増えるスポットコンサル

総合増えるスポットコンサル

定年になったシニアが在職中の経験や人脈を生かして、短時間だけビジネスの相談にのる「スポットコンサルティング」が増えている。雇用延長に比べ、シニアは時間に縛られることがなく、企業側も必要な人材をピンポイントでコストも安く雇えるメリットがある。

「社会に出て、緊張感がある人は魅力がある。命ある限り働きたい」。NECで30年近く海外事業に携わった後、趣味のワインを生かして米国のワイナリーで日本向けの輸出などを手がけた秋月康孝さん(66)は意気盛んだ。シニア人材が企業の海外進出を支援するサイエスト(東京都港区)に登録し豊富な経験に基づくアドバイスを企業に提供する。

サイエストには海外事業経験を持つ2400人が登録。2時間単位で対面や電話で経営相談するスポットコンサルティングサービスや、1日単位で顧問になり、現地などにも同行できる「グローバル顧問」がある。中小企業など約200社が利用している。

秋月さんもシンガポールでワイン事業を計画する企業のグローバル顧問となった。経営企画、事業立案、営業支援など、海外経験のない企業が顧問に求める仕事は多い。業種や進出国によって事情が違うため、一律のコンサルティングは難しく、経験や人脈が豊富なシニアの腕の見せどころだ。秋月さんは東南アジアで現地事務所を設立した経験があるうえ、ワイン業界で顔が広く、こうした相談はお手の物。「フルタイムで働くと自分の時間が足りなくなり、無理して働くことになりかねない。適材適所で自由に働けるのが大きい」と話す。

●シニアの経験活用

小松製作所の研究所で3回も社長表彰を受けた浅山芳夫さん(67)はビザスク(同新宿区)のスポットコンサルティングに登録。建設機械メーカーから研究開発の相談を受けた。定年後、介護をしていた妻が昨年亡くなり「遊んでいてももったいない」と始めた。「フルタイムだと体力的にきついが、経験を生かしたかった」と浅山さん。

対面や電話で、詳しいアドバイスを1時間単位で行う。相談したい企業はウェブに案件を書いてアドバイザーを募集するか、アドバイザーの得意分野を検索して指名できる。アドバイザー2万人のうち4000人がシニアだ。

浅山さんは会社時代の元同僚たちと「自分たちの経験をもっと世の中の役に立てられないか」と話し合うことも。浅山さんは研究畑だが、営業、人事などそれぞれが自分の持ち味を生かして、違った視点から相談に乗れば、幅広いニーズに応えられる。

●求められる成果

オンラインで専門家に1時間単位で相談できる「X−book」を展開するサーキュレーション(同千代田区)は2400人のシニアを抱える。中には1週間で7社から相談を受ける人も。同社は「60歳をすぎると再就職や転職は難しい。しかし、高齢者が増える一方、労働力不足は続くので、こうしたサービスは増えるだろう」と予測する。

ただし、成果もきちんと出さなければいけない。「自分の価値を明確に理解し、発揮できる人が求められている。そのためには好奇心が旺盛で、常に(仕事に関する知見を)インプットしていかなければ」と説明。プロとしての厳しさが求められるという。

●在職中から磨く

大手生命保険会社の人事畑が長く、「人事部は見ている。」(日本経済新聞出版社)などの著作がある作家の楠木新さん(62)は「ハローワークや人材紹介会社ではマッチングしない人も多く、働き方の多様性という観点では評価できる」と話す。そのうえで、「在職中から自分の能力を磨かないと通用しないが、それができる人材がどのくらいいるのか。組織を離れてゆっくりしたら何もできなくなる人もいる」と指摘。バブル入社世代の40代後半から50代は今から自立意識を持ちながら働かないと間に合わないとアドバイスする。