女性雇用働く女性の環境整備はどこまで進んだ? 「女性活躍推進法」施行を前に考える
活躍する女性、これから活躍する女性
女性雇用を促進させるための「女性活躍推進法」が2016年4月1日に施行される。アベノミクスによる経済成長戦略のひとつという位置付けだ。同法により、従業員301人以上の企業には、女性活躍状況の把握および分析と、行動計画の策定および公表が義務付けられる。また、行動計画を策定したという届出書を行政機関に提出する必要もある。
法の整備や周囲の理解が少しずつ進み、企業で成功する女性も増えている。医療品や医療サービスを提供するバクスターで執行役員を務める大櫛美由紀氏は、育休から復帰後2カ月で現在の事業部長というポストに就いた。過去のコンサルティングファームでの経験やコロンビアビジネススクールでのMBA取得など、揺ぎ無い実力があっての就任だ。しかし、育児や介護の経験をブランクではなく「付加価値」としてとらえる同社の社風も、しっかりと大櫛氏を支えている。
一方、子育てや夫の転勤などでキャリア中断を余儀なくされて専業主婦となった女性も多い。今、そんな潜在能力を持つ専業主婦たちに企業が熱い視線を送り始めている。主婦向けの人材サービスを展開するビースタイルの川上敬太郎氏によると、子育てが一段落して自分の時間が増えた40代を対象とした求人数は3年前から約10倍に増加、職への応募数も6.7倍に増加しているという。少子化により労働人口が減少していく近い将来、人手不足に悩む企業を救うのは、PCやインターネットを使いこなして高いスキルも持つ40代、50代の女性なのだろう。
先日行われた「テレビ東京ビジネスフォーラム2016」では、「ゲキ論!女性活躍の真相」と題して「女性の活躍」についての議論が行われた。タレントでエッセイストの小島慶子氏から「活躍する女性の定義」について問われた一億総活躍担当大臣の加藤勝信氏は、「会社で働くでもいいし、起業するでもいいし、ビジネス以外の形での活躍でもいい」と答えた。経済の成長につながる多様性のある社会をいかにして実現していくかがポイントだという。
女性が活躍する企業では何をしているのか
女性の積極的な活用を目指す企業は、それぞれに工夫を凝らした取り組みを行っている。
富士通エフサスは女性幹部候補育成のために、「Woman’s Leadership Program」を2013年から実施。同プログラムでは、山奥でチェーンソーを使用しての森林伐採や、経営陣との打ち合わせへの同行など、多様な経験を積むことができる。プログラムを受講した女性の多くからは自信を感じられるようになり、発言内容や視点にも変化が見られた。
またトヨタでは、女性が上司と一緒に自身の育成計画を作成する。さらに、早期復職者へのベビーシッター代補助、特例在宅制度の導入、社内託児所の設置などを行った結果、同社の女性事技職の離職率は6%から1%へと減少した。
産業界の労使や学識者などで構成する日本生産性本部が実施した調査によると、「課長または課長相当以上の女性が3年前と比べて増加した」と答えた企業は40.3%に上るという。部門別にみると「人事・総務部門」での女性管理職登用増加が44.7%と目立つ。課題として挙げられたのは「女性社員の意識」と「育児等家庭的負担への配慮」だった。
職場、家庭内で女性の活躍を妨げているもの
日本の国会議員(下院、一院制の場合はその議会)の女性比率は9.5%にとどまっており、世界では119位だ。韓国と北朝鮮は16.3%で89位、中国は23.6%で58位、米国は19.4%で76位と、関係の深い国々は総じて日本よりも順位が高い。日本のランクはOECD加盟国の中でも最下位となった。まずは政治の世界から女性活躍を実現してもらいたい。
日本労働組合総連合会が2015年に行った調査によると、妊娠を期に退職する女性は6割に上るということだ。離職者が多い原因のひとつに、社内でのマタハラがあるのではと田原総一朗氏はいう。マタハラとは、妊娠や出産を理由にした解雇、降格、嫌がらせなど、職場での不利益な扱いをいう。女性活躍担当大臣の加藤勝信氏はマタハラの防止を企業に義務付けるための法改正を行う方針を示しており、法案の成立が待たれる。
家庭内に目を向けてみよう。総務省の統計によると、「日本の夫が育児や家事に費やす時間」は、2011年で1日あたり67分だった。これは欧米諸国に比べて極端に少なく、わずか3分の1程度にすぎない。育児や家事の分担について結婚前によく話し合った夫婦ほど、育児や家事の共有度が高いという、小金井市の調査結果もある。お互いが納得してから結婚に踏み切るというのが賢明なのかもしれない。
働く女性の健康リスクには法の整備や、職場と家庭の理解が必要
日本医療政策機構が東京大学大学院薬学系研究科の五十嵐中特任教授らと合同で調査した結果、婦人科系疾患を抱えながら働く女性の医療費支出と生産性損失の合計は年間6.37兆円に上ることが分かった。疾患により会社を休めば「休業による損失」が発生し、辛いのを無理して出勤すれば「効率低下に伴う損失」が発生する。損失を減らすためにできることは、検診を受けることに他ならない。病気の早期発見、早期治療開始が、健やかに働き続ける秘訣だ。
メンタル面においても注意が必要だ。国際EAP研究センターによると、女性管理職は男性管理職よりもストレス度が高くなる傾向があるという。「キャリア形成」「個人の尊重」「公正な人事評価」が適切に行われていないことに対して強いストレスを感じる女性管理職が多いようだ。法の整備や、職場と家庭の理解が、社会進出をする女性の助けになることは言うまでもない。