人材紹介会社の新卒市場参入で過熱する「学生争奪戦」

紹介人材紹介会社の新卒市場参入で過熱する「学生争奪戦」

2年続いた就活日程見直しで「採用現場」は混乱したものの、来年春の採用を目指した今年の就活は6月から選考が始まり、大手企業を中心に一段落した。内定率も順調に推移している。企業の人材採用を研究する「採用学」を提唱し、同名の書籍を今年5月に出版した横浜国立大学大学院の服部泰宏准教授に、採用の最前線で起きている変化について聞いた。4回に分けて報告する。【田中学】

「採用学」服部泰宏さんインタビュー(1)

──今年の企業の採用動向をどう見ましたか。

◆服部さん 昨年は、採用日程繰り下げで就活生も企業も苦労したようですが、今年は企業が引き続き苦労したのに対し、就活生はうまく適応したように見えます。売り手市場でもあり、学生は1年上の先輩から昨年の就活の話を十分聞いて対策を練り、賢く動きました。

──売り手市場なのに、1人あたりのエントリー数が減ったというデータがあるそうですが。

今年の就活生は採用日程見直しにうまく適応していたようだ=マイナビ合同会社説明会で、竹内紀臣撮影
今年の就活生は採用日程見直しにうまく適応していたようだ=マイナビ合同会社説明会で、竹内紀臣撮影

 ◆今年は採用日程が昨年より2カ月早まり、6月1日スタートでしたが、売り手市場だったことから、学生は「数打つ」作戦よりも、挑戦したい会社を厳選してエントリーしました。これは、企業側から見ると、昨年と同じ対策では応募者が集まらない、という結果を招きます。実際、頭を抱えた企業は多かったようです。

学生にとっては、全体的に「ハッピー」とは言わないまでも、昨年よりはましだった、という状況です。

就活サイトだけを使う企業が学生集めに苦戦

−−就活生はうまく適応したのに、企業側はなぜ苦労したのでしょうか。

◆何もせずとも応募者が集まる超有名企業は別ですが、大企業を中心に学生の動きへの対応が後手になったところが多い。特に、これまでの一般的な採用手法を踏襲してきた企業です。一般的な手法とは、就活サイトを使って募集、説明会を行い、テストや面接を複数回経て内定を出すやり方ですね。学生が就活サイト以外のルートも使い始めています。

企業もこの動きに気づいていないわけではないでしょうが、対応しなければ、一般的な就活サイトを使う学生しか集められないことになるのです。

──とはいえ、6月1日の実質的な採用選考スタート時の内定率は、各種の調査で昨年を20%ほど上回り、一昨年と同様の水準のようです。

◆多くの企業は昨年の採用活動で人材を十分に確保できませんでした。数的に余裕を持つため多めに内定を出しています。昨年も学生の売り手市場でした。ベンチャーや中小企業では、そもそもエントリーがまったく来ないケースもあったのです。

もちろん、大企業の採用日程終了後に学生たちの目がベンチャーや中小に向き始めたのですが、日程繰り下げのあおりを受けてしまいました。今年はその反省を生かして、スケジュールを見直したり、多めに内定を出したりするといった対策を取りました。そうしたことを反映した数字でしょう。

企業と学生との接触ルートが増えている

−−学生が就活サイト以外のルートを使い始めているとは?

◆主に、人材紹介会社、就活イベント、自前の採用を展開する企業の三つのルートがあります。

人材紹介会社は、最近、大学に積極的にアプローチしています。ゼミナールや講義に来て、学生たちと個人的に知り合いになる。人材紹介会社のシステムは、就活サイトと違って成功報酬です。良くも悪くも一生懸命で、学生たちも彼らを頼って情報提供を受けています。

人材紹介会社からの情報の方がリアルなことも多い。学生に「君はこの会社向いているよ」といったアドバイスをします。もちろんこれにも良し悪しがあって、就活サイトでは自由に選べるのに、人材紹介会社だと対人関係で断りづらかったりすることもある。

人材紹介会社の顧客は、「○○大学の学生なら採用したい」という明確な方針を持つベンチャーや中小企業です。ベンチャーや中小企業は就活サイトだけに頼っていては良い人材を採用できないし、大学のキャリアセンターに食い込むことも難しいことを知っている。そこで、人材紹介会社と組んで独自の採用ルートを築こうとしているのです。多額の費用が必要ですが、一つの人材獲得手段になりつつある。

感度の高い学生が主催する「出会い系イベント」

−−就活イベントや自前の採用手法も生まれていますね。

◆学生が主催する就活イベントも、もう一つの採用ルートになっています。特に、早慶や「MARCH」といわれる上位校では、学生が自分たちでOB・OGとの出会いの場を作っています。就活イベントを事業化する学生ベンチャーもあります。

また、ベンチャーや中小企業が自前の採用手法を構築する動きもあります。特にある程度規模が大きくなったベンチャー企業は、ユニークな選考方法を実施することで話題を広めて、自社サイトから応募者を集めています。

就職に関して多くのチャンネルが生まれています。就職サイトはメジャーですが、いくつもあるチャンネルのうちの一つの選択肢になりつつある。就活サイトだけでは、感度の高い学生と接触できなくなっているのです。