上手くピタッとはまる日本語が思い浮かびません。「認知」とか「承認」とかを当てはめてみるのですがシックリせず、 結局カタカナに頼ってしまいます。そして、説明を付け加える羽目になります。あるいは状況例をたくさん挙げて、徐々に感触をつかんでもらうことになります。

今回は、ひとつの状況例を紹介することにします。まずは以下2つの対話例を読み比べてください。

【対話例A】
部下:「S社からの受注の件ですが、納期を遅らせてもいいですか?」
上司:「ダメだよ! S社は最重要の取引先なんだから」

【対話例B】
部下:「S社からの受注の件ですが、納期を遅らせてもいいですか?」
上司:「え!? 何かあったの?」

S社は自社にとって最も重要な取引先です。ですから、S社への対応は、他のいかなる仕事よりも優先することが原則となっている職場です。その状況で、部下が上司にこのような相談をしてきた状況を思い浮かべてください。部下のこうした発言に、第一声でどう対応しているかという違いを表しています。

結論から言うと、対話例Bのほうではレコグニションが機能しています。常識ではあり得ないことを言い出した部下に対し、対話例Aの上司は正しいことを言っているのだと思います。バカなことを言い出した部下を指導しているとも言えます。

一方で、対話例Bでは、部下の意見や判断について良し悪しを判定する前に、どうしてそんなことを言い出したのか、その理由・背景を聞くほうへ対話を進めています。

どうせ間違っているのだから、早めに正してあげたほうが時間を節約できると考えるかもしれません。しかし、対話例Aでは、少なくとも以下2つのデメリットがあります。

(1)部下は、少し型破りなアイディアを思いついても、どうせ話を聞いてもらえないなら相談する意味はないと感じるようになる

(2)部下は、経験豊富な上司にかなうわけがないので、自分自身であれこれ考えたところで仕方がないと考える癖がつく

(1)なら特定の上司部下の関係性を機能不全にするだけで済みますが、(2)だと部下のキャリアをつぶしかねません。上司がすべきことのポイントは、部下の判断が間違っていると感じつつも、まず先に「部下がなぜそう考えたのか」を明らかにすることにあります。

指示するのは、たいてい後でも間に合います。部下に事情を話してもらうのに、実際1分かからないでしょう。つまり、「ああ、だからそう考えたわけね」と理解するまで付き合えるだけの余裕があるかどうかが、部下を育てられるか否かの分かれ道になります。

頭ごなしに言わなくても
表情が語ってしまうことがある

もう一度、上の2つの対話例を見比べてください。そして、この後に続く部下の発言や行動の可能性を想像してみてください。

対話例Aでは、もはや部下から返す言葉はありません。したがって何も生まれません。一方で、対話例Bでは、部下が自らの考えを示したり、話しながら次の行動を思い浮かべたりできます。

たった2行のやりとりで、これだけ明らかな差が出てしまいます。日々膨大なやりとりのある職場で、この差が積み重なったらどうなるか、想像するだけでワクワクしてきませんか?

ここで別な視点から説明を加えます。読者の中には「こんな頭ごなしに言ったりはしないよ」と思う方もいるでしょう。しかし、言葉がなくても、表情が語ってしまう場合があります。

文字だけだとわかりにくいですが、対話例のAとBとでは、おそらく上司の表情に違いがあります。

対話例Aの上司は眉間にしわが寄っています。それに対して対話例Bでは、上司は眉が上がって目を見開いています。仮に言葉を発さなかったとしても、部下に伝わるメッセージは AとBとではっきり差が出てしまうのです。

さて、最後にもう一つだけ、別な観点から捉えておきましょう。対話例の部下が、ちょっと頼りない部下だった場合と、普段から優秀だと認められている部下だった場合とで、上司の対応は同じでしょうか。

部下に対する信頼感が低いと、対話例Aのような反応が出やすいのはないでしょうか。

当然だと思われるかもしれませんが、問題は、上司が示すこの種の信頼性の高低を、部下は極めて敏感に感じ取ってしまうということです。上司から信頼されていないと感じた部下のパフォーマンスを、ますます低下させる要因をつくってしまうことになりかねません。そのことに上司は気付いておく必要があります。

誰だって信頼できる上司や仲間と仕事がしたいです。そしてもう一方で、自分が周囲から信頼されていることもエネルギーの源になります。組織のパフォーマンスに責任をもっているリーダーならば、このことに無関心ではいられないはず。

部下の未熟さはある意味当たり前であり、それをどうマネジメントするかが問われることは言うまでもありません。

これまでにあなたが出会った尊敬できる上司や先輩たちを思い浮かべてください。そして、彼らならどんな対話を展開するか、想像してみてください。きっとヒントになるはずです。

(ヤフー コーポレートグループ ピープルデベロップメント部・吉澤幸太)