派遣【論風】労働者派遣法の改正 資産要件緩和の再検討を
昨秋に改正された労働者派遣法は(1)3年間の経過措置後、届け出制であった特定労働者派遣事業を廃止し、すべて許可制に統一し、(2)同一事業所への派遣期間は3年を上限とする派遣期間の制限を設けた点に大きな特徴がある。
もともと労働者派遣事業には、厚生労働大臣による許可制の一般事業と届け出制の特定事業(派遣労働者の常時雇用を要件)の2種類があったが、今回、特定の方を廃止して、派遣事業はすべて許可制となったのである。
しかし特定事業会社にとっては今後、許可を得るのは資金的に困難であり、廃業に追い込まれるケースも多々発生するのではないかと危惧される。それは一体、どういうことなのか。
◆中小事業者が重要な役割
改正法の対象となる「特定」の事業所数は5万6686(「一般」を含めた全事業所数の約76%)、常時雇用労働者数は27万5738人(同全労働者数79万8925人の34.5%)、派遣先は11万3911件。年間売上高は1兆5134億円だが、売上高5000万円未満の事業所が全事業所の76.7%を占めている(以上の統計は厚生労働省、2015年)。
このように、「欠員補充など必要な人員を迅速に確保するため」、「一時・季節的な業務量の変動に対処するため」、あるいは「専門性を生かした人材を活用するため」などの理由により派遣労働者を必要とする社会的需要は非常に大きい。中でも特定派遣事業、とりわけ、上述した通り、売上高5000万円未満の中小規模事業者が事業者数、労働者数、売上高においても重要な役割を果たしているのが現状である。
◆背景と許可要件
一部の悪質な事業者によって数年前に新聞などマスメディアで大きく取り上げられた社会問題、すなわち特定労働者派遣事業の派遣労働者の中には、有期雇用を反復更新し、劣悪な労働条件のもとで働かざるを得ない状況が大々的に報道された。
この問題を契機に、政府は特定労働者派遣事業の在り方について、労働政策審議会などで検討を重ね、その結果、前述の冒頭で示した2つの骨子を柱とする改正法が施行された。
第1の骨子の許可制とは、具体的には「資産2000万円×事業所数」、「現預金1500万円×事業所数」という資産要件をクリアしなければならない(ただし常時雇用派遣労働者が10人以下、あるいは5人以下の場合は当要件の軽減措置あり)。
中小規模の事業主にとって3年間の猶予期間中に、この多額な資産ないし現金を用意することは現実的に困難であり、その精神的重圧は大いなるものと推察される。
いうまでもなく、運営資金は派遣料金(派遣先が派遣元事業主へ支払う料金)から賃金(派遣元事業主が労働者に支払う賃金)を差し引いた差額(マージン)で賄われており、そのマージンには福利厚生費や教育訓練費などが含まれている。つまり厚生労働省も調査報告すべきであるが、良心的で誠実な事業主ほど細々と経営しており、資金的余裕はない。
もともと派遣事業は、産業構造の変化と労働者の意識多様化の下で、1980年代から今日まで労働力の需給を調整する重要な市場機能を果たしてきた。中でも、特定事業所の大部分を占める中小規模の派遣事業は、歴史的にもまた今後も、さらには高齢化に伴う生産年齢層の急減への対策という観点からも、その役割は大きく、今後も育成・発展させる必要がある。
その育つ芽を資産要件という足かせをつけて摘み、廃業に追い込んではならない。残り2年半後の「特定」廃止までに、履行延長を含め、再検討が急がれる。