「デジタル時代だからこそ日本でも戦略的な人事施策が成長の要になる」─Workday幹部

総合「デジタル時代だからこそ日本でも戦略的な人事施策が成長の要になる」─Workday幹部

デジタル変革によって競争力を高める──。ここで、最新テクノロジーにばかり目を向けがちだが、すべてのベースとなるのは事業価値を創り出すことに日々知恵を絞る「人」だ。戦略的人事に関わるSaaSをグローバルに手掛けているWorkdayの幹部は、日本の状況をどう見ているのか。同社のAPJ(アジア太平洋地区および日本)担当のプレジデント、デイビッド・ホープ(David Hope)氏に話を伺った。

 デジタルテクノロジーの凄まじい進化が企業経営に多大な影響をもたらすようになったことを皆さんも実感していることだろう。あたかもテクノロジーがビジネスを牽引するような言われ方もしているが、優れた事業モデルを考えるのも人であるし、それを回していくのも人、時々の状況に即して最適な決断を下していくのも人である。この時代だからこそ、従業員一人ひとりにフォーカスし、自己実現を後押しするのはもちろんのこと、企業や組織の価値向上にうまく結び付けていく取り組み、すなわち、戦略的な人事施策、HCM(Human Capital Management)の重要性が際立ってくるのである。

日本では終身雇用や年功序列の企業文化が根付いており、米国をはじめとする先進諸外国とは事情が違う──。よく言われていることであり、私もかつて日系企業に勤めていた経験があるので実態はある程度知っているが、状況は確実に変わりつつあると見ている。

Workdayでアジア太平洋地区および日本担当のプレジデントを務めるデイビッド・ホープ(David Hope)氏

一つにはグローバリゼーションの加速がある。企業規模の大小に関わらず、ローカル市場だけを対象にしていては持続的な成長戦略は描きにくい昨今だ。世界に打って出るにあたっては各国に自社拠点を構えることもあるし、現地の企業と経営統合するといったことも珍しくはない。結果として、拠点のある場所で人を採用し活躍してもらうこととなるが、そこに日本流の人事管理制度を持ち込んでも機能しにくい。採用、能力開発、リテンション…。いずれも“グローバル感覚”に基づいて、様々なことに対処していく必要がある。

働き手の世代交代が進むことも見逃せない。日本においても、特に若い層を中心として終身雇用や年功序列に魅力を感じる人が減っていると聞く。そもそも、かねてからの習わしが限界に近づいていることを敏感にとらえているのかもしれない。総じて、待遇面などで希望を主張するのが当たり前とするディマンディングな世代だ。自身のキャリア形成のために、より条件のよい企業を見つけてジャンプを重ねるケースが増えてくるだろう。

今、盛んに叫ばれている「働き方改革」の文脈でも、戦略的人事施策の重要性が浮上してくるはずだ。性別や勤続年数などに依らないのはもちろんのこと、介護や子育てなどの事情を抱えている人も含めて、意欲や才能に溢れる人材を相応のポジションに積極的に登用することが競争力の向上につながる。そうしたフレキシブルな体制と仕組みを築くことが、真の意味での働き方改革を支えることになるからだ。

大手グローバル企業を先陣に日本は大きく動き始めた

当社はHCMに関わるソリューションをクラウドで提供するベンダーで、その立場から市場の立ち上がり具合やユーザー企業によるツール活用の成熟度を見ていると、米国と日本では7~8年ほどの差があると感じていたが、その差は確実に詰まっている。つまり、HCMソリューションを導入し、うまく活用していこうとの機運が日本でも急速に高まっているというのがここ最近の実態である。

その第一波に乗ったのは、日立製作所や日産自動車、ソニーといった日本の大手グローバル企業だ。HCMの戦略的本質を理解して、まずは海外拠点で採用して成果を上げた。企業の成長に人事戦略が大きく影響することを強く認識し、グローバル標準として日本サイドにも取り込む動きが活発になっている。

それに続いたのが、ネット上で各種サービスを提供する事業者などローカルで急成長を遂げている企業群だ。M&Aも活発で企業規模は加速度的に拡大する。優秀な人を採用し、配置を最適化し、引き留める努力をしなければ、経営が成り立たない。必然的に、HCMにたどり付いたわけだ。

若手のニュージェネレーションが経営を担っている企業も動き始めた。変革を起こし新風をもたらさなければ成長がない。起点の一つになるのが、従業員一人ひとりに変化を促すこと。そこで、HCMへの取り組みをテコに社内を活性化させようと熱心に取り組んでいる。

もちろん、コンサバで、ごく限られた要員で人事業務をまかなっている企業もまだ多い。ただ、変化は確実に起こっており、後手に回っていた企業もそう遠くない将来に、何らかの形で人事に関わる改革に挑むことになると見ている。

人事部門はもっと戦略的にならなければならない

新卒を中心とした採用、業務や職務に応じた研修、勤怠や給与計算などの労務管理…こうした仕事をルーチンで回し、日々の業務と言えば、従業員一人ひとりから受けた人事上の問い合わせに答えること。来日した際には、できるだけ企業訪問をすることを心がけているが、そもそもの発想として、こうした域を抜け出ていないケースも少なからずある。

人事部は、必要に応じて調べごとをして情報を提供するだけの役回りではなく、もっともっと戦略的にならなくてはならない。ビジネスを成長させるにはどんな人材が必要なのかを突き詰める。一人ひとりの能力開発のプログラムを考える。社内にどんなタレント(能力や才覚に優れた人材)がいるのかを発掘する。持てるポテンシャルを発揮するための最適配置を練る。モチベーションを高めてリテンションを図る。人について回るお金の動きを可視化する。社内外から適性な人材をリクルーティングする…。挙げればきりがないが、とにもかくにも“攻め”の発想が不可欠なのだ。

人的資源を巡る戦略的施策に必要となる機能群を取り揃え、SaaSとして提供するのがWorkdayだ。主力の人事管理「HCM」に加え、財務管理の「FM(Financial Management)」、さらにはアナリティクスのソリューションなど豊富なラインナップがある。HCMに関して言えば、さらに、「社員情報や報酬、福利厚生、休暇・休職状況を管理する機能」「目標やパフォーマンスの管理、後継者育成、キャリアや能力の開発を担う機能」「人員計画と分析、プロジェクト管理、リクルーティングの機能」などに細分化される。

キャリアや能力を高めたいとする従業員の立場、人材の最適配置を図りたいとするマネジメント(=企業)の立場、Workdayはどちらに軸足を置いているのか?という質問をよく受けるが、答としては「両方」だ。人事改革は、全社的に臨まなければうまくいかない。トップマネジメントが使いたい機能、ミドルマネジメントが使いたい機能、従業員一人ひとりが使いたい機能、それらを隅々までカバーしようとの発想が根底にある。軸足は組織全体に置いているということになる。

「Power of One」がもたらす価値

Workdayにおいては、それぞれの立場で必要な情報に「セルフサービス」でアクセスできることを徹底している。個人ならば、自分の目下のパフォーマンススコアやキャリア目標に沿った学習コンテンツ、報酬額の細目といったものをすぐに画面に表示させられる。プロジェクトを新規に立ち上げるオーナーであれば、目的に相応しい人事候補やコストシミュレーションなどをたちどころに確認できる。もちろん、PCだけでなく、モバイルデバイスでも可能だ。先に触れたように、いちいち人事部門のスタッフに「XXについて調べてほしい」とリクエストする必要はない。欲しい情報を手にするまでの時間、人事部スタッフの手を煩わせる時間、どちらも極小化できるメリットは大きい。

HCMやTM(Talent Management)の分野では、ERPソリューションを手掛けている大手ベンダーも含め、多くの製品/サービスが市場に投入されている。その中で当社は、すべてを自分たちで作り込み、すべてをクラウドで提供することにこだわりを持っている。世の中には、スイート製品を謳いながらも、その実、買収や経営統合によって傘下に収めた製品をラインナップに加えただけのものも少なくない。そもそも設計思想やアーキテクチャが異なる製品を統合するのには多かれ少なかれムリ・ムダ・ムラが生じるものだ。結果、中身が複雑になり、メンテナンスやアップデートに多大な手間ひまがかかり、コスト増を招いてしまう。

我々は「Power of One」という表現をしている通り、自分たちで開発した一つのソリューションですべてをカバーしている。しかも、SaaSである故、すべての顧客が例外なく単一のバージョンを使っている。細かい修正を毎週のように繰り返し、メジャーアップデートは毎年2回というハイペースだ。継続的イノベーションの恩恵を常に享受するには、最も優れた仕組みだと自負している。使って頂くと分かるのだが、機能は豊富でありながら、インタフェースもアクセスビリティも極めてシンプルで直感的にできている。常に使い手の声に耳を傾けながら改善を重ねてきた結果であり、その完成度には自信を持っている。

アナリティクスや能力開発の機能をさらに強化

HCMやFMなどコアの領域に必要なピースはほぼ埋まっていると言えるが、それに甘んずることなく洗練度を高めていかなければならない。例えばアナリティクスは今後の注力分野の一つ。マシンラーニングなど進化著しいテクノロジーを貪欲に取り込みながら、人が頭をひねるだけでは考えつけなかった人事戦略上の知見を導き出すことを目指していく。セルフラーニングを中心に能力開発に資する機能についても顧客ニーズが高まりを見せているので、さらなる強化が必要だ。

Workdayは現在、全世界で1400社近くの企業が、日本では315社以上の企業が採用している。各地に多くの関連会社を持っている企業も1社とカウントしているので、実態としてはもっと規模が大きいととらえてもらってもよいだろう。

先にも触れたように、日本は今、大きく変わろうとしており、ビジネスとITとの融合もより密で深いものになっていくだろう。それは、クラウド採用の動き一つみても明らかだ。大手の金融機関がクラウドシフトを鮮明にしているように、たかだか数年前には見られなかった取り組みがメインストリームになりつつある。ビジネスにとって何が重要であり、そのためにはどんなプラットフォームがあるべきか。それを考え抜いた結果として、世のメガトレンドが作られていく。

だからこそ、世界的潮流であるHCMも必ず日本企業の一大テーマとなる。我々としても、日本企業のどんなニーズにも応えていく準備がある。人が生き生きと輝きながら仕事に燃え、結果としてビジネスが成長する。そのためのお手伝いができるなら、この業界にいる人間として冥利に尽きる。気を引き締めて、これからもサービスの機能と品質のブラッシュアップを図っていかなければならない。(談)