総合人手不足が地方企業の成長阻む 中村正氏 岐阜県経済同友会筆頭代表幹事
人手不足対策が地方経済の最重要課題になっている。私が社長を務め、養蜂や食品事業を営む秋田屋本店が本拠を置く岐阜県の4月の有効求人倍率は福井、富山両県に続いて全国第3位の高さだ。
岐阜県には大企業からの注文で相手先ブランドの製品をつくるOEM工場が数多くあるが、受注した経営者の頭に真っ先に浮かぶのは人手の確保だ。地元から自力で雇用できるのはわずかで、大半は人材派遣会社に頼っている。
運輸業を営む旧知の経営者はドライバーや荷下ろしの人員が集まらずにビジネスチャンスを逃したと嘆く。小売業の経営者は人手の確保にめどが立たず温めていた新規事業を取りやめ、金融機関の融資も断らざるを得なかったと肩を落とす。人手不足が日銀の異次元金融緩和の効果を打ち消し、地方経済は再生への歩みを止めてしまっている。
東京一極集中の是正が叫ばれてどれほどの時間が経過したことか。対策として地方分権、多極分散型国土形成などが打ち出されたが結局、改善されていない。それどころか2015年の人口移動状況を見ると東京圏への転入超過は前年よりも約1万人増え、一極集中は今も加速している。
安倍政権は一億総活躍社会の実現に向け「働き方改革」を掲げる。非正規労働者の待遇改善、長時間労働の抑制、高齢者の就業促進などを目的に必要な法整備を行っていくという。生産年齢人口が減少していくなかで働く人を増やす政策意図は理解できる。
だが全国一律の「働き方改革」を推し進めても、地方から東京圏に人が流出していく現在のシステムを改めない限り、地方の人手不足は解消されないのではないか。
地方の人手不足対策には地方自身が働く場を創り出すことや、地方企業が地域の魅力を生かした働き方を提案する努力も必要だ。岐阜県経済同友会では豊富な地域資源である森林を活用した雇用の創出や、地方ならではの働き方モデルを提案するための組織を立ち上げたところだ。
ただそれでも限界がある。地方の人手不足を解消するには、東京圏から「不平等」といわれるぐらいの大胆な働き方改革が必要ではないか。例えば企業がつくる保育所への支援金や主婦パートの「130万円の壁」を取り除くための助成金を地方には手厚くするなどだ。現在の状況が続けば地方の労働力は枯渇してしまい、地方創生への道は険しくなる。