派遣労働、3年後に不安抱え

派遣派遣労働、3年後に不安抱え

労働者派遣法の改正から間もなく10カ月。派遣元には労働者の雇用安定措置や有給で研修を提供する義務が課され、すべての業務で同一職場への派遣は3年に制限されるなど大きな変更があった。派遣元が対応に追われる一方、3年後に見通しを持てない労働者から不安の声が消えていない。

 

●企業から相談急増

相談窓口のある厚生労働省東京労働局需給調整事業部(東京都港区)では労働者からは少数だが、派遣元の相談が急増した。多くは「(3年を超えて労働者を派遣できない)同一の組織単位(課など)とは」など期間制限に関するものだ。

不安が大きいのは、従来、期間制限のなかった通訳など専門26業務の労働者だ。

●直接雇用断られ

群馬県の男性(50)は15年前からほぼ一貫して県内の電気機器メーカーに派遣され働く。業務は機械設計。県内に同業種の企業もあるが、近くに1人で暮らす母(80)の介護を考えると勤務地は限られ、「3年後に今の職場を失ったらどうなるのか」と悩む。

派遣先は大企業ではなく、別の課に移るのは考えにくい。改正法ではまず派遣元が派遣先に、男性を直接雇うよう頼むべきだが、派遣先に直接雇用はしないと言われた。残るは派遣元が雇用する方法だが回答待ちの状態だ。「派遣元は他の派遣労働者や社員も抱える。今更、高齢の労働者を雇うのは難しいだろう。派遣労働は本来、一部の専門職に限り認められた。今回の改正はひどすぎる。元の形に戻してほしい」と訴える。

●申請書類確認を

中野麻美弁護士は「改正法は正社員から派遣への置き換え防止と、派遣労働者の雇用安定の両方を工夫したが、抜け道も残る」と指摘する。例えば派遣先が同一職場で3年を超えて派遣労働を使う場合、労働組合への意見聴取が必要だが、同意を取る必要は無い。労働者が同じ職場で働ける期間を3年とする制限も「直接雇用に結びつかず労働者の入れ替えだけなら、キャリア開発の点で疑問」と話す。

労働者の権利を守るうえで中野さんは、派遣元事業がすべて許可制になった点に注目する。「申請書類の内容は労働者にも周知される。派遣元は派遣料金など情報を提供し、福利厚生などで派遣先社員との均衡待遇に配慮する義務もある。派遣先も社員募集の情報開示など協力を求められる。契約更新時に確認を」と話す。弁護士や労組などで作る派遣労働ネットワークでは、派遣労働者にも直接雇用の労働者同様に通勤費支給を求めるキャンペーンを始めている。【大和田香織】

●キャリアアップへ教育訓練を支援

東京労働局には教育訓練に関する相談も多い。担当者は「中小の派遣元が費用などを負担に感じている」とみる。

日本人材派遣協会は、労働者がスマホなどでも受講できる業界共通の通信教育を始めた。派遣元に有給・無償で年8時間以上の研修の提供が義務づけられたことから、中小事業者の負担を考えた。大手のテンプスタッフ(東京都渋谷区)も以前からあるシステムを見直し、業務別の専門技能や、就職活動について学ぶ講座を拡充(一部有料)。対面やウェブの相談窓口も増やした。

協会副会長の上月和夫・東京海上日動キャリアサービス社長は「育児や介護で転勤や残業ができず派遣を選ぶニーズは残る。派遣元によるキャリア形成支援は重要さを増すだろう」と話している。