将来の活躍や離職、AIで予測 「HRテック」で人材管理 AI&IoTビジネス最前線(4) 岩本隆 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科

総合将来の活躍や離職、AIで予測 「HRテック」で人材管理 AI&IoTビジネス最前線(4) 岩本隆 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科

テクノロジーを活用した「HRM(Human Resource Management:人材マネジメント)が世界的に盛り上がりを見せている。ビッグデータ分析やディープラーニング(深層学習)を容易に適用できるようになってきたからだ。スタートアップ企業も続々と登場し、株式公開や大手IT(情報技術)企業による買収を実現させている。

人材マネジメントにテクノロジーを活用する「HRテクノロジー」が世界的に盛り上がりを見せている。だが、この言葉自体は20年近く前から存在する。米国では、「HR TECH」が1998年3月に商標登録されている(2005年3月に商法権放棄)。2000年8月にはLRP Publicationsという会社が、「HR TECHNOLOGY」を商標登録。同社は世界最大級のHRテクノロジーのイベントを毎年開催し、今年で20回目を迎える。

 

■人材マネジメントの時代

2010年代前半頃までのHRテクノロジーは、人材マネジメントのあらゆる機能が実装されたシステムを中心にして市場が盛り上がった。

 

1980年代後半から、人材採用、人材維持、キャリア計画、能力評価・アセスメント、チーム・個人の能力開発、業績管理、後継者計画、組織開発などの機能を実装したテクノロジースタートアップ企業が多く生まれ、大きく成長した。

 

図1に新規株式公開(IPO)またはM&A(合併・買収)によるエグジット(株式を売却して利益を得ること)を実現したHRテクノロジースタートアップ企業の例を示す。

 

 

M&Aは数千億円から1兆円規模の売却額で実現し、米コーナーストーンオンデマンドや米ワークデイなどIPOを実現したスタートアップも数千億円から2兆円近い時価総額をつけている。

 

■人材と財務のデータを連携

2010年代前半以降、ビッグデータ分析や機械学習、ディープラーニング(深層学習)が容易に活用できるようになり、さらに様々なHRテクノロジースタートアップ企業が生まれてきた。

図2 HRスタートアップへの投資件数と資金調達額(出所:CB Insights、https://www.cbinsights.com/blog/hr-techfunding-growth/)

図2に2011~2015年のHRテクノロジースタートアップ企業の投資案件数および資金調達額を示す。投資が一層加速している。近年は、IoT(モノのインターネット)やRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)なども活用したサービスが開発されている。

 

また、人材マネジメントシステムと財務会計システムとの連携が容易になっており、企業の業績データと直結した人材マネジメントが可能となってきた。つまり、人材の定性的なデータをビジネス上のコストや生産性などの測定可能な金銭的データと連携することで、人材を財務会計上の概念である資本としての管理が可能となった。

 

経営者にとっては、どういう人材マネジメントをすれば業績がどう向上するのかを定量的に判断できるようになる。これを「HCM(Human Capital Management:ヒューマン・キャピタル・マネジメント)」と呼び、現在、人材マネジメントはHCMの一部と位置付けられている。

 

今後は、HCMシステムに機械学習、人工知能(AI)の導入が進むと予想される。それにより、将来予測、例えば、どういう人材が将来自社で活躍するのか、それとも離職するのかといったことが予測できるようになる。さらに、離職防止対策のレコメンドなどが可能になるだろう。

 

経営や人材マネジメントにおいてHRテクノロジーが寄与する部分が多くなるため、HRテクノロジーをどう活用するかは企業の競争力を高めるうえでますます重要になる。

(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆)

[書籍『人工知能&IoTビジネス実践編』の記事を再構成]