日本人は苦手?「欧米型採用」とそのリスク 「待ちの姿勢」では限界がある

総合日本人は苦手?「欧米型採用」とそのリスク 「待ちの姿勢」では限界がある

日本企業の採用手法は、世界的に見て時代遅れ?

外資系の人事部門に勤務経験がある方にお会いすると、よく言われてしまうことがあります。それは、日本企業の採用手法は世界的に見て時代遅れだということ。
消費財の外資系メーカーで人事マネジャーをしている知人は、日本の採用は世界標準から離れて「ガラパゴス化している」と揶揄していました。かつて日本企業は独自のやり方で産業を発展させてきましたが、成功した時代も長くあっただけに、やり方を海外と合わせるという意識がなかったのかもしれません。しかも、日本人らしい緻密かつ高い水準で手法を確立しているから、変えるのも簡単ではありません。ならば、このまま採用手法は変えないままでいいのか?それは時代が許してくれそうにありません。先ほどの知人は、

「今のままでは、採用できない人材がいますよ」

と指摘します。採用できないのはどのような分野の人なのかは後述しますが、存在するというのは長年、人材の分野に関わって来た筆者にもよくわかります。もしその事態を変えるなら、採用手法の変更を意識せざるをえない気がしますが、具体的にどう変えたらいいでしょうか?

ガラパゴス化した採用手法の典型が、新卒の一括採用、そして入社式や同期研修といった、入社以降のプロセスです。

長らく日本の多くの企業では、新卒正社員を一括採用して、現場経験を積ませ、適性や仕事能力を見極めて、内部昇進。部長ぐらいからやっと選抜を行い、差がついていくという流れを取って来たかもしれません。海外なら職種別に採用し、賃金もバラバラ、そもそも、就活が学生時代の一定期間に(同じようなスーツに身をまとい)行われるものではありません。

企業側の「待ちの姿勢」

でも、それ以上に時代遅れと言われるのが企業側の「待ちの姿勢」ではないかと筆者は感じます。多くの企業において人材採用は、求職者自身が求人媒体やハローワークによる公募で見つけたり、もしくは、紹介会社からの紹介といった、ある意味「受け身」の形で行われています。

なかでも中小企業では採用に関する専門要員がいないことなどもあり、待ちの姿勢が顕著になります。取材した従業員50名の部品製造業の会社では、採用ニーズが発生したらハローワークで求人募集。それ以外の方法で採用したことがありません。当然ながら期待している(経験豊富な)人材はなかなか応募してきません。応募自体が何カ月もなくて、人手不足で大忙しになることもよくあること。それでも、

「人手不足で困ったものだ。いい方法はないのだろうか?」

と経営陣・管理部門が嘆くものの、それ以上の進展はありません。

一方、海外の企業は「攻めの姿勢」とも言える採用を行う会社が一般的です。SNSや社員による紹介、人材データベースを活用し、企業側が積極的に動いて人を採りに行くという姿勢なのです。

攻めの採用により、大きく変わるのが「求める人材の質」です。守りの姿勢で会社が出会える候補者は転職意志の固まった人材に限られます。労働力調査によれば、現在の労働人口約6500万人のうち転職希望者数は約400万人。残りの人材は対象外なのです。ところが攻めの姿勢になれば、転職意志が低い、ないしはない、残りの5000万人まで範囲が広がります。冒頭に登場した「採用できない人材」がこれにあたります。

さらにこの5000万人に企業の求める、経験豊富で貴重な戦力となる人材が隠れていると言われています。たとえば、転職者が少ない大企業や社内で長く仕事を任されている専門性の高い人材。海外企業であれば、こうした転職潜在層にアプローチして戦力を確保しているケースが非常に多くあります。

Jobvite が米国企業1600社の人事関係者に行った採用手法に関するアンケート調査によると、採用活動で使っているツールの1位はソーシャルメディアを使っての潜在層へアプローチでした。人事部自らが人材を探して、スカウトメールを打つなどして、新たな人材の採用を実現しているのです。

これは、先ほどの日本の中小企業の姿勢とは大きな違いがあります。さらに攻めの採用を行うと「選考」よりも「口説き」が重要になります。応募意志の低い(ない)人材を応募から入社まで決断させるには、採用プロセスで動機形成のコミュニケーションを行うなど手間がかかります。それゆえ、採用活動の業務負担は大きくなります。

ダイレクトリクルーティングを活用せよ

ただ、その手間を惜しまず、潜在層にアプローチすることが必要な時代になったのではないでしょうか? 時代の流れを察して、日本企業でも攻めの姿勢で果敢に採用に取り組む企業が出てきました。その際に活用するのがダイレクトリクルーティングという手法です。

ダイレクトリクルーティングとは、「自分たちで声をかけて求職者を呼び込む」という意味。そうして、自ら採用する人材の母集団をつくり出すことを目指します。採用の母集団を、ダイレクトに自分たちで作り出す(攻め)のか、アウトソース(待ち)にするのか、と考えると違いがわかりやすいと思います。その際に使われる主なツールが

・人材データベース

・SNS

どちらも企業側からアプローチをして採用活動を行います。ゆえにアプローチした人材には必ずしも入社意欲があるわけではなく、採用過程でその会社に転職したいという動機を形成してもらう必要があり、それにはそれなりの工夫と負担が求められます。

今後、こうしたダイレクトリクルーティングが仮にどんどん活用される時代になっていったときに、みなさんに影響はどのくらいあるでしょうか。攻めの採用に便乗するか、否かの覚悟を問われるようにて職務経歴などアピールする努力をすべきです。

たとえば、LinkedInに自分の経歴や仕事ぶり、取得した資格などを投稿しておくようなことが考えられます。プライベートの趣味や食べたラーメンの話では意味がありません。攻めの姿勢を持っている企業からしても、必要なのはビジネス上の選考をするための情報です。

こうしたアピールもゼロならば、さすがに潜在層ですらなく、誰からも気が付かれない隠れた層になってしまいます。

注意すべき点は

ただし、気を付けなければいけない点も。こうした努力が社内で筒抜けになって知られてしまうリスクもあります。コンサルティング業界に勤務しているSさんは、現在の職場に不満はないものの、さらなるキャリアアップに転職になるなら転職も厭わないと考えていました。そこでSNSにて、

《将来的に事業会社で経営企画の仕事を経験し、その後は経営陣として働く可能性を探っています》

とキャリアプランを投稿していました。この投稿から半年後にSさんは新たなプロジェクトにアサインされましたが、本人的には希望していない仕事でした。さらにプロジェクト責任者のSさんに対する接し方が冷たく、自分が会社内で置かれた立場に変化があったことを察知しました。おそらく、社内の人事部がSさんの投稿を読んだのでしょう。つまり、近い将来には転職をする意志が明確にあることを社内で知られてしまったのです。こうなると、今いる会社での仕事はとてもやりづらくなります。

実際、こうした状況になってしまったSさんは半年以内に転職することを決意して、人材紹介会社のサイトからエントリーをしたようです。

こうした状況を知って、ソーシャルメディアでのアピールには慎重になる人もいます。大手総合商社のDさんは、ダイレクトリクルーティングの機会から新たなキャリアが得られる転職には興味は高いものの、

「社内の人事部に知られたら、出世がなくなるので避けたいですね」

とソーシャルメディアで自分の仕事ぶりのアピールをするのは控えているようです。

ちなみに大企業で中核として活躍している数人が、同じような回答をくれました。転職潜在層をダイレクトリクルーティングで獲得するのは簡単なようで、そうでもないのかもしれません。

日本企業が今後攻めの姿勢で採用に取り組む可能性は高まりますが、そのときに転職潜在層にしっかりリーチして、これまでよりも有意義な採用が実現できるのか動向を注目していきましょう。