アルバイト・パート人手不足、時給1500円でも集まらない(ルポ迫真)
深夜は時給1500円――。
6月上旬の東京・渋谷。駅前のスクランブル交差点近くにある牛丼店「吉野家」が店頭に掲げたアルバイト募集は昼間も1200円と破格の数字が並ぶ。ライバルの「すき家」「松屋」も1100~1375円だ。求人情報大手のリクルートジョブズがまとめた首都圏の外食店の平均時給971円を上回る。
大手外食チェーンがひしめく渋谷駅周辺のアルバイト争奪戦は集客競争以上に厳しい。焼肉店の「牛角」は人の背丈を超える巨大な求人ポスターを張り出し、ビルの2階のファミリーレストラン「ガスト」は通りに面した階段の上り口にアルバイト募集の立て看板を置く。出店ラッシュのコンビニエンスストアとも学生を取り合うなか、「都市部ではこの1年で時給を50円前後上げた外食店もある」(リクルートジョブズ)。
外食各社は時給の安いアルバイトを店舗運営の主力とし、人件費を抑えることで収益を上げてきた。そのビジネスモデルが景気の回復とともに揺らいでいる。学生とともに貴重な戦力だったフリーターには正社員への道が開け、時給を上げても日々の営業を切り盛りする人手が集まらない。
店舗単位では限界と判断したすかいらーくは5月から順次、アルバイト採用を本部に集約している。勤務時間などの条件が合う店舗を紹介するといった手立ての効果もあって、「営業に支障が出るほどの影響はなかった」。社長の谷真(62)は胸をなで下ろすものの、「深夜時間帯の人集めは苦労が続く」。
「やりたいことがすぐに見つかる」(都内の大学に通う女子学生)という売り手市場だ。同じ外食業界でも人手集めの難しさには濃淡がある。渋谷駅の周辺でもコーヒー店「エクセルシオールカフェ」は時給950円から。牛丼店や居酒屋より安い。居酒屋「響(ひびき)」などを展開するダイナックの社長、若杉和正(60)は「若者に人気があるのはカフェチェーン。イメージの良さにアルバイト探しが流されている」とこぼす。
讃岐うどん店「丸亀製麺」を運営するトリドールは国内外1000店の達成に向け、郊外中心だった出店エリアを都心部にも広げる方針だ。しかし、社長の粟田貴也(52)は「東京の時給は高すぎる」とため息をつく。拡大したくても簡単にはできない現状がある。「少しでも賃料が安い物件を見つけないと、出店できない」。人手不足は外食チェーンの成長戦略の大きな障壁となりつつある。
