総合全エンジニアが「面接官」、ChatWorkの人材策
「会社が採りたいかより、現場が採りたいかで選ぶ」。こう話すのは、ChatWorkの山本正喜 専務取締役CTO(最高技術責任者)。現場のエンジニアが一緒に働きたいと思うかどうかを、採用の重要な判断基準にしている。
ChatWorkは、法人向けチャットツール「チャットワーク」を手掛ける。2011年の公開以来急速にユーザーを集め、今や9万社以上に導入されている。さらなる事業拡大のため、2015年からは合計で18億円に上る資金調達を実施。エンジニアの獲得にも力を入れる。
多くの企業がエンジニア不足に頭を悩ます中、「幸い、採用には苦労していない」と話す山本氏。エンジニアにとってチャットワークの知名度が高いことに加え、同社ならではの施策が奏功している。社内のエンジニア自らがリクルーターとなり、有望な人材を発掘する取り組みだ。同社のエンジニアの7割ほどが、知り合いの紹介で入社しているという(写真1、写真2)。
人材発掘の場になりやすいのが、社外の勉強会やコミュニティ。こうした場に積極的に参加し、技術情報を発信するなどしてChatWorkをアピールする。これはと思うエンジニアがいれば声を掛け、体験入社などにつなげる。
同棲してから、結婚を決めよう
体験入社とは、実際に開発現場に加わり、ChatWorkでの業務を試しに経験してもらう場だ。1~2日かけて、一緒にコーディングをしたり、ランチを食べたりしながら、じっくりと互いに相性を見極める。
「いきなり結婚を決めるのでなく、まずは同棲してみようというイメージ。短時間の面接では、面接側も応募者もいくらでも自分を飾れる。体験入社を実施することで、素顔を知ることができ、ギャップが起こらない」(山本氏)。
採用可否を判断する際は、「同じ部署にいる人全員が良いと思わなければ、採らない」(山本氏)。実際に、この段階で不採用と判断するケースも少なくないという。
逆に採用を決めた人については「受け入れる判断を自分がしたんだ、という意識を皆が持っている」(山本氏)。全員が“面接官”として、人材採用の責任を負っているわけだ。新メンバーをスムーズに受け入れるための場作りが、自然に進む。
スマホ購入費、帰省費用の援助などユニークな制度が多数
獲得した人材の定着にも工夫を凝らす。10を超えるユニークな制度を用意し、社員を惹きつける(画面)。

「ゴーホーム制度」は、実家への帰省費用を1回につき1万4000円支給するもの。配偶者がいれば、さらに同額が追加される。金銭面から、社員と家族とのコミュニケーションを支援する。
このほかにも、子どもの出産予定日の前後2週間ずつ在宅勤務を認める「出産立ち会い制度」、昼食代を月額4000円支給する「食券制度」、自分の使いやすい椅子を選べる「椅子選択制度」など盛りだくさん。社員自らが発案し、制度化されたものも多いという。
多様性を持って働ける
制度だけでなく、普段の仕事のスタイルそのものもエンジニアを惹きつけるアピールポイントになっている。「会議一つとっても、洗練されている」。2016年1月に同社に入社した春日重俊氏は、この点が印象的だったと話す(写真3)。
ChatWorkは東京と大阪にオフィスを構えるほか、それ以外の場所で在宅勤務をしているメンバーもいる。自社のチャットツールを使ったやり取りを駆使してコミュニケーションを図るほか、直接話をする必要があればビデオ通話で遠隔地間をつなぐ。必要な会話が済めば、さっと切り上げて元の作業に戻る。
1カ所に集まって会議をするのが当然の会社では、その場に集合するのに時間がかかるし、会議中は別の作業ができない。ChatWorkへの入社前は、春日氏もこうした経験をしていた。
チャットを使えば同時並行で別の作業をこなせるし、ビデオ通話を活用することでその場にいながら会話もできる。「同じ画面を映し出してソースコードを共有しながら会話する。対面で話すのと変わらないライブ感がある」(春日氏)。こうした環境が、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を可能にしている。
春日氏は現在、開発本部の本部長としてエンジニアのマネジメントにも携わっている。最も重視しているのが、多様性を受け入れること。「例えば幼い子どもを抱える社員にハードワークを強いるような環境では、誰も働きたくないだろう。多様性を大事にすることで、異なるバックグラウンドを持ったメンバーを有機的に機能させられる」(春日氏)。日々増え続ける仲間とともに、サービス規模の拡大に耐える基盤開発を進めている。