春闘方針 残業削減、変わる意識 企業側「人材確保に改善必要」

総合春闘方針 残業削減、変わる意識 企業側「人材確保に改善必要」

経団連が17日に公表した2017年春闘の経営側の交渉指針「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)は、長時間労働の是正など働き方改革を前面に押し出す内容となった。電通の新入社員の過労自殺などで長時間労働への批判が高まる中、経営トップに意識を変えるよう求めており、働き方改革を重視する安倍政権とも歩調を合わせた形だ。【小川祐希】

 

鉄鋼大手、神戸製鋼所の東京本社(東京・品川)。定時退社の午後5時半に、帰宅の合図のチャイムが鳴ると、社員は一斉に帰り支度を始めた。

同社では16年4月から、午後7時以降の残業を原則禁止した。「家族とのだんらんなどにバランスよく時間を使えるようになり、上司も含め周囲が仕事の優先順位を意識するようになった」(30代男性)、「早く帰ることへの後ろめたさが軽減された」(20代女性)など社員にも好評だ。年間57万時間あった各種会議も見直しを進め、今年度は約15万時間削減するという。

残業禁止に踏み切った理由について、人事労政部の今田堅太郎担当部長は「日本では長時間働いている人が会社に貢献しているとの雰囲気が根強くある」と述べた上で、「労働力人口が減少する中、優秀な人材を確保・定着させるには就労環境の改善が必要だった」と説明する。

経労委報告でも労働生産性の低下や女性活躍の阻害要因、人口減少の一因として長時間労働を前提とした慣行があると指摘。経営トップに「強いリーダーシップを発揮して職場環境の整備に取り組むことが求められる」とした。さらに労使合意があれば、事実上無制限に残業ができる労働基準法の見直しにも言及するなど、これまで以上に強い表現を盛り込んだ。

定時の午後5時半から支度を始め、午後6時前には帰途につく神戸製鋼所の社員たち=東京都品川区で2017年1月17日午後5時58分、梅村直承撮影

日本では、長時間労働が経済成長を支えたとの成功体験があるため、それを是正するのが難しい状況が続いてきた。日本生産性本部によると、15年の日本の労働生産性は783万円と経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中22位。3位の米国と比べると6割程度の水準だった。

こうした現状を深刻に受け止めた安倍政権は、生産性の向上によって欧米などの企業に対抗しようと働き方改革に取り組んでいる。経団連で報告のとりまとめ役となった工藤泰三副会長も17日の会見で「労働生産性を上げないと、今の国内総生産(GDP)レベルを維持できない」と訴えた。

企業でも三井住友海上火災保険が4月から午後7時以降の残業を原則禁止にしたり、はるやまホールディングスが4月から残業ゼロの社員に手当を支給する制度を導入したりするなど見直しが進みつつある。

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