障害者虐待防止法施行から1年 足りない専門人材

中途, 総合障害者虐待防止法施行から1年 足りない専門人材

障害者虐待防止法の施行から1年が経過、市町村では手探りの対応が続いている。同法により各市町村には、虐待を発見した人から通報を受け付ける窓口が設置されたものの、障害者福祉の知識や経験を持つ職員が不足しているためだ。厚生労働省や各自治体は、スタッフを養成する研修を開くなど対応を急いでいる。

 「どこに注目して虐待の有無を確認すればいいのかわからなかった」。神奈川県南足柄市の通報窓口「障害者虐待防止センター」の職員は、今年8月、県から「虐待の疑いがある」と情報提供があった市内の障害者施設を調査した際の戸惑いを口にする。

 センターに社会福祉士などの専門家はいない。市の財政に余裕がないこともあり、窓口の5人の職員は他の業務と兼務している。このケースでは、入所する知的障害者や施設職員らから聞き取り「虐待はない」と県に報告した。一方で、市職員は「専門家なら違う見方ができたかもしれない」と不安を抱えている。

 埼玉県幸手市の通報窓口も7人の職員が対応するが、専門の担当者はいない。これまでに窓口への相談は約10件。家庭や施設を立ち入り調査した例はまだない。緊急の場合は他部署にいる保健師らに協力してもらうことにしている。ただ「実際に連携できるかはわからない」と職員は話す。

 厚労省によると、窓口設置を契機に専門家を採用した自治体もあるものの「小規模市町村を中心に、職員が日常業務と兼務しているケースが多い」。同省は、自治体職員に専門知識を習得してもらおうと、都道府県を通じた研修会の開催に力を入れている。

 千葉県は9月24日、県内の市町村や障害者施設の職員らを対象にした研修を実施した。弁護士らが講師を務め、約300人が法律の内容や通報の仕組みを学んだ。

 今年度から障害者虐待の担当部署に異動になったという同県横芝光町の男性職員は「これまで町が通報を受けたケースは少なく、様々な事例を学んで今後の対応に生かしたい」と話した。

 埼玉大教育学部の宗沢忠雄准教授(障害者虐待防止学)は「市町村によって人員や専門知識に差が出ている」と指摘。研修内容について「現在は法律の内容を学ぶものがほとんどだが、虐待に至る背景にある家庭の問題など実用的な事例を伝えることが必要だ」と話している。