総合部下はK-1選手 人材大手アデコの多様な働き方
社員の副業解禁、残業時間の削減、育児との両立支援――。企業の現場では、多様な勤務スタイルが広がってきている。ただし企業として制度を拡充しても、現場の管理職が「石頭」ではなかなか機能しない。多様な働き方を成果につなげる上司のマネジメント術を、人材サービス大手、アデコ(東京・港)の現場に学ぶ。
■就業規則が変わり、会社が副業を承認
22戦15勝、4KO――。アデコにはこんな“戦績”を持つ社員がいる。キーアカウント事業本部人財部キャリアプランニング2課の牧野智昭氏だ。
牧野氏は、キックボクシングのプロイベント「K-1 WORLD GP」に、ヘビー級に次いで重いクラスであるスーパー・ウェルター級で参戦。187cm長身から繰り出すキックで、観客を魅了している。
牧野氏は2006年にデビュー。キックボクシングのアマチュア大会で頭角を現し、世界と日本でタイトルを持つ「チャンピオン」だ。
アデコにはデビューと同時期に入社した。平日の日中は、東京・霞が関にあるアデコのオフィスでの仕事に専念。夕方以降は、東京・渋谷にある所属ジムに移動して、夜11時近くまで練習に打ち込み、その後、家路につく。
2016年に入って、アデコが就業規則を見直し、「キャリア開発の一環として副業を認める」といった方針を打ち出した。そこで牧野氏がこの制度を申請。社内初の副業を持つ社員になった。
■上司の工夫で、チームの受注効率アップ
仕事とキックボクシングを両立するうえで、大きな助けになっているのが、上司である滝愛弘(ちかひろ)キーアカウント事業本部人財部キャリアプランニング2課課長だ。
キャリアプランニング2課には牧野氏も含め10人ほどのメンバーが在籍している。企業から求人情報を受け取ると、登録スタッフのプロフィール情報を参照しながら誰が適任かを見定め、電話などで連絡を取って仕事を紹介している。朝9時から夜8時30分の間で7時間半の勤務時間を取れば、出社や退社時間を柔軟に設定できる、フルフレックス制度を導入している。
「どのメンバーも5年以上のベテラン。登録スタッフに紹介して承諾を得る件数を、達成目標に掲げているものの、実現手段は、メンバーそれぞれに任せている」と滝課長は話す。社員の裁量を増やし柔軟に働ける環境を整える一方で、滝課長はチームが効率よく成果を出せるようにする仕組みにも工夫を凝らす。
その一例が、蓄積していた実績データの分析だ。キャリアプランニング2課の部員は、求人情報を受け取って登録スタッフと連絡を取り、「その仕事をやりたい」という承諾を得ると、その実績を時間とともに記録している。

滝課長がこのデータを分析したところ、夕方の5時から7時までの間が、紹介案件がまとまりやすくなると分かった。そこで滝課長は、メンバーに分析結果を示したうえで、「夕方5時から7時までの間は、30分でもいいので在席するようにしてください」と指示。
一見、社員を会社に縛り付ける窮屈なやり方のようにも思える。しかしこのやり方にしてから、登録スタッフの合意を得て紹介がまとまる件数が以前より増えた。「目標件数に着実に近づき、晴れ晴れとした気持ちでジムに向かえるようになった。仕事のことを引きずらずに練習に打ち込める」と、牧野氏は話す。
■フレックス勤務ならではのメンバー連携
一方で、フレックス勤務ならではのシフトの違うメンバー同士の連携も進んでいる。牧野氏がある日、ジムに向かう直前に、ある登録スタッフに仕事の紹介のため、電話連絡を入れた。しかしつながらず、留守番電話に折り返し連絡を求めるメッセージを入れ、仕事を切り上げた。
その日はハードな練習をしたため、牧野氏は体力の回復が必要と判断。翌日は時間を遅らせて出社した。
すると翌朝、牧野氏が出社する前に、登録スタッフからの電話を受けた女性社員が牧野氏に代わって紹介をまとめてくれた。育児中で夕方5時30分に会社を出なければならないため、朝は9時から仕事を始めているメンバーだった。
牧野氏は2016年秋に、40歳を迎えた。「メンバーのフォローのおかげもあって、コンディションを維持できている。とてもありがたい。最終目標は立ち技格闘技の最強選手。今後はK-1のチャンピオンベルトを狙いたい」。牧野氏は意欲を示す。


