「2万%、性善説」で実現、勤務はいつでもどこでもOK

総合「2万%、性善説」で実現、勤務はいつでもどこでもOK

4月の平日の昼下がり。ラックス、リプトンなどのブランドを持つ世界的な消費財メーカー、ユニリーバの日本法人、ユニリーバ・ジャパン(東京)で働く浅尾康二さん(38)は、生後7カ月の双子の息子たちが寝返りを打つ横で、パソコンに向き合っていた。

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IT部門でマネジャーを務め、システムを使う企業の業務分析が主な仕事。週の半分は自宅のリビングが仕事場だ。1人でできる作業だけでなく、会議もスカイプを使い自宅でこなす。

ならし保育の期間中で、息子たちの帰りは早い。3時間おきのミルクの時間は仕事を中断。「双子の子育ては妻だけでは大変なので願ったりかなったりの働き方。会社で『大丈夫かな』と心配しているより、子どもが見える方が精神的に楽。仕事もはかどります」 こんな働き方ができるのは、同社が昨年7月に導入した「WAA」という制度を利用しているから。「Work from Anywhere and Anytime」の略で「ワー」と読む。いつでもどこでも、好きなように働くことを認めるユニークな制度だ。

ログイン前の続き平日午前6時~午後9時の間なら勤務や休憩の時間を自由に決められ、休む日数や期間の制限もない。勤務時間が1日1時間でも、細切れでも構わない。在宅でなく、カフェや図書館で仕事をしてもいい。「この時間はここで働く」と上司に事前に伝えて承認を得るだけで利用でき、理由はいらない。工場勤務と営業の一部を除く全社員約400人が対象だ。

浅尾さんは金曜日に翌週の計画を立て、上司に伝えている。「予定を意識するようになり、不要な会議は出なくなりました」。育休の取得を考えていたが、休まずに育児ができている。

営業の竹内早紀さん(26)は、クリーニングの受け渡しを平日の在宅勤務の間にこなす。以前は早起きして土曜日にやっていた。

週に1~3日制度を使い、午後から商談の日は自宅で働いてから直行。移動時間が減り、お昼をゆっくり食べられるようになった。「ちっちゃなストレスがなくなった。遊びなど前向きに使いたい有給休暇を用事で使わなくてすむのも大きい」。夫は定時で朝礼もある昔ながらの企業に勤める。自由に働く姿を見て「異次元の世界」とうらやましがっているという。

3年前に就任したイタリア人の最高経営責任者(CEO)は、日本人への疑問を次々に口にした。なぜ遅くまで会社にいて帰らないのか。なぜ家族との時間を大事にしないのか……。人事総務本部長の島田由香さんも同感だった。「好きなときに働いて、結果さえ出せばいい。なんでオフィスに来なきゃいけないのか」。2人で話すうちに制度の構想が固まった。

フレックスタイム制や在宅勤務は導入済み。有休や半日休を取りやすい雰囲気はあった。それでも、「異次元」の改革には疑問の声が相次いだ。

サボる人は出ないか? オフィスから人がいなくならないか? 同僚と連絡を取り合えるのか?……。

運用は上司の手腕による面が大きく、制度をうまく活用できない部署があるなど課題は残る。でも、導入後に調査してみると、9割以上の社員が一度は制度を使ったと回答。月に1~2回、または週に1~2回使う人が多く、3割が仕事の生産性が上がったと感じていた。残業時間も減った。

なぜ、制度を実現できたのか。島田さんは言う。

「できない理由を挙げるのではなく、まずやってみようと説明しました。心配して管理するのでなく、社員を信頼して任せるのが大事。2万%、性善説です」