シニア社員切り捨てを防ぐ、ある単純な仕掛けとは?

総合シニア社員切り捨てを防ぐ、ある単純な仕掛けとは?

企業のシニア層対策が効を奏していない。結局、シニア層を閑職に追いやるなどの切り捨て施策しかとられていないのだ。しかしあきらめるのはまだ早い。75%のシニア層が再生した、とても簡単な方法がある。

シニア層の切り捨ては
もうたくさんだ

人事部長同士で話をしていると、「シニア層対策」が必ずと言っていいほど話題にのぼる。経営者向け演習でも挙げられる課題だ。「ラインから外れたシニア層をどう処遇すればよいか」「シニア層を戦略化する方策がないか」「シニア層と、中堅・若手層の断絶を解消できないか」…。

活用方法が分からず、シニア層を閑職に追いやるなどの切り捨てが横行しているが、それでは企業の活性化にはほど遠い。彼らを再生させるには、どのような知恵が必要なのだろうか?

シニア層対策が必要なことは、総務省統計局が毎月発表する年齢階級別就業者数を見れば一目瞭然だ。

55歳以上の就業者数は1900万人を超え、全就業者数(6495万人)の30%に迫っている。この10年間で、45歳未満と45歳以上の就業者数のウエイトは逆転し、既に45歳以上が過半数をしめるという、まさに、シニア就業時代のまっただ中にいるのだ。そして、ほとんどの企業で有効な手立てを実行できていない。

シニア層の戦力化が難しいのは、考えてみれば当然といえる。ビジネスのラインから外れて目標を明確に設定できないほか、曖昧な処遇で自律裁量が損なわれるし、意思決定プロセスから除外され、従来発揮していただろう目標達成、自律裁量、地位権限といった牽引志向のモチベーションを発揮できない状況に陥っているからだ。

その結果、さまざまな問題が発生する。演習で挙げられる事例には、たとえば「シニア層のフラストレーションが昂じて、ビジネスラインの目標と別方向で動いてしまう」、「ラインのメンバーとの軋轢が生じてしまう」、「決定プロセスがスムーズに進まないなど」などの事態がある。

こうした事態に対して、多くのマネジメントはコントロール不能となってしまい、打たれている手立てといえば、シニア層を閑職に追いやったり、チームから外して個人で営業などの専門分野を極める人材として処遇するなど、枠組みを整えることに終始している。いわば、切り捨て処遇しかしかないというトンデモな事態で、しかもそれが恒常化しているのだ。挙げ句の果てに、「セカンドライフ研修会」なる、いかにも怪しげな名称の研修を実施して、姨捨山への道しるべを会社が示すという、言語道断な行いも散見される。

私は声を大にして言いたい。「シニア層対策を形ばかりの処遇で終わらせてはならない」「シニア層を切り捨てるな」「今こそ、シニア層の再活性化のための手を打つべきだ」と。

シニア層再生の方策は
5つの質問を繰り出すことだけ

多くの企業から依頼を受けて、シニア層のビジネススキル再開発、さらなる活性化、再生のための能力開発プログラムを実施し、その効果を実感いただいてきた立場からすると、シニア層は、とても単純な、あるスキルを反復演習して、そのビジネススキルをブラッシュアップすることで、劇的に戦力化される。日本を代表する、あるグローバル企業では、75%が再戦力化されたというデータがある。

その方法とは、シニア層が中堅や若手のメンバー、あるいはラインの自分より若い上司に対して、次の5つの質問を投げかけるというものだ。そして、その表現やタイミング、相手の返答へのリアクションのスキルをある程度以上、磨いていくと、劇的にシニア層が戦力化する。

行動を変えなければ
結果は出せない

5つの質問とは、以下のようなものだ。

1.やってみてどうですか
2.うまくいったことは何ですか
3.うまくいかなかったことは何ですか
4.どのようにしたいですか
5.そのために、私などでサポートできそうなことはありますか

これは、シニアから中堅や若手、上司に話しかけて状況をまず聞いて、サポートできそうなことがあればするというコミュニケーションだ。最初は、中堅や若手、上司から返答がないかもしれない。しかし、これを続けていくと、これらの質問の繰り出し方が工夫されてきて、相手の返答を引き出しやすくなる。

相手がサポートを得たいことは、とりもなおさず、ビジネスラインの目標に沿った内容だ。相手から頼まれて任されたことに、シニア層は取り組むことになる。最終的な決定権限者からは外れているが、実行プロセスには組み込まれる可能性を増大させる、強いパワーをもった質問群なのだ。こうした仕事の仕方を身につけることで、シニア層であっても目標達成、自律裁量、地位権限といったモチベーションを高めることが可能となる。

「そのような簡単なことだけで変わるはずがない」という声が聞こえてきそうだが、それだけで良いのだ。いや、むしろ、それだけの方が良い。難しい書籍を無理矢理読ませる必要もない。長い研修を受講させる必要もない。その質問を効果的に繰り出せるようになるための反復演習さえすれば良いのだ。

人は「貢献しろ」と言われて、すぐに貢献できるものではない。「マインドを変えろ」と言われて、すぐに変わるものではない。しかし、パーツ分解した行動を反復演習して身につければ、行動が変わり、そして、マインドが変わり、習慣が変わり、成果が生み出される。マインドセットが成果を生み出すのではない。アクションセットが成果を生み出すのだ。

わが国のビジネスパーソンの所属企業や団体への忠誠心は、他国に類を見ないほど高い。特にシニア層は、忠誠心が高い一方、パフォーマンスにはバラツキがある。就業人口の過半数を占めるシニア層の、パフォーマンスを向上させたいと思わないか。わが国のシニア層が、分解スキルを反復演習してビジネススキルを再生させた時、他国にない、わが国ならでは、ビジネスの飛躍的発展が実現するに違いない。