新卒企業の採用、多様化 学生が面接官選びも
大企業で慣行となってきた新卒一括採用を見直し、新たな選考方法を模索する動きが目立ってきた。面接する社員を学生が選ぶ方法を「相棒採用」と称して取り入れたり、応募年齢の幅を広げて通年で採用したりといった試みだ。学生の売り手市場が続き、選考の解禁前から動く企業も多い中、人材獲得には柔軟な採用方法が必要との見方が強まっているようだ。
新卒一括見直し
広告業界大手のアサツーディ・ケイは平成29年度採用から面接担当者を選べる「相棒採用」を始めた。既に28年度から一括採用をやめ、複数回採用に切り替えている。年齢も学歴も問わない。
まず、面接担当候補の社員約90人が仕事内容や日常生活をネット上で公開。志望者は面接してほしい社員5人を選び、うち1人が面接する。選考基準に達し、一緒に働きたいと判断されると通過。筆記試験後の本部長面接では、最初に面接した社員が「相棒社員」として「応援演説」することもある。現場で求める人材を獲得するのが狙いだ。
今年の選考で内定した飯村一誠さん(22)は「最初はびっくりしたが、こんな採用をする会社ならきっと面白い仕事ができると思った」。
面接の段階から濃い人間関係ができるため、内定後の辞退者が減る効果もあった。相棒社員の贄田翔太郎さん(30)は「入社後も相談などに乗るメンター(助言者)役ができれば」と話す。
学生の負担減
新卒にこだわらない採用は広がる。ソフトバンクは今年4月入社の採用から、新卒一括採用を廃止し、入社時に30歳未満なら、通年で応募できるようにした。既卒者や海外の大学の卒業生を含め人材を集めたいことに加え「短期間で就職先を決めなければならない」学生の負担を減らすのが狙いだ。
ヤフーは10月、一括採用をやめて30歳以下なら経歴にかかわらず通年で応募できるように変更すると発表。楽天も27年からエンジニアの一括採用をやめた。経営者団体の経済同友会も今年、大学卒業後5年間、新卒扱いで通年採用する方式を提案している。
きめ細かな対応
新卒一括採用は企業にとって手間や費用を抑えられる利点がある。しかし1回しかないため、人材獲得競争の激しいIT企業などが、人材を集めるチャンスを広げようと見直しを検討。背景には、経団連加盟企業が取り決めた採用スケジュール通りに選考が行われていないこともある。
学生側からは「通年採用が加われば選択肢は広がる」(都内の大学関係者)と歓迎する意見もある一方で「一括採用の与えられたルール通りに就活していると戸惑う」との声も。
「広く人材を集めるにはいい動きだ」と話すのは経済評論家の山崎元さん。「一括採用はそもそも採用分野の一種の“談合”。入社後も同期は一律の人事管理が可能だったが、企業は個人単位のきめ細かな対応が求められる。学生もこの変化を受け入れるしかないのではないか」
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■新卒一括採用
企業が卒業してすぐの学生を一括して採用する方法。在学中に採用試験をして内定を出し、卒業後に勤務させる。戦前に始まり、戦後、人手不足を背景に定着したとされる。通年で採用するよりも、企業は採用コストなどを抑えることができ、学生も経験者と競争することなく就職し、長期的なキャリア形成が期待できる。一方で、在学中の就職活動が学業を妨げる、入社後のミスマッチが起きるといった課題もある。