大手企業の8割がインターン生に内定を出す

新卒大手企業の8割がインターン生に内定を出す

6月1日は2017年卒の「面接解禁日」だけでなく、2018年卒を対象とした「インターンシップ情報の公開日」でもあった。さっそくリクナビやマイナビ、就活ナビといった就職情報サイトに会員登録したという学生は多い。

一方、企業にとっても、インターンは優秀な学生や志望度の高い学生と出会うための貴重な場である。過熱するインターン、企業と学生の双方にとってメリットのあるインターンとはどんなものなのか。2017年卒の就活事情から探ってみたい。

住商、物産、みずほまで…
過熱するインターンシップ

熊谷智宏(くまがい・ともひろ) 我究館館長。横浜国立大学を卒業後、(株)リクルートに入社。2009年、(株)ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職や転職、キャリアチェンジのサポートをしてきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。著書に「絶対内定」シリーズがある。(撮影/宇佐見利明)

企業は夏から来春に向けて複数回のインターンプログラムを実施する。

リクルートキャリアの最新データを見ると、企業のインターンシップ実施率(2015年度)は59.5%(前年比9.6ポイント増)、学生の参加率は39.9%(2016年卒、前年比13.0ポイント増)となっている(データは「就職白書2016」リクルートキャリア就職みらい研究所調べ)。いまや「参加して当たり前」の状況に近づいている。

インターンという言葉からは「就業体験」というイメージが強いが、実際は「採用活動」の一環として機能しているケースが多い。従業員規模1000人以上の企業では、インターン参加学生が内定者に含まれる割合が8割を超えたというデータもある。明らかにインターンが内定につながる入り口になっている。

本採用の時期よりも「早い段階で動き出している」学生は優秀な傾向にある。

そのため、インターンを通じて彼らとの接点を多く持ち、一人でも多くの採用に結び付けたいという人事の本音から、各社、競うようにインターンの開催に力を入れている。

住友商事が初のインターンを開催したことや、三井物産が受け入れ人数を前年の2倍に拡大したこと、みずほFGが実施回数を2倍にしたことなどがニュースになったのは、記憶に新しい。インターンは過熱の様相を呈している。

ここで一つの疑問がある。開催に力を入れていることがニュースに取り上げられている一方で、果たしてどのようなインターンが「人材の確保」につながっているのだろうか。単に受け入れ人数や回数を増やしただけではないはずだ。

そこで、学生にヒアリング調査を進めてみたところ、学生を惹きつけることに成功している企業には、ある共通点が存在することがわかった。

傾向として見えてきたのは、「社員との交流が多い」ことだったのだ。
「え、そんなことでいいの?」と驚いた人事担当者もいるかもしれない。
今回はこのことについて、詳しく説明したい。

丁寧、マンツーマン、こまめ。
交流の質と量が印象を左右する

社員との交流が多いインターンとは、具体的にはどういうものを指すのだろうか。

実際にインターンに参加した企業を第一志望にした学生に理由を聞くと、次のような回答が返ってきた。

「グループワークの発表へのフィードバックが丁寧だった。同業界の他社のインターンにも参加したが、この企業の印象がいちばん良かった」

「営業同行をさせてもらえた。その間はマンツーマンなので、じっくりと業務理解をすることができた。社員の方の人格も素晴らしく、自分もこんな大人になりたいと思い志望度が高まった」

「人事の方がことあるごとに声をかけてくれて、参加後もまめに連絡をくれた」

交流の量と質の両面において、学生に対してコミュニケーションを密に行っている企業は、インターン参加後のイメージも良く、彼らの志望度を上げることができている。

どうしても企業側は、学生たちが喜びそうな派手なイベントや魅力的なプログラム作りに熱を入れてしまいがちだ。もちろんそれも大事だが、学生が真に求めているものは、そこではなかった。

「ブラックじゃないほう」を
選びたい学生たち

社員との交流を重視する学生たちは多い。

この背景には、2つの理由が隠されている。

1つ目は「志望業界は決まったけれど、同じ業界の各社の違いがわからない」という悩み。学生は就職活動に向けて自己分析を繰り返し、自分が将来働きたい業界を明確にしていく。そこまではできるのだが、では業界のどの企業が第一志望なのか。事業内容が似ていることもあり、決めることができない。例えばビール業界であれば、キリンかアサヒかサントリーか、など。そこで注目するのが「社員」なのである。

インターンに参加し、社員の雰囲気の違いによって、志望順位を決めていくケースが非常に多い。

インターンでの会社や社員の雰囲気が、学生の志望度に直結している。Photo:ucchie79-Fotolia.com

2つ目には、学生が「社風」に敏感になっているということが挙げられる。

「ブラック企業」という言葉がニュースで取り上げられるようになってから、学生は会社の雰囲気を重視するようになった。そのため、学生への扱いが雑と感じることや、厳しすぎる雰囲気を感じると「ここの企業はちょっと違う」「ブラックなのかな」と反応してしまう。

より丁寧で真摯な対応をしてくれる企業であれば、「人を大切にする企業」という印象を持ち、学生も安心して志望するのだ。

「現場社員が…」
人事を阻む大きなカベ

対して、企業側はどう考えているのだろうか。

社員との交流の重要性は理解しているものの、交流の実現にはいくつもの壁があるケースも少なくないようだ。

「積極的にインターンに協力してくれる部署ばかりではない。無理にお願いすると、社員の対応が雑になり、かえって学生の印象が悪くなってしまう。参加学生の志望度が下がるだけでなく、SNSなどでネガティブな印象が口コミも広がってしまうリスクもある。それを考えると、どうしても社員の交流には限界がある」(大手メーカー・人事)

「ただでさえ業務が忙しい中で、協力を依頼すると嫌がる社員が多い。本採用の活動ならまだしも、確実に志望してくれるのかわからないのがインターンシップ。受け入れた学生が、そのまま入社してくれるとも限らない。『そうまでして協力する意味があるのか』という雰囲気が社内にある」(中堅IT・人事)

逆のケースもある。

「各社、現場の協力が得られず苦しんでいるのがわかる。当社はインターンも含めた採用活動に、全社員が協力する社風がある。インターン生との交流も積極的にとってくれるため、参加した学生の満足度は高い。インターンが盛り上がっているおかげで、以前より採用活動がしやすくなった」(大手IT・人事)

こういった企業は強い。実際にこの企業のインターンに参加した学生が、その後の第一志望に変更したケースを何度も目にした。

 現場の社員の協力体制が、学生の志望度に直接影響を与え、採用の成否にもつながっている。

ますます盛り上がりを見せるインターン。社員との交流を通して、企業への志望度を決める傾向は今後もますます強くなるだろう。つまり社員の協力姿勢が、その企業の採用力に直結する。

各社の人事は全社一丸となって採用活動を行う風土を作っていけるかが、今後の課題となりそうだ。