総合米採用に新たな潮流 カバーレターはもう古い
カバーレター(英文履歴書に通常表紙として添付される、履歴書の内容の抄録)が重要視される時代は終わった。もう過去のものといっていい。人材採用の担当者や責任者のブログや会議でのプレゼンを見てみると、もはやカバーレターに目を落としてもいないことが分かる。理由は簡単だ。
カバーレターにはたいてい、同じようなことしか書いていない。「履歴書をお送りします。これを見ていただければ私が御社の求める人材であることがお分かりいただけると思います」。このようなカバーレターを読む時間など誰にもない。カバーレターの中身が採用担当の心躍らせるようなことはまずないから、担当者はカバーレターをざっと見るのに必要な20秒さえも惜しむのだ。
■巨大システムの必要はない
カバーレターの時代が終わっても求職活動には痛手ではないが、採用活動に影響を与える問題はもっとたくさんある。自動化された求人サイトはすでに古めかしいが、それ以上に、そもそも最初から設計も実用性も高くなかったことを示している。能力の高い求職者はオンラインで応募書類を完成させるためにコンピューターに向かう必要がない。彼ら自身のネットワークと、こうした人材を知る採用担当者、さらに人材を求めている特定の採用担当者を探し当てる能力のもとで、優秀な人材はオンライン応募のようなつまらない方法ではなく、より速く効率的に次の仕事を見つける方法を構築している。
採用支援システムは過去のものになりつつある。もし求人広告をあちこちに出さなければ、応募書類の山と格闘するという最大の問題も起こらない。企業は求職者の情報を管理するために巨大なデータベースを構築、維持する必要はないことに気づき始めた。これはマーケティング手法の問題であり、ITの問題ではない。とすれば、この問題を解決するのに巨額のIT投資をするだろうか。
採用する企業側の求人広告はより賢くなってきている。まるでスパゲッティの束を壁に投げつけ、何本か壁にくっつけばいいというような広告の出し方ではなく、能力のある人材が集まるコミュニティーを開拓しているのだ。
カバーレターが姿を消し、採用支援システムも使われなくなった場合、今後の採用活動はどのような姿になるのだろうか。ここで少し先読みしてみよう。
雇用側は募集内容の書き方から変えてくるだろう。「マーケティング分野での経験10年以上」といった募集ではなくなるはずだ。一筋縄にはいかない仕事の世界で今、最高の人材がどのような経験をもたらすのかはだれにも分からない。
採用候補者の職務経験や学歴は予想がつかないが、こんなアピールの仕方で求人広告を出すこともできる。「こんなやりがいのある課題を抱えています。これを解決してくれる優秀な人求む」。履歴書の仕分けという事務作業をしやすくするために、お決まりの必要条件を一方的に書き連ねるのではなく、抱えている課題について語ればいいのだ。発想を180度転換すればいい。
■人材はファンのコミュニティーから
企業側が最近気づき始めているのは、最高の人材はその企業のファンや友達、さらにそのファンや友達、フォロワーだという可能性があることだ。その企業への気持ちが強い人たちのコミュニティーを開拓するほうが、プロセスは迅速でコストもかからず、賢い。彼らはその組織の求人広告を読むまでもなく組織をよく知っているのだから、当然だ。こうした人材のコミュニティーには、その企業が何を手がけるのか興味津々という人が集まっている。
人材のコミュニティーにいるメンバーからいつか、その企業で働く人材が出てくるかもしれないし、有能な人材を紹介してくれるかもしれない。紹介者がその企業に入社しなくても、おそらく入社することはないのだろうが、紹介者には報酬を支払うかもしれない。でも、それが何か問題だろうか。だれもがヘッドハンターであり、ヘッドハンターになれる。他の分野と同じように簡単に、優秀な人材の人脈作りにクラウドソーシングの手法を使えるのだ。賢い企業はすでに始めている。
人材採用は細かな仕分け作業から純粋な営業、マーケティングへとようやく姿を変えてきている。筆者の手がける人材事業に、こうした情報を聞きつけた人材担当トップや企業トップが毎日連絡してくる。「うちの会社はすばらしく良い職場だと思うのに、なぜ履歴書があまり来ないのだろうか」。非常に良い質問だ。優れた企業風土は人材採用の最高の武器だが、それも仕事を探している人が企業風土を知っていて、さらに人材発掘の人脈が潤滑かつ迅速である場合だけだ。
企業側は外側からの力を受けて、採用プロセスの見直しを急いでいる。そこで基準となるのは、新規採用候補の人材が持つ経験だ。しかも、会社と接触を始めた瞬間からだ。履歴書送付やオンライン応募書類を試すと分かる。(痛くなって初めて歯医者へ行って受ける)根管治療のようなものと感じておかしくない。
能力のある人材探しは新時代に入っている。カバーレターの時代は終わり、今や「ペインレター」(注:働きたいと思う企業の「痛み=問題」を解決できるのは自分だとアピールするレター)の時代だ。採用担当者は自分の企業が何に力を入れ、どこで人材を必要としているかをすでに理解している応募者に会いたいと思っている。目を凝らして分析し、共感をもってすれば、知識経済における採用活動を改革できる。2016年、応募者主導で人材がうごめく採用活動の前線で、あなたの組織は戦う準備ができているだろうか。
