豪州のパパ、仕事と育児事情 キャリア外交官、パートタイムに切り替え 週4日勤務、夫婦でバランス

総合豪州のパパ、仕事と育児事情 キャリア外交官、パートタイムに切り替え 週4日勤務、夫婦でバランス

日本では、長期に育児休業を取る父親や主夫である男性はまだまだ少数派だ。だが共働きが当たり前のオーストラリアでは決して珍しくない存在になっている。日経BP社の共働き世帯向け情報サイト「日経DUAL」から、オーストラリアの父親たちの仕事と育児の両立事情を紹介する。

85%もの父親が、可能なら子育てに専念したいと考えているオーストラリア。父と子の絆が大切にされている

85%もの父親が、可能なら子育てに専念したいと考えているオーストラリア。父と子の絆が大切にされている

遊具で遊ぶ子どもを見守る父親たち。オーストラリアの父親は、母親と平等に育児を担うことが期待されている

遊具で遊ぶ子どもを見守る父親たち。オーストラリアの父親は、母親と平等に育児を担うことが期待されている

外務貿易省で働くダミアン・コークさんは、1歳の娘の育児でフルタイム勤務からパートタイムに切り替えた。コークさんと、パートナーのナオミ・ヴィカーズさんは共にキャリア外交官。海外赴任は交代ですると決めた。一昨年までは、ヴィカーズさんのヨルダンへの赴任にコークさんが配偶者として同行。帰国直後に生まれた娘の育児は2人で平等に担う。

「父親も、母親と同じように子どものそばにいるべきだ」とコークさん。ヴィカーズさんが1年間の産休をとったのに加え、コークさんも娘の出生時に7週間の休みをとった。現在は2人とも週4日のパートタイムで働き、育児とのバランスをとっている。

どうしてこのようなことが可能なのか。コークさんは「男性上司の理解があったことが大きかった」と振り返る。「上司自身も、子どもが生まれて最初の5年間、仕事が忙しくて育児ができなかったことを後悔し、その後、パートタイムに切り替えた人。私のことも応援してくれた」

しかし、すべての人が上司に恵まれるわけではない。そこで外務貿易省では一昨年末、「ダメなら、なぜダメ?(If not, why not?)」という方針を導入した。部下が柔軟性のある働き方を求めた場合、上司は不可能という正当な理由がない限り、前向きに検討しなければならない。この結果、コークさんの同僚には、夫婦で1つのポジションをシェアして働いている人もいるという。

男性が主体的に子育てをする点で日本の一歩先をいくオーストラリアだが、男女格差への議論は熱い。

「育児で働き方を変える男性の数は、女性と比べて少ない」とコークさんは言う。このため、男性にとっては女性以上に周囲の理解が求められるという。育児を理由にパートタイムで働く男性に対し「キャリアを重視していない」との見方もあるからだ。

 

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主夫になることに「苦労や犠牲が全くないとは言わない」というのは、エネルギー関係のロビイストとして働いていたランガ・パリマラさん。産業技術革新科学省に勤める妻のキャロリン・バートンさんと娘を育てていたが、息子が生まれた直後にバートンさんの東京転勤が決まった。パリマラさんが決断したのは、自分が仕事を辞めて「主夫」になることだった。

「家族で一緒に新しい国で生活を始めるのは楽しみだったが、どこかに『自分は何をしているのか』との不安があった。こういう決断をする母親は多いが父親はあまりいないので」

育児に専念する生活で一番苦労したのは「知的な刺激がなくなったこと」だった。周囲から「知的興味のない主夫」として見られるのもつらかった。キャリアも犠牲になった。帰国した現在は連邦政府職員として再就職しているが「4年のブランクがあったため、キャリアは10年遅れた」。

パリマラさんのような男性はどのくらいいるのか。共働きで3人の子を育てるジャーナリストのアナベル・クラブさんは「数はまだ少ない」という。

2011年の国勢調査を基にした計算では、15歳未満の子がいる家庭で、父親がフルタイム、母親がパートタイムまたは主婦であるのは60%。母親がフルタイムで父親がパートタイム・主夫の家庭は3%という。

 

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背景を男性側から調査した研究者がいる。国立モナッシュ大学講師で社会研究者のサモーン・マッカーディーさんだ。

父親951人を調査したところ、家計に問題がなければ「3カ月以上仕事を休んででも育児をしたい」と考える人が85%もいた。男性が主な稼ぎ手であるべきだという考えが「自然だ」とする父親が33%の一方、男性が稼ぎ手であるべきだという社会的圧力を感じる人は90%近くに上った。

「父親は(母親と)平等に育児をしたいと思い、仕事を離れてもいいとさえ考えている。しかし、家庭の主な稼ぎ手でなければ、というプレッシャーが、父親が育児に専念するのを妨げている」とマッカーディーさんは主張する。

そんななか、あえて主夫になったパリマラさん。犠牲もあったが、主夫だった4年間を「一切後悔していない」と断言する。子どもと過ごした時間の価値は、キャリアの遅れを上回ると考えるからだ。「息子が初めて言葉を発したときも、初めて歩いたときもそばにいた。仕事で多忙だった妻はその機会を逃したが、代わりにキャリアを積むことができた。カップルとして私たちはこれで良かった」

これまで女性ばかりに焦点が当たりがちだった「仕事と家庭」をめぐる議論。しかし男性も女性と平等に育児をしなければ、また時には従来の男女の役割を交換しなければ、状況はそう大きくは変わらない。大きな鍵を握るのは男性なのかもしれない。