総合高野秀敏×中村真一郎【前編】「そろそろ求人が止まる」10,000人と面談したキャリアコンサルタントは語る。
「絶対にそろそろ、求人が止まる」
21世紀に入る以前から転職市場を見つめてきた男は、2、3年のうちに、求人が激減することを予言した。
株式会社キープレイヤーズ代表、高野秀敏。1999年に人材業界のインテリジェンスに入社。2005年には人材エージェントのキープレイヤーズを設立し、転職についての多数の著書を出版してきた。17年間のコンサルタント歴の中で、10,000人以上のキャリアカウンセリングをおこなってきた。
“人”を、“職”を、誰よりも知る男はこれからの転職市場に何を見るのか。
ウィンコーポレーション代表、中村真一郎社長が様々な業界の“一流”の仕事人と「仕事」をテーマに語り合う対談。第3回前編では、転職市場、経営、そして人事について対話がなされた。
転職する人にとっては今がチャンス。歴史を見れば、間もなく求人が止まる

中村:
まずは高野さんの専門分野である“転職”についての考え方をまずはお聞きしたいです。
高野:
基本的に多くの転職自体は現状の不満から来ていることが多いのですが、それを解決するために多くの人は転職をする。
しかし、解決できる問題がある場合は現職で解決すべきで、辞めるならばそのトライを一度でもしてから辞めた方がいいと私は思います。
俗に“天職”という言葉がありますが、私はそれが必ずしもあるわけじゃないと思っています。もちろん、“天職”を見つけられた人は幸運ですが、そればかり追い求めて転職を繰り返すのは、青い鳥を追い回すようなもの。
それよりも、目の前にあることをまずできるようになるというのが一番大事です。それをやり切った後に、会社への不満とか業界への不安などから職業を変えていくのはアリだと思います。
若いうちは、隣の芝生が青く見えることが多いので、気をつけなければなりません。30〜35歳までに自分の強みを確立して行って、それをどれだけ自分の価値として発揮できるのかということを考えられるようになるといいと思います。
中村:
企業と転職希望者の間に立って、客観的に人材業界を見渡す立場にいらっしゃる高野さんの目には、ここ数年の転職市場の移り変わりはどのように映っていますか?
高野:
転職自体はこの10年、20年で一般化されたと思いますね。「職を変わる」というのはそんなにネガティブに捉えられることも無くなりましたし。採用する側も、以前ほどは転職の回数などをそれほど気にしなくなったという印象です。
中村:
どこも人が足りないということで、人材業界の熱気はこのところ高まる一方ですね。
高野:
ただ、私はそろそろ求人も止まってくるのではないかと見ています。実は、ここ20年で、1995年、2002年、2009年は求人が全然ない年でした。7年ごとに周期が来ているので、次は今年、2016年ですよね。
もちろん、オリンピック景気などで1、2年ずれるかもしれないですが、間違いなく落ちる時期が来るだろうと私は考えています。
転職する人にとっては今がチャンスなんです。絶対にそろそろ、求人が止まる。過去がそうだったんだから、ずっと景気が続くということはないと思います。
皆がVR・ARをやることはないですが、このトレンドをどのように事業に取り込んでいくかというのは非常に重要なポイントです。例えば、今は数年前と比べて、マーケティングのできる人や動画関係の企画・制作ができる人のニーズが非常に高い。
中村:
では、転職者は、今こそ楽をしない方がいいということですね。不景気がいつ来てもいいように、常に危機感を持つべきだと。
不景気になったら、本当に実力を持ったものしか生き残れない

高野:
“天職”という話題が先ほど出ましたが、私にとっての天職は、やはり今のキャリアコンサルタントですね。
前職のときに職業適性テストを受けたんですが、大勢の中で私だけキャリアコンサルタントの適性が100%合致していたんです。その時、なぜ自分が生きてるかということがわかりました。「この職業に必要なコンピタンスを私はもともと持っていたんだ」と実感しましたね。
中村:
私も、自分は経営者以外は無理だと思いますね。良くも悪くも経営者って融通が利かないしわがままで、自己主張激しくて、要は「嫌な奴」。でも、その「嫌な奴」しか私はできません(笑)。その役割が向いているんです。
ただ、一口に経営者と言っても、何か一つ成し遂げた事実がないと辛い時代かなと。元経営者のコンサルタントなどは多いですが、そういう時に「こういうことをやった」という実績がないとなかなか信用もされにくいですね。今は部長よりも社長の方が多い世の中なので。
高野:
元社長であっても先が見えない時代になって来ているということですね。景気もいつ後退してもおかしくない状況です。
中村:
今、私は創業して21年。時代の変化の中でいろいろと仕事を変化させ、常に新規事業に着目して、多角化を図ってきました。
そんな私にとって、一つの事業だけを続ける経営者はリスキーだと思いますね。そういうリスクを背負うマインドを尊敬もしていますが。
僕も高野さんも、良い時代も悪い時代も見てきているから言えることがある。でも最近の傾向を見ていると、時代の流れが非常に早くなって、「自分たちはイケてる」と勘違いする方が増えているように思います。
今はいいですが、景気が悪くなったとき、個人も企業も、本当に実力を持つ者しか生き残れないのではないでしょうか。
高野:
そうですね。そのために私が大事だと思うのは、新しいトレンドをキャッチする一方で、浮足立たないことです。
VRやARなど新しい分野で『図解で分かる』『誰でも分かる』みたいなタイトルの本を読んでいるサラリーマンをしばしば喫茶店で見かけますが、今の仕事を100%頑張ってないうちに他のことをやっても身になりません。
会社のステージの移り変わりが激しい時代にあって
中村:
高野さんはそれこそ何千人という求職者と会っていますが、人を見るポイントというのはありますか?
高野:
人を見るポイントというのは、なかなか伝えるのが難しいんですが、転職エージェント的な回答をするとすれば、「どういう成果を出していて、その成果に対する再現性がありそうか」という点。
それから、性格面では会社のパーソナリティーとの適合性を見ます。例えばDeNAさんとかであれば、はっきりものを言う人が求められています。ミーティングで議論をしないような人は非常に厳しい。
企業側では、失敗事例をストックしておくといいと思いますね。「前職が△△社の人はいいけれど、〇〇社の人はダメ」のような。もちろん、それは採用される側も同じで。そのためには、失敗を恐れず挑戦することです。自分自身が挑戦しておかないと経験値が貯まらないので。
多くの社員を束ねる経営者としての立場からはいかがですか?
中村:
実際のところ、小規模の会社では社長の好みで人を採っている傾向があると思います。これが次第に組織が大きくなっていくと、単なる社長の思いだけでは人を動かすことができなくなる。そこで私は採用に関して幹部に任せるようにしています。もちろん最終的な責任は私にありますので、必要なモニタリングはしていますが。
業績面に即して言えば、それによって業績が上がったかどうかで人事の成否を判断しています。数字が上がっていないのであれば、その幹部の人事は適正でなかったということです。
高野:
私は、会社のステージごとに求められる人材は変わってくると思っています。黎明期からいる社員が、成熟期に入った社員の存在を疎ましく感じるのはよくある話。
ただ、今は会社の寿命そのものが短くなっているため、そのステージの移り変わりが非常に早くなっていると思います。以前は30年と言われた会社の寿命が、今や10年未満と言われています。求められる人材の移り変わりも非常に激しくなっているんです。