総合平日週5日の「働き方」は変えられるか?転職メディア「パラフト」
働き方がいま話題だ。出勤時間のシフトや残業ゼロ、在宅やリモートワーク、週3勤務など、国内でもこれまでのような画一的でない新たな仕組みや取り組みができ始めている。
そんな中、「ハタラキカタをもっと自由に」をテーマに、転職・求人メディアを展開しているスタートアップが「PARAFT(パラフト)」だ。
パラフトを運営するパラフト株式会社の代表取締役の中川亮氏は、先んじてシェアゼロ株式会社を立ち上げ、2011年から起業家やフリーランスをサポートするワークスペース「LightningSpot」を、2014年からフリーランスのエンジニア人材マッチングサイトの「PROsheet」を展開。いずれも、「働き方」にスポットをあてた取り組みを続けてきた。
そして2015年2月、新たなサービスとしてパラフトがスタート。ベータ版でのサービス開始から1年半が経った現在、本格的に事業をドライブさせ始めた。「働き方」の切り口からどのようなビジネスが展開しているのか。代表取締役の中川亮氏と、サービス構築を手掛けた最高執行責任者の山田勝氏に話を伺った。
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| パラフトの中川亮代表取締役(左)と、山田勝COO(右) |
フリーランスのようにサラリーマンも働き方を自由に選べる
そもそもパラフトは、「PROsheet」がフリーランス向けだったのに対して、「世の中の大半を占めるサラリーマンがもっと働き方を自由に選べればいい」という発想で作られたサービスだ。
「最初は僕が1人で営業から、事務、経理までのすべてをやっていたので組織ができてなかった。それを、コンセプトに賛同した山田が合流し、メンバーを集めて組織化されていき、よりブラッシュアップされていった」と中川氏は語る。
山田氏は、パラフト開発のきっかけとなった未来の働き方についてこう分析する。
「映画やマンガの中で創造された未来の世界では、ロボットが働く風景が当たり前だった。未来の働き方を考えたとき、人の仕事の一部がロボットに取って代わられることは容易に想像できる。これから先、人が働くには、職種やワークスタイルなど、各方面で多様性に対するニーズが一般化するだろうと考えた」
先行していたPROsheetでは、週2日から会社勤めなど、フリーランスエンジニアの多様で新しい働き方のスタイルを確立。そのような「働き方を重視しながら働く」という考え方が浸透していることはわかっていたので、同じ考え方を普通の正社員にも応用したというわけだ。
また、少子高齢化の進行や共働きが当たり前といった新たな価値観が浸透しつつある日本全体を見渡したとき、育児や介護の面から考えても、働き方の多様性が必要とされることは想定できたという。
「17時になったら、いったん託児所へ子どもを迎えに行きたい。その後、リモートでも対応するのでと。そんなニーズが浮き彫りになってきたのも、ちょうどパラフトをスタートさせたのが2014年ごろ」(山田氏)
高度経済成長期に世間の常識となったさまざまな価値観が、成熟期を迎えた今の日本社会には適応しなくなりつつあると山田氏は指摘する。
「平日に週5日は働くという、今の日本の既成概念をパラダイムシフトする。私が海外で仕事をしていたとき、仕事の終了時間がきたら工事現場の人で働く人は、機材を置いて帰るのが普通だった。週に4日働いて3日休むという人も見てきた。これからの考え方や働き方は、多くの選択肢があっていいと考えた」
マネタイズは広告収入のみの求人メディア「パラフト」
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とはいえ、大手就職情報サイトをはじめ、求人サイトは多い。その中で、パラフトの特徴は何か。
パラフトは、「未来の転職・求人メディア」を掲げる。ただしサイトの中で会員登録を行いログインすると、求人への応募をはじめとする企業とのコンタクトができるようになる。主となるメディアと求人サイトが一体化したところが他との違いだと説明する。「転職活動をしていないときにも見たくなるようなサイトを目指している」(山田氏)
サイトを見ると、「働く時間」「働く場所」「制度・仕組み」「スキル・ノウハウ」など各カテゴリーから自分のライフスタイルに合うような情報を見つけるオリジナルコンテンツと、いわゆる求人情報記事は「お仕事情報」カテゴリーとして、2種類で構成されている。
求人情報記事の特徴は、その企業で働く人の「働き方」にスポットを当てたストーリー化することで、募集要項を並べるだけではない「読みもの」にしている。記事を通じて共感を呼び、企業のブランディングと人材採用につなげる仕組みを堅持していきたいと考える。
マネタイズの方法は「広告収入」のみの1本柱。「パラフトが達成したいのは、事業の成長以前に、サービスが掲げる『働き方のパラダイムシフト』が当たり前になる世の中を構築すること。その軸がブレないように続けていくために、マネタイズの構造はシンプルにした」と山田氏は語る。
新しい「働き方」が表立って公にはできない事情
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だがいま、求人サイトは思いつくだけでも無数にある。その中で、パラフトに集まるのはどのような人達なのか。
「世の中の働く人は、大きく分けて2つに分かれる。それは場所と時間を区切ることで仕事とプライベートを分けたい人と、場所や時間ではない『成果』を評価軸に仕事をしたい人。この場合の『成果』は、自分の尺度ではなく、企業側や発注側が納得するレベルでなければならない。どちらのスタイルが正解ということはないが、パラフトがターゲットとしている層は後者となる」と山田氏。
この層は、自分が望むライフスタイル・ワークスタイルをすでに知っている人だという見方だ。たとえば、「満員電車に乗りたくない」「子供を毎日夕方に迎えに行きたい」などの要望があったとする。そのとき、企業は働き方を譲る代わりに、働く側は確かな形で企業に貢献する。一方の比重だけが大きいとき、双方の信頼関係が崩壊してしまうという。
キーポイントは、山田氏いわく「副業やパラレルワークなど、柔軟な働き方の中でも結果を残せるのは、自制ができる人」だという。だからこそ、時短や変則的な勤務が認められるということなのだろう。
そのような働き方の求人をしている企業はごく稀で特殊なのではないかと思いきや、「実は多い。だが表立って公にはできない事情がある。というのも、働き方を表に出した途端に、それだけを目当てにした人が押し寄せる。これはパラフトの求人でも、『(応相談)』にしている部分。しばらく求職者が企業で働いてみて、企業と信頼関係が築けてはじめて、双方が譲歩できる部分を検討し、合意できれば働き方を導入することが一つの方法だと考えている」(山田氏)
明確な線引きがなされたコンテンツと求人情報をコアに、パラフトは掲載企業・登録ユーザーを徐々に増やしてきたという。
日本だけに限定されない職の在り方
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パラフトの今後の展開としては、より求人件数を増やすための仕組みの導入がある。取材型の求人記事だけでなく、企業が独自で掲載できる投稿型の求人記事も追加されていく。当面は、無料出稿できるトライアルプランを入り口として、掲載企業数の増加を加速させる予定だという。「メディアサービスを作り続けるのは労力も資金もかかり大変だが、今の形を続けることで我々のメッセージを世の中に発信していきたい」(山田氏)
次期の目標に掲げる掲載企業数500社を迅速に達成したいとしながらも、一方で経営の視点はすでに世界を見据えている。新たな働き方を望む人と企業が増える中で考えるのは、「30年後も必要とされるサービスをやっていきたい」(山田氏)という点だ。
そのための1歩としてパラフトは、2017年には世界展開を始める予定だ。中でも目をつけているのがアジアで、戦略としてまずはインド、2年後くらいからインドネシア、タイ、バングラディッシュ、マレーシアなどに広げる考えだという。パラフトがグローバルになったとき、日本だけにとどまらない「自由な働き方」がより見えてくる。
「我々が子どものときにやった『人生ゲーム』には、それまで知らなかった職業があった。だが、日本の就職活動では出てこない職種だったので、海外ならばあるのではないかと興味を持つようになった。世界に目を向け、グローバルな視点で職種やワークスタイルの情報を発信することで、世界中の人達の多様な可能性を広げることができる」と、山田氏はパラフトの世界展開に夢をはせる。
人材メディアによるインド進出で生まれる多様性
国内での働き方は日々さまざまな議論が出ているが、パラレルワークの中身を見ると実情としてはまだハイスキルで高いパフォーマンスを前提としたものになっている。とはいえ、これまで「場所や時間ではない『成果』を評価軸に仕事をしたい人」にとっては、そもそもが難しい環境だったはずだ。国内での「新しい働き方」への目線自体は、働き手不足の流れもあり、大手企業も含めて全国的に拡大しつつある。さらなる多様性が育つには時間がかかるだろうが、経営者側の危機感も含めて、その規模がふくらんでいる。パラフトでのスケールメリットが出るのもこれからとなる。
シンガポールなどから始まるアジア展開はスタートアップであればよく聞く形だが、いきなりインドに飛ぶというのが衝撃的で、その先での成果が気になるところだ。新たに海外に乗り込み、海外と国内の優秀人材の多様な働き方支援が拡大することで、パラフト自体のブランディング価値はどう変わるのか。採用による成果報酬モデルにもよらず、また既存のプラットホームにもよらない人材メディアの可能性に期待したい。
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なお、パラフトの海外展開において、実際にインドで活動するのは中川氏になる予定。
新規市場の開拓を得意とする中川氏は、インド視察に意欲を見せる。まずは年内に、中川氏が自らインドを一周しながら、現地の様子を肌で感じてくる予定だ。「世界にはまだ日本人が知らないさまざまな価値観にもとづく暮らしや働き方がある。厳しさもあるだろうが、より多くの人が選択肢と可能性を持つことができるよう、最善を尽くしたい」と中川氏は語った。
新しい世界へ切り込んでいくパラフトがどう成長していくのか要チェックだ。
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●パラフト株式会社
2014年12月設立。多様な働き方の企業情報を掲載する『未来の働き方』ができる転職・求人メディア「PARAFT(パラフト)」を展開。
自己資本が主で、調達などは未実施。アジアを中心に海外展開も始動予定。
スタッフは約15名。事業責任者候補、営業、営業事務、編集、エンジニア、デザイナーなどを募集中。





