総合働き手として外国人に来てもらうことに賛成?反対?
働く外国人を街で多く目にするようになりました。少子化や景気の回復を背景に、年々増えています。日本の経済発展につながる「高度人材」は積極的に受け入れるが、単純労働は表向き認めない、というのが政府の姿勢です。みなさんは、どう考えますか?
日本で働くとは――。23年前に中国から来日して建設会社に勤め、いまは母国から日本へ「出稼ぎ」に来る人の受け入れも手がける高嵩コウ(コウは羽かんむりに高)さん(50歳、広島市在住)の体験を聞きました。また、慶応大の中島隆信教授は、「まず、日本の働く環境を改善すべきではないか」と指摘します。
■高嵩コウさんに聞く
私が来日したのは、1993年、28歳の頃でした。残留孤児の娘で、中国育ちの妻と一緒でした。
最初に働いたのは広島県内の建築会社でした。阪神・淡路大震災の仮設住宅造りなどが仕事でした。工事の現場監督の仕事がしたくて、別の建設会社に転職。そこで4年働きました。手取りは15万円。子どもも生まれ、夜は飲食店でアルバイトをしました。食べるのに必死でした。
あるとき、日本人の同僚がコピー機に置き忘れた給与明細書が目にとまりました。年収が600万円でした。仕事は同じなのに、給料は3倍。驚きました。その後、上司に「私が40歳まで働いたら、月収はいくらになるか」と尋ねると、「22万円」。日本語はできるようになっていたし、設計図面もかける。勉強して1級建築士の資格を取り、退職しました。03年に建築士事務所を立ち上げてから、ようやく生活が安定しました。
当時は「中国人というだけでこんなに待遇が違うのか」と不満に思いましたが、今では「自分をひろってくれた」という感謝の気持ちもあります。不自由さを糧にがんばって建築士の資格を取り、今の自由を手に入れたわけですから。
ただ、日本で20年以上暮らし、安定した生活をしている外国人はごくわずかでしょう。私が来日した当時、日本は輝いていました。今、中国人はアメリカやヨーロッパへ留学し、起業しています。何かと「本音と建前」「暗黙の了解」がある日本は、わかりにくいところがあると思います。
もう一つは、働く環境です。私は外国人技能実習生の仲介も手がけていますが、働く現場は、水産業や工場労働など、きつくて日本人が避けがちなところが多い。家族の呼び寄せはできず、最低賃金が当たり前で、「同一労働・同一賃金」なんてないようなもの。中国の所得はこの10年で倍以上に増えています。日本の最低賃金で働くのも、中国で働くのも、稼げる額は変わらないくらいです。待遇を見直さないと、だんだん働き手が日本に来なくなってしまうのではないかと感じています。
■中島隆信・慶応大商学部教授(応用経済学)に聞く
「日本で働きたい外国人はたくさんいる」と考えがちですが、果たしてそうでしょうか。
例えば、介護でなり手が不足しています。政府は外国人がこの分野でもっと働けるよう制度改正を目指していますが、日本人が嫌がるきつくて低賃金の仕事は、外国人も長く続かない。その仕事になぜ人が集まらないかを考えなくてはいけない。
今の政策は「日本人が快適に暮らせるように外国人を受け入れる」という発想です。国の経済に貢献し、社会保障負担の担い手になるならいいけれど、もらい手になるなら帰ってほしいというのが見え隠れしているような国に、本当に来てくれるのか疑問です。
もう一つの懸念は、働く環境です。長時間労働や保育所不足といった問題を抱えたままでは、外国人にとっても働きにくく、暮らしにくい。働きやすくて子育てしやすい社会にすれば、外国人だって自然に集まりますし、日本の労働力も増えるはずです。
経済界は優秀、もしくは安い労働力を補えればいいのでしょうが、移民の問題はGDP(国内総生産)だけでは済まない問題です。子どもの教育や自治体による支援・負担など、経済学だけでの議論には限界があります。
労働力としての移民受け入れは、選挙でも有権者が意思表示できる機会がありませんでした。政党はきちんと態度を明らかにして有権者に問うべきでしょう。(聞き手・疋田多揚)
◇
働き手として、外国人にもっと来てもらうことへの賛否を聞いた朝日新聞デジタルのアンケートは、賛成が6割強、反対が4割弱で推移しています。年代別に見ると、20~40代の男性だけ、反対が賛成を上回っています=グラフ。賛否の声を抜粋して紹介します。
◇
「キツイ仕事は希望者が少なく、日本人だけでは、もはやこの社会は維持できないでいる。すでに賛成・反対などと言ってはいられない状況である」(東京都・60代女性)
「『研修』などと言い繕うのではなく、正式に受け入れる制度づくりが必要。外国人労働者が働きやすい環境は、日本人にとっても働きやすくなるはず」(東京都・40代男性)
「郡部に住んでいますが、人口減少はものすごい勢いで進んでいます。例えば、地方の人口増加につながるような移民政策を、政府には真剣に考えて欲しいと強く思います」(福島県・50代男性)
「外国人の目から見てビジネスチャンスを見いだし、長く住み子どもを育てたいと思える魅力や競争力が日本にあるのか、私たち自身が一度冷静に考える必要がある」(東京都・30代女性)
「日本は本気で長期的に強くなりたいなら移民を受け入れるべきだ。廉価労働者だけじゃなく、積極的に技術者や経営人材にも来てもらうことが望ましい」(東京都・20代男性)
「日本は、移民労働者の代わりにロボットを開発しているという誤解まで生まれています。受け入れて、言葉を学んでもらい住み着いて欲しいものです」(兵庫県・60代女性)
「低賃金労働力として使い捨てにするようなことはよくない。その上で、受け入れできる数を適切にコントロールするべきだ」(東京都・50代男性)
「『一億総活躍』と称して高齢者を(運転など)人の命にかかわる仕事に就かせるのはいかがなものでしょう。運転の上手な外国人若者に日本語や習慣を身につけてもらい、時限つきの労働者として雇うほうがよほど安全安心な社会になると考えます」(東京都・50代女性)
「国は、移民のために二重国籍を許すべきです。加えて、海外で育った日本人、日本人の祖先がいる人たちを短期労働者、留学生として受け入れやすいシステムを作れば、若い世代がもっと日本で働いてみようと思うのでは」(東京都・40代女性)
「雇用が奪われるという幻想から外国人を排斥しない。コストの安い外国人に3K業務を手伝ってもらい日本人を一段上の高収入業務に持っていかない限り低賃金に足が引っ張られていつまで経っても裕福になれません」(米シリコンバレー・40代男性)
「外国人労働者を受け入れれば、(日本人が)低賃金のままで、いつまでも希望を持って働くことができない社会になります。まずやるべきことは生活出来る最低賃金にすべきです」(群馬県・60代男)
「職に就けない日本人の若者は多い。その若者を無視して安い賃金で雇える海外からの移民を利用するのは国としてどうか。もっと介護職・保育職の賃金を国が補助するべき」(北海道・30代女性)
「大量の移民を受け入れてまで現在の人口と経済規模を無理に維持する必要はないと思う」(東京都・20代男性)
「財界の言うがままに外国人労働者受け入れを進めても、バブル時代の日系人や技能研修生のように使い捨てた揚げ句地域や行政に負担を押し付けるだけになるのは目に見えている」(兵庫県・40代女性)
「外国人を『働き手』としてではなく数十年先の日本を共につくっていく市民と考えないと一時的に安価な労働力が増えるだけで、新たに多くの貧困層をうみだします」(東京都・30代男性)
「労働人口の減少であれば逆に一人当たりの生産性を上げる必要があり、実質賃金の上昇になります。派遣労働者・フリーター・ニートや、失業者のスキル向上に投資する方がはるかに日本のためになります」(東京都・20代男性)
「単純労働は定住させず期限を決める方法でやるべきで各国の移民による混乱を考えれば、移民は高度人材に限るべきです」(東京都・20代男性)
「治安の悪化が心配です。まずは日本の潜在的な働き手を掘り起こすべき」(愛知県・40代女性)
「就労=定住化が進むことは望まない。外国人コロニーがあちこちに出来てしまい、環境が悪くなる」(埼玉県・50代男性)
