女性雇用組織を離れて働く女性が急増している! 総合職フリーランス、ハイキャリア時短、プロフェッショナル派遣も…
専門知識やスキルを持ちながら家庭の事情で離職したキャリア女性をめぐり、労働市場に新たな波が押し寄せている。柔軟な働き方を受け入れつつ即戦力を求める企業にマッチングしたり、フリーランスに仕事を紹介する人材サービスが相次ぎ登場。インターネットを通じて仕事を受発注できるクラウドソーシングも、在宅ワークに道を開いている。出産で会社を辞めれば、キャリアが断絶されるのが“お決まり”だった日本女性の働き方に、異変が起きそうだ。
フリーランス化
「転勤族の妻で正社員は難しい。パートや派遣では経験が生かせない」
大手総合商社に勤めていた沢村エリさん(32)=仮名=は、転勤族の夫との結婚を機に退職した。転勤先でも仕事を探すが、壁にぶち当たる。子供を考える年齢でもあった。
そんな中、インターネットを通じて見つけたのが、文系総合職のキャリアをもつ女性に仕事を紹介するWaris(東京都港区)のサービス。沢村さんはフリーランスで、メーカーの営業資料作成の仕事を請け負うようになった。
在宅勤務で会社との打ち合わせはスカイプ通話だ。商社で担当していた法人営業の経験が、そのまま役立っている。
「雇われない働き方を求め、文系総合職でフリーランス化が進んでいます」。Waris共同代表の田中美和さんはいう。
同社は専門知識やスキルをもつ女性約2500人が登録する。平均年齢は38歳で8割が子育て中。平均月収は30代女性25万円に対し31万円だ。「上場に向け専門家が必要」「広報部門をつくりたい」など約800社の顧客企業のニーズに応える。
特徴的なのが、派遣ではなく登録者の多くがフリーランスとして企業と契約を結ぶこと。業種は人事や経理といった管理部門26%▽広報・マーケティング19%▽営業10%ーなど、従来は「オフィスワーク」とされた仕事が多いことだ。
時短エグゼ
「子供はこれから多感な時期。もっと一緒に過ごす時間をとりたい」
IT企業役員だった今野奈津子さん(47)=仮名=は3年前、子供の就学を機に転職を決意した。仕事はやりがいがあったが、ほぼ毎日残業。午後8時に仕事を終え保育園に駆けつける日々に限界を感じていた。
次に選んだ職場はIT系ベンチャー。週3回1日6時間勤務で、人事兼広報のリーダーを任された。800万円の年収を手放し、時給1800円の派遣社員という立場で入社。仕事ぶりが評価され、現在は「時短正社員」となった。
「中小ベンチャーは高度人材の採用が課題。知識やスキルはあるが勤務制限で(人件費は)コストダウンという女性と相性がよい」。今野さんに仕事を紹介した派遣会社「ビースタイル」(東京都新宿区)の広報担当者はいう。
同社のサービス「時短エグゼ」も高度なスキルをもちつつワークライフバランスを重視したい層に特化し、時短や在宅を受け入れる企業に紹介や派遣を行う。過去年収1000万円クラスの登録者も勤務制限付で、月収20万円前後から採用が可能という。2012年の開始から売上高は毎年倍増している。
女性活躍推進法が施行
女性活躍推進法が4月に施行され、従業員301人以上の企業は女性活躍の情報公開や行動計画策定が義務づけられた。女性が企業で働く環境整備は、進んでいるかのようだ。
しかし一方で組織での働き方に見切りを付け、フリーランス化したり働き方を選べる企業に転職したりといった、女性の雇用の流動化も起きつつある。
日本の生産年齢人口(15~64歳)はピーク時の1995年から昨年までに1000万人以上減少と推定される。東京都の人口がまるまる消えるインパクトだ。そんな中、離職したキャリア女性の活用は「優秀な人材のパイが限られる中、スピーディーな人材確保の手段となっている」と、Warisの田中共同代表はいう。
主婦業と兼業
インターネットを介して不特定多数に仕事の受発注ができる「クラウド(群衆)ソーシング(委託)」サービスも、女性の働き方に一石を投じている。
美容業界で正社員として働いていた吉見夏実さん(30)は、勤め先の経営不振をきっかけにクラウドソーシング大手ランサーズ(東京都渋谷区)に登録。執筆の仕事を受注し4カ月で月収が20万円に達した。
小学生の息子の習い事の付き添いや病時の世話など「会社勤めよりも両立しやすい」と気づき、吉見さんはそのままフリーランスのライターに転身。受注先と個別契約を結ぶなど収入をアップさせ軌道に乗せている。
ランサーズによると、クラウドソーシング利用者には主婦業との兼業者も多く「技術はあっても、会社員と子育ての両立に限界を感じた人が流入してきている」(広報担当者)という。
働き方過渡期
フルタイム正社員の座を手放すリスクは当然ある。待機児童問題もあり“争奪戦”の様相を呈する保育所入所では「フルタイム週5日勤務」の家庭が優先。フリーランスや週3~4日勤務では入所が困難になることもある。賃金構造基本統計調査(15年)によると正社員・正職員の賃金を100とすると、それ以外の女性は69.8と低い。
とはいえ「フルタイム正社員」至上主義が崩れる可能性もある。キャリア女性が柔軟な働き方を求め離職する流れが、社会の働き方が変わる突破口になるとの見方もできるからだ。
リクルートワークス研究所機関誌「Works」の石原直子編集長は「現在は(一部の女性で実現している)勤務形態を問わず結果に報酬を支払う仕事の仕方が、社会に広まる過渡期」と指摘。「価値観が多様化し、男性も柔軟な働き方を求める人が増えている。人材確保のためにも、個人の希望に応じた働き方の“進化”を企業は迫られるだろう」と、見通している。