リモートワークでのコミュニケーション問題を、ロボットの力で解決する

総合リモートワークでのコミュニケーション問題を、ロボットの力で解決する

さまざまな企業が試行錯誤を重ねている、リモートワークという働き方。その中で、在宅勤務の社員とオフィスにいる社員とのコミュニケーションツールとして、「分身ロボット」の開発を進めている企業があります。

分身ロボットは、まさに自分の分身として、会議などの場においてリアルタイムのやりとりを可能にするツール。開発をおこなうオリィ研究所代表の吉藤 健太朗さんに、リモートワークでの活用事例や、開発に込めた想いをうかがいました。

株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗さん

株式会社オリィ研究所 共同創設者 代表取締役 CEO

吉藤 健太朗さん(ヨシフジ ケンタロウ)

電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年に高校生科学技術チャレンジ(JSEC)にて文部科学大臣賞を受賞。2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、Grand Award3位を受賞。高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学創造理工学部へ進学。自身の不登校の体験をもとに、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発する。それにより2012年、青年版国民栄誉賞である「人間力大賞」に選ばれる。開発したロボットを多くの人に使ってもらうべく、株式会社オリィ研究所設立。代表取締役 CEOに就任。

大手企業からも注目を集める、「本人がそこにいる」感覚を持てるコミュニケーションツール

株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗さん

まずは、こちらの分身ロボットについて教えていただけますか。

一言で表現しますと、遠隔でコミュニケーションをとれる「分身ロボット」です。子育てや単身赴任、入院など、距離や身体的問題によって行きたいところに行けない人のもう一つの身体として活動するロボットです。この「OriHime」にはカメラ・マイク・スピーカーが内蔵されていて、インターネットを通してi Phoneなどから簡単に操作できます。

周囲を見回したり、「あたかもその人がそこにいるように」会話もできますし、首の動作でうなずいたり、拒否をしたり、両腕を動かすことでも感情を伝えることが可能です。「そこに本人がいる感覚」でコミュニケーションをとれますので、リモートワークの支援ツールとしても活用されています。

株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗さん

具体的に、リモートワークでの活用事例を教えてください。

例えば育児休職の場合、子供が保育園に入園すれば、復職してすぐに活躍できるというわけではありません。休んでいる間は、自分の役割は他の社員が担っていますし、違う上長のもとに戻らなければいけないケースもあり、復職後のキャッチアップには非常に大きなパワーが必要になります。人によっては「浦島太郎」のような状態に陥り、仕事や職場の新しい状況に適応するのが難しく、離職につながってしまうこともありますので注意が必要です。

その原因は、休暇中の会社とのコミュニケーションが、断絶されてしまうことにあります。それを防ぐためには、自宅にいながら、上長や同僚と定期的にやりとりを行ったり、リモートで会議に参加したりすることが有効だと考えています。

ここで一つの事例をご紹介します。NTT東日本さまの分身ロボット活用のケースです。同社は、社員の育児や介護と、仕事との両立を目標に掲げ、在宅勤務制度を正式に導入しました。ただし、在宅勤務の社員とオフィスにいる社員との間で、コミュニケーションがなかなか円滑に取れていない課題があった。在宅勤務の社員の方は、孤独を感じることも多かったようです。そこで、2015年の秋より、OriHimeを活用いただくことになりました。結果として、非常に良い効果を生み出しています。

株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗さん

どのようなことが評価されたのでしょうか。

まず、ママ社員の方からは「オフィスにいる同僚たちに対して、自分の顔が映らない」ことを評価いただけました。リモートワーク中の電話会議となると、お子様をあずけて、メイクして、家の中を無音にして…といった煩わしい準備が一切必要ないんですね。スマートフォンを起動させるだけでいい。自分が発言したい時だけマイクをONにすればよく、指一本で操作できるので、お子様が隣にいらっしゃっても、会議中には影響を及ぼしません。

仮に家事など別のことをしながらでも、イヤホンを耳に差して、うなずくボタンを押せば会議の場にいるOriHimeが代わりにうなずいてくれるので、オフィスの社員は「リモートであっても、ちゃんと伝わっている」ことを、リアクションで確認できます。

また、会議だけではなく、分身ロボットをその人のデスクに置いておけば「雑談」も可能です。普通に周りの話を聞いて、まるでその場にいるように自分の声で返すことができます。これは、Skypeやチャットツールで同様のことをしようとすると、なかなか難しい。このような、ちょっとしたアンオフィシャルなやりとりは、チームで仕事をする場合に相互理解を深めたり、お互いのコンディションを感じたりするなど、大切な役割を果たしています。

これをリモートで実現できるのは、「あたかも人がそこにいるように」をコンセプトとしたOriHimeの大きな特徴です。在宅側とオフィス側の双方にとって、低負荷で密度の高いコミュニケーションが生まれるようになり、NTT東日本さまにはすでに1年にわたり活用いただいています。

リモートワークが進む企業とそうでない企業との違いは、「目的の定義」と「柔軟性」にある

株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗さん

その他の会社での分身ロボット活用事例はありますか。

リモートワークの例ですと、営業シーンで活用いただく会社さまもあります。たとえば、資料を作成した社員本人がどうしてもプレゼンの場に同席できない場合、OriHimeを通じてのコミュニケーションが有効です。顧客側から資料についての詳しい質問を受けても、分身ロボットを通じてその場で返答することができますし、自分のプレゼン資料に対する顧客の反応をモニタ越しに感じることができますので、モチベーションアップにもつながるでしょう。

また、他の会社さまでは、従来は2名で海外出張していたところ、「1名+分身ロボット」で済むようになり、大幅なコストダウンを実現したケースもあります。その他、海外拠点とのコミュニケーションに用いたり、採用面接の一部を代行することに活用されたりと、その用途は拡大しています。OriHimeはかばんの中に入る大きさですのでそれほど重くありません。営業や面接のシーンで活用されるようになったのは、この携帯性が寄与していると思います。

リモートワークが成功する企業と、そうでない企業の違いは何でしょうか?

リモートワークを何のためにやるのか、その目的が定義されていることと、施策の企画・実行を行う際の柔軟性が大切だと思っています。「実際にSkypeなどのツールで試してみたのですが、なかなかうまくいきません。コミュニケーションにおけるアナログな部分が課題だと思っているので、OriHimeを試してみたい」という依頼を受けるケースがあるのですが、このようにすでにいろいろな可能性を試行錯誤されている会社さまは、うまく行くことが多いように思います。

私たちとしても、「OriHimeを納品して終わり」というスタンスではありません。それぞれの会社さまに使っていただきながら、課題を一つひとつ解決するために、機能をできる限りカスタマイズしたり、フィットする使用方法を提案したりもしています。目的に対して、柔軟かつ粘り強く現状を改善できる会社さまが、やはり成果を上げていらっしゃいます。

リモートワークが進む一方で、Face to Faceで行った方が、円滑に進む業務も当然あります。今後はおそらく、仕事のあり方も変わってくるでしょう。私自身が考えているのが、「生活するために仕事をしなくてはならない」時代から、「自分自身で選択して、本当にやりたいと思ったことをやる」時代への変化です。

子育てでも、趣味の世界でも何でもいいですが、それらを人生のメインに置いて、スキマの時間などをつかってリモートで仕事をこなすことも可能になるかもしれない。人生における主従が逆転する日が来るかもしれません。