アルバイト・パート最低賃金、780円乗せ焦点 厚労省審議会で議論開始
今年秋に改定する最低賃金の引き上げ議論が始まった。昨年の15円を上回る引き上げが実現し、全国平均で780円台に乗るかどうかが焦点だ。目安になる賃金や物価、企業利益の3つの指標は2013年度にすべて上昇した。外食など人手不足で時給を上げた業界もあり、最低賃金の引き上げに向けた条件はそろう。ただ経営側は慎重な姿勢で目安を決める今月末まで綱引きが続きそうだ。
厚生労働省は労使代表と学者でつくる審議会を今月に立ち上げた。月末まで議論して最低賃金の目安を示す。それに基づいて地方の審議会が都道府県ごとの最低賃金を決め、10月をめどに適用する。
2013年度の全国平均は764円と前年度から15円上がった。今年度の経済指標は一段と改善が目立つ。厚労省の審議会は物価、賃金、企業利益の3つに基づいて全国平均の目安を決める。
13年度の消費者物価指数(帰属家賃除く総合)は前年度比1.1%上昇し、5年ぶりにプラスに転じた。さらに4月以降は消費増税に伴う値上げが響き、前年同月に比べて4%ほど上がっている。
賃金全体も上がっている。働く人が受け取る賃金の総額を示す現金給与総額は、13年度に0.1%増と3年ぶりのプラスだった。今年の春季労使交渉でも、経団連がまとめた大企業の賃上げ率は15年ぶりに2%を超えた。賃金全体を底上げするベアが広がっており、5月の毎月勤労統計調査の速報値によると、基本給が2年2カ月ぶりにプラスとなった。
企業利益も底堅い内需を背景に伸びている。法人企業統計によると13年度の国内企業全体の経常利益は約62兆円となる見込みで前年度より2割伸びそう。「企業は賃上げの余力を蓄えており、経済指標だけを見れば、昨年以上に引き上げて780円を超える」(厚労省幹部)との見方が強い。
また外食産業を中心に人手不足が強まっており、人材の流出を防ぐため「防衛的な賃上げに踏み切る企業もある」(三村明夫・日本商工会議所会頭)。時給が最低賃金に張り付いていたアルバイトなどの業務も実際の賃金を企業自ら上げつつある。
ただ経営側にはなお引き上げに慎重な声が強い。07年の最低賃金法の改正で、最低賃金が生活保護の水準を下回る「逆転現象」をなくすため、積極的に最低賃金を引き上げてきた。08年のリーマン・ショック後も引き上げが続いたのはこのためだ。
現在も逆転が残る地域は北海道だけで、今年度の改定で解消する見込み。「今まで生活保護との関係で無理して上げてきた。ここらで一休みしたい」(経済団体幹部)との声があがる。
政府は消費増税の家計への影響を減らすため賃上げを後押ししたい考えで、田村憲久厚労相も「消費増税や労働の需給が引き締まっていることも反映して、よい成果が出るようにやっていきたい」として最低賃金の引き上げに意欲を示す。