与党議連「就活の”時期問題”は本質ではない」 自民党が考える「就職問題」の解決策とは

新卒与党議連「就活の”時期問題”は本質ではない」 自民党が考える「就職問題」の解決策とは

「『履修履歴』面接」という言葉を聞いたことがあるだろうか。経団連「採用選考に関する指針」にも盛り込まれたこのまったく新しい面接手法に、注目が集まっている。「嘘をつけない、脚色できない、準備できない」という特徴を持つと言われるこの面接は、いったいどこが新しいのだろうか。

日本で唯一の解説書を上梓した筆者が、「『履修履歴』面接」の概要を解説する。

前回:勉強しない「文系大学生」に勉強させる方法

3回にわたって、採用選考における履修履歴活用(リシュ面)の効用をお伝えしてきました。

実は1年前までは、「履修履歴」という言葉すらあまり使われることはありませんでした。それがこの1年の間に、就職問題懇談会の申合せに使われ、12月には経団連の「採用選考に関する指針」にも、履修履歴活用が言及されるようになりました。

経団連の「採用選考に関する指針」で履修履歴活用が言及されたのには、与党の若手議員が中心となって就職問題の本質とその解決方法を模索し、政府に提言した「新卒者の就職活動を支援する議員連盟」が関与したと言われています。(提言はこちら

議員連盟の提言とは

その提言では、今まで何十年間も解決できなかった「就活開始時期」の問題点や就職問題全体の本質が、極めてわかりやすく整理されています。この提言が、馳浩文科大臣、加藤勝信内閣特命担当大臣に手渡されたことで、就職問題の解決に向けた流れが加速しようとしています。

そこで今回は、その提言を参考にしながら、就職にまつわる問題の本質を説明し、履修履歴活用が就職問題にどのように関わっているのかを解説したいと思います。

議員連盟は2015年9月に発足しました。会長は元文科大臣の河村建夫衆議院議員、中心メンバーは宮崎謙介衆議院議員、小林史明衆議院議員でした。経済界、大学関連、就職関連企業団体、学生などから状況をヒアリングしてまとめ上げた提言を、2015年11月20日、馳大臣に提出しました。

この提言の主旨は、大きく分けて以下の3つです。

1.2017年卒採用において、採用選考時期を6月にする必要がある
2.就職・採用活動開始時期を設定することでは、本質的な問題解決にならない
3.就職問題の本質的な解決手法

 

順番に解説していきましょう。

「後ろ倒し」は不公正を拡大した

なぜ、2017年卒採用においては、採用選考時期を6月にする必要があるのでしょうか。

もともと文科省や内閣府は、開始時期を毎年変えることは朝令暮改であり、不要な混乱を招くと、2017年卒採用の時期変更には慎重な姿勢でした。

しかしこの提言では、2017年卒採用において、時期を変えるべきだと言っています。ここでポイントとなるのは、時期を変えるべき理由として、よく言われている「就職・採用活動の長期化を阻止する」だけではなく、「オワハラなど、採用活動の不公正化や不透明化が、社会問題として看過できないレベルになってしまった」「中小企業を中心に、採用活動の負担が企業の経済活動に影響するレベルになってしまった」ことが挙げられている点です。2017年卒採用も選考時期を8月に据え置くことで、この2つの問題がより悪化する可能性があるため、産業界の要請を受け入れてこの2つの問題を抑制することが望ましいとしているのです。

就職・採用活動は、時期を4カ月後ろ倒しにした初年度だったことで、4カ月長くなりました。また初年度である不安感から、企業も学生も過剰に採用・就職活動に時間を割きがちになったことは否めません。

しかし、提言で述べられている2つの問題は、企業の採用意欲が極めて高い現状では、縮小することは考えられません。「不公正・不透明」な採用はより緻密に行われ、「中小企業への影響」は、採用に真剣な企業ほど大きなダメージを受けるはずです。

時期設定は、必ず不正を生み出す

2つ目の「就職・採用活動開始時期を設定することでは、本質的な問題解決にならない」は、公の場面では今まであまり議論されていない、新たな視点といえます。今までは「いつがもっともいい時期なのか?」という議論がほとんどでした。

提言では、開始時期の設定という手段では、就職問題は解決しないと明快に述べています。なぜなら、開始時期を何月に設定しても、それ以前に採用活動をする企業は必ず水面下の活動をするようになり、それによって不公正、不透明な採用活動が引き起こされるからです。要するに、開始時期を設定するということは、それによって新たな問題を引き起こすことになるというジレンマを含んでいるのです。

また、「そもそも民間企業の経済活動の一環である採用活動に政治が介入することは望ましいことではない」とも明言しています。

産学官が一体となった取り組みが必要

3つ目は、履修履歴活用に直接関係するポイントです。

もともと就職・採用開始時期を設定し始めたのは、就職活動が始まると学生が授業に出なくなるという問題を解決するためでした。しかし、時期を設定するという手法は、前述したような「不公正・不透明な採用活動」という新たな課題を引き起こしてしまいます。

提言では、学生が授業に出ないことの本質的な原因は、学生にとっての学業の優先順位が、就活に比較して圧倒的に低いことだと指摘しています。議員連盟の聞き取りでは、体育会の学生が「練習や合宿などと就活が重なり、その両立が大変だった」と言っています。これは、両立させようと努力しているということです。

一方、授業においては、就活との両立を考えるのではなく、「授業に出ない」という選択がなされがちです。言い換えれば、授業への優先順位を部活レベルに引き上げることができれば、就活が始まっても、授業とどう両立するのかを考えるようになるのです。

提言では、産学官が一体となってこの本質的な問題を解決することが、もっとも本質的で重要な方法だと言っています。

そのためには当然、大学が授業の質を高めて、学生が授業に出るようにすることも重要です。また、企業が信頼できるような卒業の難しさや成績評価が重要であることも、論をまちません。ですが一方で、企業も採用活動において履修履歴を取得し、それを活用する努力が必要だと言及しています。

成績を参考にすることができない企業でも、履修履歴を面接で活用することは可能です。企業がリシュ面を始めることで、「採用選考では授業についても質問される」「いい授業を選択して、きちんと理解しておくほうが就活にもいい」という評判が学生間に広がれば、いい授業をし、評価をきちんとしようとする大学や教員の行動を後押しすることになります。

この議連の提言は極めてわかりやすく、納得できるものだと思います。履修履歴の活用が急激に広がり始めているのは、このようなことが背景にあるのです。

企業の採用に関わっておられるみなさんは、ぜひ履修履歴の活用に協力いただきたいと思います。各企業がリシュ面を始めていくことで、就職問題の解決だけでなく、大学教育のレベル向上につながるからです。

今までは、企業が採用活動に熱心になることで、大学教育を阻害していると言われがちでした。しかし、企業の皆さんがリシュ面を始めることで、大学教育が磨かれ、学生は学問に励み、企業は優秀な人材を採用できるという、正の循環を起こすことができるのです。