総合ITで人事効率化 「HRテック」をベンチャーが開拓
IT(情報技術)と人材サービスを融合させた新ビジネス「HRテック」をベンチャー企業(VB)がけん引している。従業員情報を一元管理したり、社会保険の手続きを自動化したりして、人材の適正配置や生産性向上につなげる。労働人口が減る中、巨大市場に成長する可能性がある。
人材ビジネスVBのサイダス(東京・港、松田晋社長)はJ・フロントリテイリングに従業員情報を一元管理できるシステム「サイダスドットコム」を納入した。
J・フロントはグループ従業員約1万1000人のスキルや経歴、適性検査の結果などを一元管理、今春の人事異動から活用を始めた。例えば傘下の大丸松坂屋百貨店で働く20代の女性販売員をグループ雑貨店の店長補佐に抜てきした。異なる環境に順応してやり抜く資質が決め手となった。
同百貨店の松田弘一取締役は「求められる人材の能力は変わってきた。適材適所の配置が経営課題」と説明する。導入前は各社の担当者が自社の従業員情報を個別に管理し、異動は話し合いで決めていた。サイダスの「サイダスドットコム」は全日本空輸やマツダなど約300社が導入している。
日本企業は優秀な人材を採用して競わせ、管理職を育ててきた。退職者を出しても採用数を増やすことで補えたが、人口減少下では従業員の能力を引き出して長く働いてもらうことが重要だ。
人材紹介のネオキャリア(東京・新宿、西沢亮一社長)は採用から勤怠、労務などを一元管理するサービス「ジンジャー」の提供を1月から始めた。勤怠実績のデータを解析することで勤務意欲が下がっている従業員を探し出し、離職を未然に防ぐ。約1000社が導入している。
従業員1人当たりの採用コストは約80万円。退職して補充した場合、そのコストは前任者の有休消化や人材会社の紹介料など5倍以上になる。
未着手だった人事部門の労働改善に挑むベンチャーも出てきた。クフ(東京・港、宮田昇始社長)は社会保険や労働保険の手続きをウェブで完結するサービス「スマートHR」を提供する。従業員の入退社時に扶養家族など必要な情報を入力すると、必要な書類を自動作成し、ハローワークや年金事務所にウェブ申請する。健康保険証を受け取るまでの期間は1週間と社会保険労務士に委託する場合の3分の1に短縮できる。
フリマアプリのメルカリ(東京・港、山田進太郎社長)は3月にスマートHRを導入した。急成長中の会社では毎月15~20人のペースで従業員が入社するが、労務部門の手代さやかさんは「入社手続きが簡単になり勤務時間が月20~30時間減った」と話す。スマートHRの導入企業数はサービス開始から7カ月で1200社を超えた。
VBが開拓し、けん引するHRテックだが、大手人材サービス会社も着目し始めた。テンプホールディングスは昨年11月に投資子会社を設立。国内外のHRテック企業に投資して、協業先を探っている。
▼HRテック 人事労務の領域にクラウドや人工知能(AI)など新しい技術を融合した付加価値の高いサービス。採用や適材適所、リーダー育成、評価、給与、業務改善など分野は幅広い。米国では人事管理ソフトのゼネフィッツなど企業価値が10億ドル(約1000億円)を超えるユニコーン企業が登場している。