楽園企業の「ムダを省く力」が超スゴすぎた 「残業からドアノブ、警備員まで」驚きの数々

総合楽園企業の「ムダを省く力」が超スゴすぎた 「残業からドアノブ、警備員まで」驚きの数々

「社員が日本一幸せ」ともいわれる未来工業(岐阜県にある電気・設備資材メーカー)。同社は、1日7時間15分就業で残業禁止が原則。年間休日数が140日&有休最長40日で、休みの多さが「日本一」との声もある。しかも驚くほどの高年収で、海外への豪華社員旅行などもあって「楽園企業」と呼ばれる。

同社創業者の山田昭男氏は一昨年他界したが、遺作となった『山田昭男の仕事も人生も面白くなる働き方バイブル』は、今も注目を集めている。
実は、同社は「やめる力」が超ハンパなかった。「残業」「営業ノルマ」「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」から、本社の「警備員」や廊下の「ドアノブ」まで、「別に不要では?」と思ったことは、どんどんやめてきた。
「それで本当に儲かるのか?」と思いきや、50年間赤字ゼロで好業績を継続している。同社を長年取材してきたライターが、その「やめる力」の秘密を探る。

会社員を苦しめる残業やノルマをやめた会社

山田昭男氏が創業した未来工業は、「社員が日本一幸せ」な楽園企業として有名。1日の就業時間は7時間15分で、残業禁止が原則。休みが日本一多いといわれ、5年ごとに会社負担で海外に豪華社員旅行と至れり尽くせりだ。

そんな未来工業の本社を初めて訪れたとき、筆者がまず驚いたことがある。それは会社の入り口に「警備員室」があるのに、「警備員が誰もいない」のだ。

「なぜ警備員がいないんですか?」と山田昭男氏に聞いたところ、「どうせ盗られるもんなんかないしな」と冗談混じりにつぶやいてから、こう言い放った。

「警備員を置くと、人件費が年間いくらかかると思う? それと泥棒に入られて取られる金額と、どっちが大きいと思うんや?」

そんな発想をする経営者は、日本中を探してもめったにいない。警備員だけに限らない。「仕事の効率が悪くなるから」と会社全体で「残業」をやめたり、「自分の頭で考えなくなるから」と、「営業ノルマ」や「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も、同社はやめてきた。

「いまどき残業や営業ノルマをやめた会社が、ホントに儲かるのか?」と不審に思う人も多いはずだが、創業以来50年間赤字決算はゼロで、好業績を継続中だという。未来工業が儲かり続ける秘訣は、この「やめる力」にこそある。

少しでもムダかなと思ったら一度やめてみる――それが未来工業の「やめる力」を支える社風だ。その理由を探る前に、同社の「やめる力」を象徴する実例を3つ紹介したい。

少しでも「ムダかな?」と思ったら一度やめてみる

1.「ないほうが便利だから」と、ドアノブを取りはずしてみる

未来工業を訪れた際に、もうひとつ驚いたのは「ドアにドアノブがないこと」。「なぜ、わざわざドアノブをはずすんですか?」と聞くと、山田氏は「両手がふさがっていても、ドアを開け閉めできるようにするためや」と話していた。

確かに私たちは、「ドアにはドアノブがついているのが当たり前」と思いがちだ。しかし、出入りが多い会社のドアは、むしろ「開け閉めするほう」が面倒で非効率ということも多い。

この「ドアノブはずし」は、社員提案が採用されたもの。その是非は別にして、本当に驚くべきなのは、そんな小さなことまで本当に必要かどうかを疑ってみる社員がいるということだ。

2.「ムダだから」と、警備員室はあるのに、警備員を置くのをやめる

冒頭で紹介した「警備員を置くのをやめること」について、もう少し掘り下げておきたい。

「警備員室はあるが、人件費がもったいないから警備員を置くのはやめた。すると、『さすが日本一のドケチ社長』とイメージアップになり、変わった会社やとマスコミに報道されて、広告費まで節約できたから一石三鳥やろ?」と山田氏はニンマリと笑って見せた。

「でも、警備員室がムダでは?」と思う人もいるだろうが、工場付き本社を建設する規模なら、警備員室のコストなど、人件費の節約分でおつりがくる。

3.伝票整理のような「小さなこと」から一度やめてみる

未来工業の「やめる力」は、「残業やホウレンソウ禁止」といった大掛かりなことばかりではない。むしろ、伝票整理のような「小さなことをやめる力」にこそ真骨頂がある。

以前同社では、受注伝票は「会社コードごと」に整理していた。しかし、社員が調べてみると、問い合わせは月数件程度で、数百社のコード別に伝票を整理する手間のほうがムダ、とわかった。

「いまは『受注した日付ごと』に伝票を整理して、社員からも簡単と好評や。何かをやめるには、『別の方法』を考えんといかん。だから面倒くさくて誰もやりたがらないんや」

しかし、いったんやめたあと、「新しい方法」は全部うまくいくのだろうか?

結論から書くと、新しい方法が必ずしもうまくいくとは限らない。その場合はまず元に戻して、また考える。それが未来工業の原則だ。

その「いったんやめてみて、ダメなら元に戻す」というところに、同社の儲かる秘訣がある。

仕事の「9割」は職場に伝わるムダな慣習

「やめる力」はそう簡単に身につくものではない。日々の業務を注意深く観察し、ムダや改善すべき箇所を見つけ、新たな方法を考える必要もある。山田氏の生前の語録から、「やめる力」について触れたものを紹介しよう。

1.「『ムダかな?』と思っても、実際にやめてみる人は圧倒的に少ないもんや」

「職場で『これはムダかな?』と思っても、実際にやめてみる人は圧倒的に少ないもんや。やめると『次の方法』を考え、実行する必要がある。だから、みんな面倒臭がって『やめる』のをやるんや」

何かをやめる人とやめられない人の間には、「実行力」という点だけを見ても、それだけ大きな開きがある。

2.「やめてみてダメなら元に戻す。そして、また考えればええ」

「一度やめてみてダメなら元に戻す。そして、また考えればええ」というのも山田氏の口ぐせだった。「ダメなら元に戻せばいい」と考えられれば、別の方法がうまくいかなくても、すぐに頭を切り換えられるからだ。

「『ダメなら元に戻せばいいんや』と考えられれば、やめることが面倒くさくなくなるやろ?」

3.「仕事の9割は『職場に代々引き継がれたムダな慣習』と思わんか?」

多くの会社は「ムダかな?」と思っても、変えるのが面倒くさいからと放ったらかす。「そのうちムダをムダとも思わなくなる」と山田氏は話していた。

「その結果、仕事は『ムダと非効率のかたまり』になる。そもそも仕事の約9割は『職場に代々伝わるムダな慣習の集合体』と思わんか?」

さすがに「9割」は言い過ぎだが、そこは山田氏得意の大げさレトリック。同社の「やめる力」は、決して面倒くさがらず、少しのムダや非効率をやめて、「つねに『改善』を考える社風」に支えられている。

未来工業が50年間赤字なしで、地道に好業績を続けている秘密の一端がそこにある。同社の「やめる力」とは、小さなことから大きなことまで「つねに考え続ける」ということなのだ。

あなたの職場の「やめる力」はどうだろうか。少しのムダや非効率なことを、面倒くさいからと見過ごしてはいないだろうか? また、あなた自身は最近「やめる力」を、いったい、何に使ったのだろうか?

「やめる力」にこそ会社の、そしてビジネスマン個人の力量が端的にあらわれる。