総合イオン、地域社員を幹部に 地元密着へ人事刷新
イオンは中核事業である総合スーパーの人事制度を刷新する。転勤のない地域社員が店長や部長など幹部クラスの上位管理職に昇格しやすくする制度を2017年春に導入する。年収の実質的な上限も4割ほど引き上げ、1000万円程度にする。保育や介護を抱える人材の離職を防ぐとともに地域に根ざした専門性を備える人材の育成につなげ、店舗の販売力を底上げする。

人手不足を背景に流通業を中心に地域社員を導入する例は増えている。ただ、待遇面で転勤可能な正社員と差が付くことが多く、地域社員の年収が1000万円に届くのは珍しい。イオンは人件費の総額は増やさず、地域社員の待遇を改善。地方を中心に人手不足が深刻になるなか、保育や介護を理由に優秀な人材が離職することを防ぐ。
約2万人の正社員を抱える総合スーパー運営会社のイオンリテールは現在、個人の経験や能力をもとに報酬を決める「職能資格制度」を採用している。現行制度では転勤できる「全国社員」が地方の小型店などで管理経験を積みやすいため、事実上、地域社員よりも上位の管理職に就くことが多かった。上位管理職に当たる「部長・大型店店長級以上」の有資格者約800人のうち、地域社員は1人しかいない。
中堅社員以上を対象に新たに導入する「役割等級制度」は役職や職務の内容をもとに報酬を決める。過去の経験にかかわらず、与えられた役割に対する成果を評価の対象とすることで地域社員と全国社員の間にあった昇進の格差をなくす。
地域社員は現在、正社員の4分の1強を占めており、将来的には上位管理職に占める地域社員の割合も近づく見通し。上位管理職に昇格した地域社員は取締役など役員に起用する可能性もある。
衣食住の幅広い商品分野を扱う総合スーパーは多様化する顧客ニーズへの対応も課題だ。本部主導の一律の売り場を見直し、地域ごとに客層や所得水準に合わせた店づくりを急いでいる。イオンリテールは15年、6つの地域カンパニーごとに戦略を立てる組織体制に改めた。セブン&アイ・ホールディングスも傘下のイトーヨーカ堂を全国13地区に再編し、各地に商品開発担当者を配置した。
イオンは今回、商品が中心だった地域対応の施策で人事面に踏み込み、店頭販売員などを対象とするキャリアプラン「専門職コース」も新たに設ける。主任や課長を経験しなければ部長や店長になれない制度を見直し、売り場や商品に精通した人材に上位管理職への門戸を開く。
地元のニーズに詳しい人材をそれぞれの地域に配置し、店舗の競争力の向上につなげる考えだ。成果を出した現場の従業員に報いる仕組みとし、パートなど約10万人いる時間給の従業員からの正社員登用を進める。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、14年の「卸売・小売業」の年間平均給与は354万円だった。従事者数が同等に多い「製造業」の3分の2にとどまっている。転勤がない代わりに給与水準など待遇を抑えることができる地域社員はもともと、給与水準が低い流通業が全国に張り巡らせた店舗網を維持するために採用してきた。
人手不足が続くなか、きめ細かな地域対応をさらに進めるためには優秀な人材を確保し、従業員1人当たりの生産性を高める必要がある。イオンが地域社員の待遇改善に踏み出すことによって、人海戦術に頼ってきた流通業界の人材政策が変わる可能性がある。