総合同一労働同一賃金が法制化された時に押さえておくべきポイント
同一労働同一賃金実現のための法整備が進んでいる。与野党ともにマニフェストに掲げる政策なので、大きな抵抗もなく実現すると思われる。そこで、同一労働同一賃金が法制化された場合の人事のチェックポイントについて簡単にまとめておきたい。
とりあえず留意すべきポイント
与党案では、既存の正社員の賃金水準にはメスを入れることなく“同一労働同一賃金”を実現すると明記されており、基本的には複数のガイドライン提示を通じて、問題のある賃金格差を是正するという。問題となりうるのは以下のようなパターンだろう。
- 非正規雇用ではあるが、賃金水準の高い正社員と同じ業務を担当し、正社員との責任の差も曖昧である
- 正社員であっても、グループ企業からの転籍者や企業統合の結果、異なる賃金テーブルのまま同じ業務を遂行している。
- 中途採用や雇用形態の切り替えなどで、一人だけ賃金水準が同年代と異なっている。
上記のようなケースは「問題あり」として是正の対象となるだろう。そこで賃上げをして水準をそろえるか、正社員との職責の違いを明確化し、職場内で意識共有するなどの対策をとるべきだ。基本的に賃金制度自体を見直す必要は無く、あくまでもそこから外れた“漏れ”がないかどうかのチェックと考えてほしい。
より長期的に意識しておくべきポイント
ただし、まだ若い会社やベテランの少ない企業なら、筆者はより長期的な視点に立って賃金体系自体を抜本的に見直すことをおススメしたい。通常の日本企業であれば、職能給と呼ばれる属人給を使っていると思われる。初任給から一年ごとに少しずつ昇給し、実質的な年功賃金として機能しているはず。
それを思い切って、担当する業務グレードによって賃金水準を決める職務給(役割給とも)に切り替えるのだ。これにより、理論上は(年齢、雇用形態、性別、学歴によらず)担当する業務によって賃金が決まるから、同じ業務なら同じ賃金という同一労働同一賃金が成立することになる。
「そういう職場はイメージ出来ない」という人は、近所のコンビニをイメージしてみてほしい。高校生のバイトから60代の団塊世代まで、それぞれが仕事に応じた時給を受け取り働いているはずだ。誰に言われなくとも、そうした職場には、地域ごとに「レジを打つ仕事は時給〇〇円」という市場価格が成立しているわけだ。これこそ、これから日本が目指すべき本物の同一労働・同一賃金である。
筆者が後者のアプローチを推奨するのには、もう一つ理由がある。それは、後者の方が“流動性”というメリットを最大限に享受できるからだ。
これから日本はますます人口が減り、働き手の確保は難しくなる。20世紀の日本企業は競うように「まだ20代でポテンシャルのありそうな男子」を採用し、自社内でじっくり育てることで戦力としていたが、これからそんな贅沢が許されるのは、ほっておいても若者が集まるごく一部の大手企業のみとなるだろう。
その他の企業は、年齢や性別にかかわらず、多様な人材を労働市場から柔軟に採用し、戦力とするしかない。十代の学生バイト、子育ての一段落した世代、そして定年後にまだまだ働きたいと願う高齢者。そうした人たちにクリアで偏りのない処遇を保証するには同一労働同一賃金を徹底する以外になく、そのプラットフォームとしては職務給しかありえないというのが筆者の結論である。