スーパー、コンビニがシニア雇用 即戦力、本人には「やりがい」

総合スーパー、コンビニがシニア雇用 即戦力、本人には「やりがい」

スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗でシニアの雇用が広がっている。経験豊かなシニアは店にとって魅力的な人材であるのはもちろん、慣れ親しんだ職場で働き続けられることが、やりがいや楽しみにつながっているようだ。(平沢裕子)

◆75歳までOK

「いらっしゃいませー」

豆腐を冷蔵ケースに並べる山下輝子さん=東京都世田谷区のサミットストア砧店

東京都世田谷区のスーパー、サミットストア砧店。パート社員の山下輝子さん(72)は、お客に声を掛けながら台車を押して豆腐売り場へ進み、手慣れた様子で冷蔵ケースに豆腐を並べ始めた。

鮮魚の調理場では、同じくパート社員の渡辺ヤス子さん(72)がマグロやサーモンを手早くさばき、トレイにきれいに盛り付けている。

2人とも同店で約20年働いてきたベテランスタッフ。パート社員が定年後に再雇用される年齢の上限が70歳だった一昨年に一度退職したが、昨年12月に上限年齢が75歳に引き上げられたのを受け、再び働き始めた。鮮魚担当で週3日、1日5~7時間働く渡辺さんは「1年半ブランクがあったが、仕事は体で覚えていたみたい。若い人といっしょに働くのは刺激になっていい」。グロサリー(加工食品などの品出し)担当で週2日、1日4時間勤務の山下さんは「制服を着ると気持ちが引き締まる。昔からの仲間と交流できるのも楽しい」。

◆新規採用増狙う

サミットでは現在、2人のような70歳以上のスタッフが全店舗で75人働いている。これまで年に約100人のパート社員が70歳で退職してきただけに、年齢上限引き上げは貴重な人材の流出を防ぐだけでなく、新規採用につなげたいという狙いもある。人事部の渡辺孝範さんは「刺し身の切り方や盛り付けは売り上げを左右する技術で誰でも簡単にできるわけでない。また、8000点超の商品がどこにあるかを把握し品出しするグロサリーの仕事も経験がないと難しい。経験豊かなシニア世代は即戦力でもあり、働き続けてもらうのは店にとっても大きなメリット」と話す。

マルエツは平成26年9月から直接雇用する従業員の年齢上限を65歳から70歳に引き上げた。現在、65歳以上の従業員は約1400人を数え、全体の7・5%を占める。70歳以上でも健康診断や面談などの条件をクリアしていれば、傘下の人材派遣会社に登録してから継続して75歳まで働くことができ、登録者は約200人にのぼる。広報担当者は「長く働きたいと考えている人に選んでもらいやすいよう環境を整えた。大先輩が働く姿は、若い人にもいい影響を与えている」と話す。

◆自治体と連携も

一方、コンビニ大手、セブン-イレブンは自治体と連携しながらシニアの雇用を進める。25年にシニアの雇用促進などを盛り込んだ包括提携協定を結んだ福岡県では、今年3月末までに118人が県内の店舗で雇用された。同様の協定を結ぶ大阪府では27年度に90人以上が雇用された。

店舗での仕事は、店の清掃や商品の陳列、接客、レジ打ち、食事の訪問宅配など多岐にわたる。セブン&アイ・ホールディングス広報センターは「定年退職後に働く男性にとっては、短時間でも仕事ができることがやりがいや生きがいとなっているようだ。店舗にとっても、仕事を通じてシニア世代にコンビニを身近な店として認識してもらえる効果もある」と話す。

多様な働き方の調査・研究をする「ツナグ働き方研究所」(東京都千代田区)の平賀充記所長は「小売業など販売職の有効求人倍率は1・96倍(2月)と、圧倒的に働き手が不足しており、新戦力として高齢者が注目されている」と分析。「コンビニなどで高齢者向け宅食事業が進む中、同年代が見回りも兼ねて訪問宅配する仕事の需要は、今後ますます増えていくのではないか」と話している。