慢性的な販売員不足… ソフトバンクが人材調達改革

総合慢性的な販売員不足… ソフトバンクが人材調達改革

ソフトバンクは携帯電話の販売店舗で働くスタッフの採用と育成、定着に奔走している。人手不足を乗り切るため、人材供給会社と結ぶ「電子調達」システムを新たに開発。激化するスマートフォン(スマホ)の販売合戦を、IT(情報技術)の力を借りて優位に進めようとしている。

■多数の会社とシステム連携、予算のブレを2%以内に

携帯電話の販売店は人手不足に悩まされがち(写真はイメージ。PIXTA)

携帯電話の販売店は人手不足に悩まされがち(写真はイメージ。PIXTA)

業種・業態にかかわらず、昨今の人手不足は企業を揺るがす深刻な課題になっている。ソフトバンクも例外ではなく、販売店で働くスタッフの確保は容易ではない。そこでソフトバンクは昨年(2015年)2月、業務パッケージソフトを使った人材の電子調達システムを新たに開発。人材の紹介会社や派遣会社といった供給先と新システムを結び、効率的に人材を充足できる体制を強化した。

 

システム稼働から1年以上が経過した今年7月時点で、早くも大きな効果が出始めていた。人材管理作業の人時(にんじ)生産性は新システムの導入前に比べて、約2倍に向上。人員予算の執行状況も、以前は予算からのズレ幅が例年プラス/マイナス10%あったが、「現在は同2%の範囲に収められるようになった」(コンシューマ戦略本部事業企画統括部事業企画部の玉城紀明部長)。

 

 

人材供給の協力会社との関係を密に(ソフトバンクの資料を基に作成)

人材供給の協力会社との関係を密に(ソフトバンクの資料を基に作成)

この間、アクティブな人材協力会社は延べ約330社まで拡大。「1社でも多くの協力会社から人材を供給いただけるように新システムで間口を広げ、人材調達を安定させたい」と玉城部長は話す。

 

■短期で辞める…1万人規模のスタッフが必要

 

ソフトバンクが人材調達の見直しに本腰を入れるのは、販売店で必要となるスタッフの数がケタ違いに多いからだ。

その対象になるのは、代理店に運営を任せている販売店を除く、ソフトバンクの直営店および家電量販店内に設けた店舗ブースで働くスタッフである。ソフトバンクショップやワイモバイル(Y!mobile)ショップなどのうち、直営店および量販店内の店舗だけで合計1000店以上ある。そこで働く派遣社員や契約社員、正社員といった販売スタッフは総勢1万人規模に達し、入社・退職・店舗異動が頻繁に起きる。

 

 

左から順に、コンシューマ戦略本部事業企画統括部事業企画部の玉城紀明部長、同部人材企画課の伊藤誠司課長、同課の渡邉康洋氏
左から順に、コンシューマ戦略本部事業企画統括部事業企画部の玉城紀明部長、同部人材企画課の伊藤誠司課長、同課の渡邉康洋氏

加えてスマホの業界は年4回、新商品が発売され、そのたびに大きな販売の波が来る。春先には新入生や新人社員が新たにスマホを買い求めるなど、ピーク対応も大変だ。販売店は常に混雑し、スタッフは休む暇もなく対応に追われる。

そもそも人手が足りないので採用が難しくコストがかさむうえ、やっとの思いで確保しても仕事がハードなので、1年以内に辞めてしまうスタッフが後を絶たない。ソフトバンクが年中、人員確保に駆け回らなければならない理由はここにある。

ソフトバンクと競合するNTTドコモとau(KDDI)もiPhoneを扱うようになった今、商品ラインアップは横並び。そんななかでどれだけ多くのスマホを販売できるかは、販売スタッフの確保とサービスの質にかかっている。人手が足りず、顧客をさばき切れない店舗は消費者に敬遠されてしまう。

■煩雑な人材契約作業と決別

 

 

人材戦略のアクション構築(資料提供:ソフトバンク)

人材戦略のアクション構築(資料提供:ソフトバンク)

従来はこうした煩雑な人材調達業務の多くを人海戦術でまかなっていた。メールや紙、表計算ソフトのExcel(エクセル)で人員スケジュールを管理し、人材供給会社と契約・更新・変更などのやり取りをしていた。

この方式を改め、新システムでは人員予算に合った人材調達プロセスを電子化。人員の充足状況をリアルタイムで把握できるようにし、「どの店舗に」「いつまでに」「何人」「どんなスキルを持った人材を」投入すればよいかを判断できる仕組みを整え、業務を効率化した。

同時に、販売スタッフの職務履歴やスキル、販売実績を見える化し、タレントマネジメントを徹底。スタッフの能力を最大限に引き出せる店舗配置と教育、そして評価・処遇の体制も整え始めた。

 

 

新システムの画面例。左は販売スタッフのシフト作成画面、右は人材調達の申請書処理画面(画面提供:ソフトバンク)

新システムの画面例。左は販売スタッフのシフト作成画面、右は人材調達の申請書処理画面(画面提供:ソフトバンク)

こうしてスタッフのモチベーションとロイヤルティーを高めて戦力化と定着を図り、離職率を引き下げるのが当面の目標だ。それが結果的に顧客満足度の向上や採用コストの低減につながると、ソフトバンクは見ている。

ソフトバンクが新システムの構築を急いだのには、社内的な理由もある。昨年4月に旧ソフトバンクモバイルが旧ソフトバンクBBと旧ソフトバンクテレコム、旧ワイモバイルを吸収合併。そのうえで同年7月に旧ソフトバンクモバイルを現在のソフトバンクに社名変更した。ソフトバンクショップとワイモバイルショップは裏側の組織が統合され、今年2月には人員確保も一本化。そのタイミングに合わせて新システムの利用を本格化した。玉城部長は「新システムがなければ、組織統合後の人材調達業務は大混乱に陥っていた」と振り返る。