大量退職時代 シニア、人脈や知識を生かし起業

中途, 総合大量退職時代 シニア、人脈や知識を生かし起業

団塊の世代の大量退職などを受けてシニア層による起業が今後増えそうだ。幅広い人脈、経験や知識などを強みに有力ベンチャー企業も登場している。安倍政権は開業率を現在の2倍の10%と欧米並みに引き上げる目標を掲げる。若者だけでなく、腕に覚えがあるシニアが産業界の活性化の一翼を担う存在になる。

 会計ソフトを開発するアカウンティング・サース・ジャパン(東京・新宿)。森崎利直社長が61歳で創業してから4年で顧客にした中小会計事務所は約1500にのぼる。クラウド型サービスによる割安な料金と、会計事務所が顧客企業の業績を毎日チェックしやすいようにして使い勝手を高めた工夫などが評価されている。

 森崎社長は会計システム大手の日本デジタル研究所(JDL)の取締役を退いた後、「経験や能力を思い残すことなく使いたかった。60歳を過ぎても会社をつくれば社会に貢献する仕事ができる」と考えて起業した。

 ものを言ったのが人脈だ。JDL時代のベテランの同僚ら10人余りで知り合いの会計業界関係者を各地に訪ね、新サービスの魅力を訴えた。約800人の会計士から出資を集めた。企業向けクラウドサービス世界大手の米セールスフォース・ドットコムも出資。合計の出資額は10億円を超え、ソフト大手に対抗できる製品を開発できた。

 大学や企業の研究者もシニア起業の担い手となる。注目されている企業の一つが、材料メーカーの応用ナノ粒子研究所(大阪市)だ。大阪市立大学の名誉教授だった小松晃雄社長が68歳だった2006年に設立。来春には従来の鉛はんだの約5倍のセ氏900度に耐えられる接合材「銀ナノ粒子」を業界に先駆けて量産し、電子部品メーカーなどに供給する。

 小松社長は大学教授時代、ナノテクノロジー研究に没頭。「自ら取得した特許を放置したくない」と起業し、物理や化学など各分野から10人近い研究者を集めた。銀ナノ粒子を08年に開発。昨年、接合材メーカーの日本スペリア(大阪府吹田市)と資本提携し、量産できるメドが立った。小松社長は「長年の研究成果を評価し、支援してくれる人はいる。経営は難しいが、会社をつくれば好きな研究をいつまでも続けられる」と語る。

 シニア起業で最近話題になったのはブックオフコーポレーション創業者の坂本孝氏(73)が09年に設立した外食企業。低価格のフランス料理店「俺のフレンチ」などを展開する。立ち飲みスタイルの導入などで客の回転率を高めることで、高級素材を使いながら価格を抑え新風を吹き込んだ。

 監査法人トーマツ系のトーマツベンチャーサポート(東京・千代田)の斎藤祐馬事業開発部長は「問題意識が高く視野が広いシニア起業家は幅広い分野でイノベーションを引き起こす力がある」と指摘する。