人材不足VBにレンタル移籍 大企業から即戦力

総合人材不足VBにレンタル移籍 大企業から即戦力

慢性的な人材不足に悩むベンチャー企業(VB)の間で「レンタル移籍」で即戦力となる人材を確保する手段が注目を集めている。VBで人材を融通し合ったり、大企業から提供を受けたりする。貸し出す側も人材の育成などに役立てられる。レンタル人材は新卒や中途採用に続く「第3の人材」といえる。

「イベントで配るミサンガに(ツイッターで情報を拡散できる)ハッシュタグを付けたらどうか」。防災情報を発信する防災ガール(横浜市)の事務所で提案していたのは千田英史氏。プレスリリース配信のPR TIMESから5カ月の期限で移籍してきた。田中美咲代表は「人を雇う余裕はないが斬新な提案をする人材が欲しかった」と話す。防災ガールは2015年3月に法人格を取得、業務拡大を目指している。

同社はレンタル移籍に関する情報を提供するローンディール(東京・世田谷、原田未来社長)のサービスを利用した。PR TIMESは社員に広報戦略の立案を経験させられる。

経営陣の信頼関係に基づき社員を交換することで新たな発想を取り入れようとするのがゲーム開発のドリコムとアカツキだ。それぞれのエンジニアを1週間レンタル移籍する試みを始めた。ドリコムの白石久彦執行役員は「知らない会社を見て強くなって帰ってきてほしい」と語る。アカツキにレンタル移籍した石川慎也氏は「他社をのぞきたかった」と話す。

市場ではしのぎを削る両社だけに機密情報の漏洩やエンジニア引き抜きを心配する声もあった。秘密保持契約を結ぶなどの対策は打ったが、拘束しすぎては研修の意義が薄れる。「優れた仕組みは共有すればいい」。アカツキの田中勇輔・最高技術責任者はこう話す。

大手企業もVBへのレンタル移籍に注目している。学童保育施設を対象におやつの献立を考案し配送するウィライツ(東京・港、村上竜一社長)。森永製菓の新規事業コンテストで優秀賞を獲得し、15年7月に設立された。村上社長の右腕として活躍するのが営業担当の沢田佳佑氏だ。森永の新領域創造事業部に在籍しながらレンタル移籍した。森永でアイスクリームの営業をしていたが、ウィライツでは「卸から物流、企画までやる」。

持ち前の営業力で昨年10月から既に60施設以上の取引先を開拓した。「全体の流れが見え、スピード感も全く違う。得がたい経験をさせてもらっている」(沢田氏)。

森永は同氏を研修扱いで移籍させた。人件費も負担するが、将来の新規事業を担う人材として育成する。人手不足のVBと人材を育てたい大手企業の思惑が一致した。

知名度や資金で劣るVBは新卒、中途を問わず人材採用では不利な立場に置かれがちだ。秘密漏洩のリスクはあるが、人件費の負担が軽減されるレンタル人材の獲得は即戦力確保のための有力なツールになる。

 

▼レンタル移籍 元の企業に在籍したまま期間を定めて他企業で働く仕組み。その間の給与は主に貸出企業が負担する。期間は3~12カ月間が中心。通常の出向と異なる点は期間が比較的短いことと貸し出す会社が人材育成の一環として位置付けていることなどだ。社員が移籍する時は貸し出す会社と受け入れる会社で個別契約を結ぶ。