女性雇用首都圏の保育所、供給追いつかず 横浜市で再び待機児童
首都圏の自治体が認可保育所の定員拡充を急いでいる。川崎市は14~15年の2年で認可保育所の定員を2870人増やすほか、千葉県船橋市は受け皿を増やすため株式会社による認可保育所の運営を認める。ただ、利用希望者が急増し、受け入れ態勢が追いつかない自治体も目立つ。横浜市で待機児童ゼロが達成できなかったことを受け、継続的な取り組みも課題となる。
川崎市は13年4月時点で438人だった待機児童数を「人数は集計中だが大幅に削減した」(待機児童ゼロ対策室)。今年4月の認可保育所受け入れ枠を1330人増やし、認可外の「川崎認定保育園」に通う3歳未満の児童への保育料補助を月5千円から2万円に引き上げるなどの効果が出た。15年4月には認可保育所の定員をさらに1540人増やすなどして待機児童ゼロをめざす。
■ニーズ刺激に
東京都内でも江東区が1年間で定員を1104人増やすなど、各区が整備を進めた。ただ、それ以上に利用希望が殺到し、待機児童が増加した自治体も目立つ。子育て支援を拡充した結果、子どもを預けて働こうとする人の潜在的なニーズが掘り起こされたためだ。杉並区も定員を919人(13%)増やしたが、4月1日時点で116人が待機児童となった。
さいたま市の待機児童数は集計中だが前年の117人から増加する見通し。マンション建設が相次ぎ子どもの数も増加。4月の保育所定員を約670人増やしたり、定員割れになっている5歳児向けのスペースで1歳児を受け入れたりするなどの対策を取ったが、申請者数が急増している。
■株式会社も参入
各自治体は14年度、さらに対策を強化する。さいたま市は認可保育所の定員を810人増やすなど、17年4月までに待機児童ゼロを目指す。船橋市は4月時点の待機児童数が同市の独自基準で789人と前年より増え、初めて株式会社に保育所運営の門戸を開く。既存の社会福祉法人などでは追いつかないと判断した。
ただ、ゼロ達成後の継続的な対策も課題。昨年、待機児童ゼロで話題となった横浜市は子育て世帯が市内に流入し、「保育所の運営負担を考えて、整備量を控えめにした」ことが裏目に出た。
今年、待機児童ゼロを達成した千葉市は反動増を抑えるため、14年度は保育所などの定員を580人拡大するほか、入所希望者への施設紹介を専門に手がける「千葉市子育て支援コンシェルジュ」を全6区に配置。なんらかの形で預かれるようにする。
もっとも、表面化していない潜在的な待機児童は全国で80万人に達するとの試算もあり、「潜在需要を満たすのに現在のペースでは到底間に合わない」(学習院大の鈴木亘教授)。全国一律の認可保育所だけでなく、「自己負担で付加サービスを付けるなど、企業の独創性を発揮できるようにして参入を増やすべきだ」(国際基督教大の八代尚宏客員教授)との見方もある。
待機児童の定義、自治体で違い鮮明
東京23区を対象にした日本経済新聞社のアンケートでは、待機児童の定義が自治体によって違う実態が浮き彫りになった。やむなく保育所以外のサービスを利用しても待機児童に含まれない事例などがあるためだ。
杉並区は2014年4月1日時点の待機児童数が116人だったが、厚生労働省の基準では57人に減るという。例えば公的補助の対象外のベビーホテルを利用しても国は待機児童にカウントしないが、同区は実態にあわせるために待機児童として扱う。
一方、江東区は区の基準では170人だが、国の基準では315人に。保育所に入れず幼稚園に通っている場合などを区は待機児童から除外するためだ。
横浜市などは厚労省に準じた基準としているが、厚労省の定義も解釈にあいまいな部分を残す。23区への調査で、「同省の定義に従っている」と回答した区でも、幼稚園の預かり保育を利用している場合を待機児童に含めるかなど対応は分かれている。自治体の担当者の間には「定義が異なるのに、自治体間で『待機児童ゼロ』を競っても実態に即した対策にならない」と懸念の声もある。


