人手不足の本番はこれからだ やりがいを感じられる職場作りが急務

総合人手不足の本番はこれからだ やりがいを感じられる職場作りが急務

大手ファミリーレストランが24時間営業を見直して営業時間を短縮するなど、人手不足の影響が広がっている。

アルバイト求人情報サービス「an」を運営するインテリジェンスによると2016年11月のアルバイト時給(173職種)の全国平均は1007円。前年同月比で21カ月連続の時給上昇で1000円越えは3カ月連続。同調査での外食(フード系)の平均時給は968円と全業種の平均に比べて賃金は低いものの人手不足はより深刻だ。2016年11月の外食(飲食物調理の職業)の有効求人倍率(実数)は3.13倍。全職業平均の1.31倍と比べてもかなり高い。

an編集長の上土達哉氏によると外食業界では昨年の秋以降、「既存店の人手不足が深刻で、新規出店ができない企業も出てきている。これまでは週3日の出勤が採用の条件だったが、それを週1日でも容認するといった勤務条件の緩和も増えている」という。

人手不足が深刻になる中で、外国人労働力の重要性も高まっている。サービス産業向けに動画を活用した人材教育システムを提供しているジェネックスソリューションズ(東京都港区、高橋勇人社長)は2016年12月より、5つの言語(英語、中国語、ベトナム語、ミャンマー語、日本語)で外国人従業員が接客マナーや作業ノウハウを学べる動画提供サービスを開始した。既に吉野家と養老乃瀧が導入している。飲食店やサービス業の店で働く外国人留学生に日本と母国との文化や接客マナーの違いなどを動画で教えることで、現場での教育の負担を減らすことが狙いだ。

ジェネックスソリューションズが提供する動画の例。左は外国人が疑問に思っていることを説明する動画の1シーン。右は日本人は「検討」という言葉に様々なニュアンスを込めていることを説明する動画の1シーン。

記者の感覚からすると、現在の外食産業の深刻な求人難は2006年頃から2008年のリーマン・ショック直前までの状態とよく似ていると感じる。当時の外食産業ではパート・アルバイトを正社員にすることなどで、人材を囲い込む動きが広がりつつあった。しかし、その後のリーマン・ショックで消費は冷え込んでしまって、そうした動きは立ち消えになっていった。しかし、今回は違った展開になるだろう。現在の人手不足はまだ序盤戦で、これからが本番だと考えるからだ。

失業率はまだまだ下がる

その根拠は、日本銀行がデフレ脱却に向けた金融緩和を推進中であること。日銀は「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」という方針を明示している。目標とされている消費者物価指数(除く生鮮食品)は2016年11月で-0.4%。2%を超えた状態で安定するまでの道のりはまだ遠い。

物価が安定して上昇するには経済が活性化して失業率が改善し、賃金が力強く上昇する必要がある。2016年11月の完全失業率(季節調整値)は3.1%で、これは歴史的な低水準とされている。だからこそ人手不足も深刻だと感じるわけだが、消費者物価指数(除く生鮮食品)が目標の2%からはほど遠い以上、さらに完全失業率を引き下げる余地がある。政府や日銀はそれを望むはずで、外食を含む様々な業種でさらに人手不足が進むということでもある。

人手不足の時代は客単価アップの好機でもある

もっともそうした状態は、悪いことではなくてむしろ企業にとっても望ましい状態だ。以前より、多くの人が職に就き、時給が上昇して前よりも収入が増えているということは、それだけ消費にも積極的になるためだ。実際、an編集長の上土氏によると高単価商品を投入し、客単価アップを図る動きが活発化しているという。狙い通りに客単価アップを果たせば、人件費の増加も吸収できる。

従来より高価な商品を売るには、お客から信頼される優秀な人材が欠かせない。外食専門のコンサルタント、アップ・トレンド・クリエイツの代表の白岩大樹氏は「スタッフとのコミュニケーションが、今まで以上に重要になる」と話す。

人手不足による採用条件の緩和で、店側から要請してもシフトに週1、2回しか入ってくれないスタッフが増えている。そうした条件で集めた以上は致し方ないことだが、だからこそスタッフが足りないときにシフトに入ってくれるモチベーションの高いスタッフを見出すことが今まで以上に大切になる。同時に、そうしたスタッフは仕事への取り組みも熱心なので必然的に接客スキルも高くなり、高単価商品を売っていくうえでも欠かせない戦力になるはずだ。

努力をほめることが大切

問題は、店側に協力して積極的にシフトに入ってくれるスタッフをどうやって見出すかだが、それは店長や社員がスタッフの働きぶりを日頃からよく見て、「何か新しい仕事を覚えたり、良いサービスでお客に喜ばれていたら、それをほめることが大切」と白岩氏は指摘する。外食で働く人は基本的に人とコミュニケーションを取るのが好きか、あるいはそうしたスキルを高めたいと思っている。その努力をほめることで、初めて店への帰属意識や参加意識が芽生える。店で働くことに満足しているスタッフは友人・知人を新たなパート・アルバイトとして紹介してくれる可能性も高い。それは、求人費用の節約にもなる。

今後、さらに人手不足が進むことで外食企業はお客からだけではなく、従業員からも「選別」されていることを一層意識せざる得なくなる。そうした傾向は外食にとどまらず、他産業にも広がっていくはずで、やりがいを感じられる職場作りがあらゆる職場で今まで以上に求められるだろう。