総合マックは人材輩出企業 OB次々外食トップに
日本マクドナルドで実績を積んだOBたちが引く手あまただ。米系ハンバーガーチェーンのウェンディーズ・ジャパン(東京・港)と傘下のファーストキッチン(同・新宿)は9月1日付で、日本マクドナルド出身の紫関修氏を経営トップに迎える。外食業界を見渡せば、マックOBは「コメダ珈琲店」「バーガーキング」「すき家」の経営を任されている。経営を立て直し中のマクドナルドはなぜ、「人材輩出企業」と化しているのだろうか。
■コメダ珈琲店、バーガーキング…
ウェンディーズ次期社長の紫関氏は、マクドナルドの経営企画部門で出店や改装などを担当し、日本屈指のファストフードチェーンの拡大戦略を支えてきた。その経営手腕を買われ、2013年にフレッシュネスバーガーを運営するフレッシュネス(同・中央)の社長にスカウトされた。
フレッシュネス入り後の業績は順風満帆だったといえる。13年~16年までに同社の売上高を年平均15%伸ばした。その紫関氏がフレッシュネスの社長の座をなげうって、ウェンディーズの経営トップについたのは、より刺激的な仕事を求めていたからだろう。
紫関氏は50歳代半ばで、経営者としては働き盛り。すべての経営改革がこれから始まる「ウェンディーズ―ファーストキッチン連合」での挑戦に引かれたのかもしれない。今年7月にフレッシュネスを退職すると、ウェンディーズの顧問に就いていた。
スカウトされたマックOBは紫関社長だけではない。バーガーキング・ジャパン(同・渋谷)の村尾泰幸社長、ゼンショーホールディングス傘下の牛丼チェーン、すき家本部の興津龍太郎社長もマクドナルド出身だ。
6月に上場したコメダホールディングスの臼井興胤社長はマクドナルドの元最高執行責任者(COO)。2000年代後半に実質ナンバー2としてマクドナルドの経営にあたり、一時は「社長候補」ともささやかれていた。
■「外食の巨人」のノウハウ吸収
マックOBのスカウトが相次ぐ理由の一つは、原田泳幸前社長時代の幹部人事かもしれない。原田氏が積極的に外部人材を登用した一方で、意見の対立が目立ったプロパーの幹部たちが同社を去ったとされる。マック出身者たちが人材市場にあふれ出た結果、彼らを他社が積極的にスカウトしている側面がある。
しかし、それだけではマックOBのスカウト・ラッシュは説明がつかない。原田時代の負の側面の現れというより、「外食の巨人」であるマクドナルドの経営ノウハウを取り込み、成長戦略を進めようとする「スカウトする側」の狙いがあるからだろう。
日本マクドナルドの店舗数は全国約3000店で、圧倒的な存在。そこで磨かれた店内作業のオペレーションや店づくり、出店戦略、マーケティングなどの手腕を買われているのだ。
実際、紫関氏はマクドナルド時代に培った経営手法をフレッシュネスに持ち込み、ハイペースの成長を実現させた。中でも効果が大きかったのが、ショッピングセンター内などのフードコートへの出店だった。
マクドナルドはフードコートへの出店実績が豊富だったが、フレッシュネスはほぼ皆無。フードコートに合った店内オペレーションなどの開発では、マクドナルド時代の経験が生かされたようだ。
■かつての「人材輩出企業」
日本の流通・サービス業の歴史を振り返れば、マクドナルドと同様、日本最大の小売業だったダイエーも、かつて「人材輩出企業」として知られていた。ダイエーという巨大企業内で様々な仕事を任されたり、日本で断トツの店舗網のオペレーションなどを経験した人材はライバル企業からも一目置かれた。
彼らはスカウト後も重宝され、「さすがダイエー出身者」と称賛されたが、その後のダイエーは経営が悪化。最後は、イオンに飲み込まれるという結末をたどる。このダイエーの転落は経営者人材の流出が一因だったとされる。
日本マクドナルドも、人材流出のリスクに気づいている。いったん本体を離れた下平篤雄氏を昨年春に副社長兼COOとして呼び戻し、経営改革を託した。
試されるのは、新天地に挑むマックOBたちだけではない。彼らを育ててきた日本マクドナルドにどれだけの人材が残されているのか。これからも日本のサービス産業でトップクラスの人材をつくっていけるのか。「育ての親」も問われている。