総合「働き方革命」は、日本でも始まっている 創造性を高めるワークスタイルとは?
Google社の人事トップ(上級副社長)であるラズロ・ボック氏の著書『ワーク・ルールズ!』が、『フォーブス』英語版の「クリエイティブ・リーダーシップに関する2015年の上位10冊(Top 10 Creative Leadership Books Of 2015)に選出された。同社の先進的な働き方が、今、注目を集めている。
日本にも、新しい働き方に先進的に取り組んでいる企業がある。そんな企業の方々を迎えた討論イベントが、2015年12月1日、東京・六本木 株式会社フリークアウト本社ヒルズ ガレージにて「ワークスタイル変革で始まる【クリエイティブな働き方】」として開催された。登壇者は以下の通り。
このトークショーの様子をリポートしていく。
徳島の古民家で仕事をする
山田:まずは、各社の簡単な紹介から、始めていただけますでしょうか。
角川:Sansanは、クラウドの名刺管理サービスを提供しています。設立は2007年です。
佐々木:freeeは、スモールビジネスが創造的活動に集中できるよう、財務などのプラットフォームの提供をめざしています。設立は2012年です。
田中:Fringe81は、広告技術を活用した事業開発、成長支援を行っている会社です。設立は2005年です。
池見:groovesは、人材と企業が出会うマッチングサイトの運用を行っています。設立は2004年です。
山田:ありがとうございます。各社とも、立ち上げたばかりの会社ではなく、立ち上げて数年経っていますね。その期間に、いろいろな悩みを持ちながらも、企業としてコアの部分をつくってこられたと思います。
そうしていろいろな試みをしてきたなかで、成功している話、あるいはうまくいかなかったエピソード、または特に工夫なさっている人事制度について、うかがいたいと思います。Sansanの角川さん、リモートワークについてはいかがでしょうか?
角川:メディアによく取り上げてもらえる当社の事例に、「サテライトオフィス」があります。これは、徳島県の神山町に古民家を1軒構えて、そこで社員に働いてもらうというものです。
神山町はとても田舎なのですが、いまはエンジニアが2人常駐しています。それだけでなく、東京のエンジニアが1カ月ぐらいそこに滞在して仕事を仕上げ、帰ってきたらまた次の人が行く、という活用法を5年ほど続けています。
こうしたリモートワークは、最近の流行りでもありますが、実際はなかなか難しくて失敗もあります。よくあるのが「言ったけれど、伝わっていない」というものです。
フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションでしたら、自分の意図が相手にちゃんと伝わったかどうか、直接その場で確認できますが、遠隔地で、オンラインやテレビ会議によるやりとりになるとそうはいかない。それでだんだん、人間関係に亀裂が入るということがありました。
そこで、リモートワークをするなら、オフラインで人間関係のベースをつくらないとダメだなと感じました。神山町にいるメンバーと東京にいるメンバーの関係がこじれてしまったら、神山町から一度戻ってきてもらって、オフラインで飲み会などをしながら人間関係を回復してもらい、その後で神山町に戻ってもらう、ということを学習しながらやっています。
ロボットが自分の代わりに
山田:Fringe81では、最強のリモートワークがありますよね。
田中:役員の1人がバリに住んでいます。ここで独立して事業をやっているわけではなく、日本に部下がいます。そこで、本人も「この状況をどうすればいいか」と考えたみたいです。
テレビ会議などで平面で相手を見ると、お互いに生きた感じがしないじゃないですか。そこで彼は、iPadを装備した電動ロボを導入して、東京のオフィス内を動き回らせるようにしました。このロボは、彼がバリから遠隔で動かしていて、首も伸び縮みします。
そうすると、普通に会議もできるし、「みんなは元気か?」って声をかけながらオフィスを回れるのです。このロボがフロアの段差とかに引っかかって動けないでいると、めっちゃかわいい。こういう「生きている感」がすごく大切です。
彼は、売上責任なども負っていますが、別に日本にいなくても問題なく部下をマネジメントできるなと私は思っています。
山田:Sansanでもロボットを導入するといいかもしれませんね。
角川:いいですね。当社が最近やっているのは、タブレットにSkypeで常時接続しておいて、会議のときに参加者がタブレットを連れてくるというものです。ロボットとまではいきませんが、タブレットのような小さい物体に顔が映っていると、なんとなくかわいく思えるということはある。人間味を持たせる工夫っていいなと思いましたね。
山田:佐々木さんのfreeeでは、在宅やリモートワークに関してはどうでしょう?
佐々木:何人かそうして働いているメンバーはいますね。ただ、その場にいる必要性が高い職種というのも、やはりたくさんあります。
クリエイティブの仕事は、たとえば「ふとすれ違ったとき」の会話から良いアイディアが生まれることもありますよね。『ワーク・ルールズ!』のなかでも指摘されていますが、そういうことは大事だなと思っています。
そこで、会社に来られるときはなるべく来てください、ただ、お子さんが病気になったとか、事情があるときはぜひ家にいてください、というかたちにしています。あくまで例外として自由にリモートワークができますよ、ということです。
佐々木:そのためのツールは用意しています。当社はクラウドサービスの会社なので、自分たちがクラウドを使いこなすための工夫をもちろんしています。社内ツールがすべてクラウドになっているので、どこででも仕事ができる環境があります。
いま、リモートワークが検索されている
山田:会社がいくつかのフロアに分かれている場合、フロアを越えると、世界が違うんじゃないかというぐらいの断絶が生まれがちです。フロアをつなぐマネジメントというのも悩ましい課題だと思いますが、どうでしょうか。Sansanさんは何フロアありますか?
角川:いま、2フロアに分かれています。最近、オフィスにカメラをいくつか取り付けました。それぞれのフロアで、別のフロアの動きを見られるようにするためです。カメラのうちの1つは社長に向いている定点カメラで、社長の在籍状況やちょっとした機嫌が、なんとなくわかるようになっています。
山田:それは全社員が見られるのですか?
角川:そうです。大きなモニターに社長が常に映されています。
池見:私たちが運営している「Forkwell Jobs」のサイトで、いま検索されている一番のキーワードが「リモートワーク」です。転職を考えているエンジニアにとって、非常にニーズが高い働き方なのでしょうね。「リモートワーク可」を条件に入れて求人を出すと、通常では応募してこないようなエンジニアからの応募が来る、ということがあったりします。
アメリカでは地理的な問題から、オフィスに「集まる」ということ自体がナンセンスなので、リモートワークでいこうというのは、少なくともアメリカ国内では流行っているのではと思います。37signalsという、エンジニア業界では有名な会社がありますが、この会社では、会ったことのない世界の人たちと組んでグローバルなチームで働くということをしています。
これからは、時差や地理などといった要因に左右されずに働くために、リモートワークは必須になってくると思います。
山田:おっしゃるように、アメリカだと、電話時代で言えばテレワークなどがあって、離れた場所で働くのが当たり前ですよね。ただ、日本は集まって働くのが当たり前という意識が根強いので、リモートワークを積極的に使うのは、まだまだこれからなのでしょうね。
サテライトオフィスの重要性
角川:実は、当社みたいなベンチャー企業では、コミュニケーションが大事なタイミングがたくさんあるのに、リモートワークOKです、とするのはしんどいだろうと思っています。
サテライトオフィスを推進している立場でこんなことを言うのは矛盾していますが、基本的には同じオフィスにいたほうが絶対いいと思います。生産性の観点からも、クリエイティビティの観点からも、一緒にいることによる価値がより身に染みてわかります。
ただ、神山町のような、都会とはまったく違う環境に身を置いて働いてみると、新しい発想が生まれたり、気分が一新されたりということはある。そうしてスタイルを変えたり、行ったり来たりする刺激は重要だなとも思っています。そのときに、リモートワークができるリテラシーがあれば、いちいち仕事を止めなくてすむわけです。
角川:それから、採用の観点でいうと、神山町の経験があったからこそ社内のリモートワークのリテラシーが上がってきて、東京への転勤がないかたちで地方の人を採用できるようになりました。
田中:最近、かっこいいオフィスにいると右脳の能力がどんどん下がるなって思っています。そこで、サテライトオフィスではありませんが、8人ぐらい働けるようなローテーションオフィスを鎌倉につくってみました。
そうしたら、みんなハードに働く一方で、リフレッシュして東京に戻ってくるんですね。理由はまだ謎のままですが、そのぐらいやらないと、右脳を刺激して新しいアイディアを出し続けるのは無理だと思っています。鎌倉には、常駐で働く人がいるわけではなく、週1回ぐらいは行くようにしています。
面接官を育てることがなぜ大事か
山田:次のテーマに移りましょう。皆さん成長過程にある会社なので、1週間に1回は採用面接をしているというくらい、常に採用活動をしていると思います。採用に関してどういうところに配慮されているでしょうか。
角川:当社は5人のチームからスタートして、もうすぐ社員が200人になるのですが、起業初期の熱量と人材のハードルを下げないように、歯を食いしばっている感じです。
佐々木:当社は現在、社員が150人ほどいますが、向こう1年でさらに100人ぐらい採用しようとしています。最も大変ではありますが、力を入れているのは、面接官をいかに育てるか、ということです。
面接官としてのスキルが高い人が面接をすれば、候補者の隠れた才能に気づきやすいし、自分より優秀な人を恐れずに採用できるということがあります。
ところが、そのスキルが低い人が面接をすると、自分より優秀だという雰囲気を出している人を採用しなかったり、候補者の良いところに気がつけないということが起こりがちです。
ですから、面接官としてトレーニング中の人を、あえて面接官に含めるということもしています。その人の意見は、もちろん最初は参考にされるウェイトが低いですよね。そして、その人の面接のフィードバックに対して、別の面接官がフィードバックをします。これにはコストがかかりますが、成果は着実に出ます。
山田:成長してオフィスが立派になってくると、こんないいオフィスで働いてみたいとか、あるいはあんな大企業が出資しているから安心して勤められる、といったように、大企業に勤めるようなつもりで来る応募者も当然いますよね。それに対してはどうお考えですか?
人間としての社員にどこまで向き合うか
佐々木:オフィスはそれなりにかっこよくはしていますが、場所が五反田ですからね。どれだけ僕たちのミッションに共感してくれるかとか、そういうところを重視しています。それから、どれだけ経験があるかよりも、どれだけ「のびしろ」がありそうか、あるいは新しいことが好きで挑戦を続けていけそうかを見ています。
あとは、Googleも活用していたと言われるエアポートテスト。24時間空港に閉じ込められたとしたとき、この人と一緒に過ごせるかどうか、という基準ですね。これも重視しています。
佐々木:結果として、僕たちの会社はそんなに変わっていないと思います。この人が僕たちの5番目の社員だとしてもおかしくないなという人が、最近でも多く入社してきています。
一緒にバーベキューをやって楽しそうとか、みんなで一緒にいたときに楽しい空間をつくれるかどうかが、かなり重要です。
山田:そうじゃないと、長い時間一緒にいたくないですからね。
田中:先日、社内で社員が100人を超えてどうしようか、という話をしました。最近の役員会で話したことで一番良かったのは、社員の不幸にどう付き合うか、です。
社員が100人を超えて増えてくると、社員が自分(役員)のあずかり知らぬところで、たとえばプライベートでトラブルに巻き込まれたりしていることがある。それにどこまで付き合うかという話をしました。私たちはできる範囲で、全部付き合おうという結論になりました。
もちろん、採用もとても大事なことです。一方でマネジメントを考えると、社内で働く人のマネジメントというのと、もっと大きく、その人を人間としてどう扱うかというマネジメントがある。社員のプライベートのどこまでを会社がケアするかを考えるのが大事になってくる段階まで来た、という話をしました。
山田:人を採るときにどうメッセージを出すかも重要だと思います。田中さんの会社は、広告技術をアピールポイントとして打ち出していますよね。
田中:僕たちは、広告をやりたいというだけの人は採りません。もちろん、一番伸びている仕事ではありますが、広告だけをやりたいなら他にも会社はたくさんある。それよりも僕たちのビジョンや文化を見てほしい。
特に僕はブログを書いているので、採用候補者とは、僕のどの記事がどう刺さったか、という話しかしません。もちろん、一次や二次の面接ではいわゆる普通の質問もします。ですが、最後はそれしか見ないです。
面接で必ず質問することは?
山田:候補者に必ずする質問とか、ここを見ると間違いがないというポイントは、ご経験のなかでお持ちですか?
田中:それを言ってしまうと候補者がみんな合格してしまうので……(笑)。
山田:では、大ざっぱに、差し支えない範囲でぜひ。
田中:完全に土俵をずらした質問をしますね。普通だったら面接でこんなこと聞かれないだろう、という質問をしたときに、見えないものが見えてくる。
たとえば、「お父さんやお母さんと過ごした時間で、一番楽しかった思い出を教えてください」と聞くと、自分の親がいかに自分を愛してくれたかという、すごくいい話を聞けたりします。そうすると、ああ、この人は愛されてきたんだな、それがちゃんとわかっているんだな、というのが見えてきて、最高ですね。
山田:角川さんは、どうでしょう?
角川:人生の岐路に立ったときにどういう意思決定をしてきたかを深掘りすることはよくありますね。
就職面接は、その人の価値観とか将来の展望が当社と噛み合うかを確かめる「お見合い」の場なので、深いところですりあわせができていないと、入ったけれどすぐやめる、ということにつながってしまう。ですから、それが最も見えてきそうな、転職なり就職なり結婚なり、意思決定の重要なところでどう判断したかを掘っていきます。

池見:横浜国立大学の服部泰宏先生が進められている「採用学」という研究で、こんな報告がありました。人間による面談を4回やって採用したAさんと、適性テストを4回やって採用したBさん、3年後のパフォーマンスはどちらが良かったかを検証した研究なのですが、実はBさんのほうが良かった。
とすると、採用に関しては、ミッションやビジョンを軸にして人間の基準で採用していくのと、Googleのように質問内容や採用設計をしっかり分析・定量化して、自分たちのワークスタイルや文化にフィットさせていくやり方の、2パターンあるのかなと思います。
社員からの紹介をどう増やすか
山田:『ワーク・ルールズ!』のなかで、良い人材を採用するのに一番好ましいやり方と言われていたのが、社員による「紹介」です。ただ、その紹介が少なくなっていることに課題を感じていると、著者のラズロ・ボックさんが書いています。皆さん、紹介はけっこうありますか?
佐々木:あります。エンジニアはほとんどそうですね。最近、マネジャーごとに目標を設定しました。
山田:軋轢が生じたりはしませんか?
佐々木:そういうケースも、あるにはあります。ただ、最初はカジュアルに話をする機会を設けたり、というところから始めるようにしています。
その段階で、フィットしないなと自分が感じたら、たぶん相手も同じようにフィットしないと思っているケースが多い。採用という言葉は一方的に選ぶという響きがありますが、実際は双方のマッチングだと思っています。
角川:うちはその点、苦労しているほうだと思います。たとえば、エンジニアはなかなか友人・知人を紹介しようとしないので、紹介制度をつくってみたりしています。うちが良い会社だと思わなければ紹介したいとも当然思わないので、文化づくりとか社内制度を整え始めているというのが、正直なところですね。
飲み会が会社のトーンを決める?
山田:20年ほど企業の取材をしてきた経験では、企業の形質は社長が酒を飲むか飲まないかとか、飲み会をどれだけ重視するかとか、そういうところでけっこう変わる面があると思っています。特にスタートアップにはそういう傾向があるな、と。
オフィスですべてを決めるか、あるいは裏側でも評価するかというので変わってくる面があると思いますが、佐々木さんはどうでしょうか?
佐々木:面白い考えですね。創業したてのころは、僕たちはみんなで毎日飲みに行っていました。それこそ夜中にラーメン屋で語り合うということばかりしていた。でも、最近はまったく違っています。
佐々木:チームワークを重視するなかで、お互いのバックグラウンドや考え方をよく知っていることが重要になるので、それを語り合うような会を、チームごとにたまにやります。ただ、それはお酒なしで昼間にやります。
会議中でも、自分のことをきちんとオープンにして議論を進めていくことが大事だと思っています。お酒なしで語り合うのは、そのためのトレーニングでもあります。お酒を飲んだからやっと自分について話し出せる、というのではダメだと思いますね。
昼間の会議室で、お酒なしで、とはいえお菓子などを少し食べながら、自分の生い立ちについて話をしたり、人生のなかで味わってきた幸福や苦難などについて話し合います。
山田:宗教に近いところがある?
佐々木:そういう面もあるかもしれません。しかし、チームワークをつくっていくうえでは、すごく大事なことだと思います。元Google社員で、いまはUberに移籍したレイチェル・ウェットストーンさんが、「Googleというのは会社ではなくてムーブメントなんだ」と言っています。僕はこの言葉が大好きです。
ムーブメントというのは、たとえば学生運動のようなものですよね。そういう会社をつくりたいと僕は思っています。一緒に闘っていく仲間としっかり心でつながっていたい、そして、そういうところをお酒に頼らない、というのが重要だと思っています。
山田:田中さんのところは離職率が低いですね。コミュニケーションに何か秘密があるのでしょうか?
田中:僕は引っ込み思案で社外の方と会食するのが苦手なので、ひたすら社員とお酒を飲んだり、食事をしています。たとえば中途採用の人とは入社1カ月、3カ月、6カ月、1年といった節目に、一緒にごはんを食べたりしています。週に3回は社員と飲みに行っているのではないでしょうか。
山田:飲み会の場で何か決めることはありますか? 飲んでいるときに、「よし、それやろう」ということは?
田中:それはありません。「最近彼女できたの?」といったプライベートな話しかしないです。
山田:社員に不幸があったらサポートして、彼女がいるかどうかもサポートして、ということですか。
田中:紹介サポートまではしませんよ(笑)。
面接官を鍛える方法
山田:会場の皆さんからの質問は、いかがでしょうか。
参加者:佐々木さんは、面接官のトレーニングをされているということでしたが、具体的にどんな取り組みをされているのでしょうか。
佐々木:僕たちがどういう採用基準を持っているか、また僕たちは何を重視しているのかということを、徹底的に話し合って共有します。そして、「この質問は良かったね」といった感じで、面接時にあった具体的な事例も共有します。
佐々木:それから、面接のフィードバックは必ず全員に書いてもらいます。経験の少ない面接官は、より経験豊かな面接官が書いたフィードバックを読んで、どうしてこう感じたか、こう考えたかを聞いていく。それを繰り返しているうちに、だんだん目線が合ってきます。
精度を上げるには、場数を踏むしかありません。場数が重要ですから、面接官として自分が出したフィードバックに対して、別のベテラン面接官からフィードバックを受けるということを定期的にやることがとても大事です。
それから、フィードバックのフィードバックは、各面接官がフィードバックを出した後で行います。不十分であれ、先にフィードバックを出してもらう。そうしないと、声が大きい面接官の意見に別の人たちが流される、ということになりかねないので。
あなたのザ・ベストって誰?
参加者:田中さんに質問です。社員紹介を活性化するような取り組みをされておりましたら、それを教えていただけますでしょうか。
田中:社員紹介は、僕らもうまくいっているわけではありませんが、多いほうだとは思っています。社員に、「転職しそうな人を紹介して」とただ伝えても、誰も紹介してくれません。そこで、「転職するかどうかは定かでなくていいから、オフィスに遊びに来てって気軽に話せる友だちがいたら、呼んでみてよ」と言っています。
それが、「この先1年ぐらいは本当に転職意欲がない」という人でもいいと思っています。まずは、候補者のリストをつくるところから始めないと。転職してくれそうな人をいきなり紹介してもらうのは、たぶん無理だと思いますね。
角川:社員紹介で成功したやり方が1つあります。「ザ・ベスト」という企画です。これは、社長が社員に対して、「あなたのザ・ベストって誰?」と聞くのです。転職を考えているかとか、そういうことは言わずに、とにかく「ザ・ベストって誰?」と聞くと、「絶対転職しないと思いますが、前の職場の誰々さん」というように名前が挙がるのです。
それで、その人に会わせてほしいと伝えて、いきなり社長が会うようにします。うちの社員から見たベストですから、前段階の面接は絶対通る。ということは、面接不要でいきなり口説きから入ってもいい。
相手側からしても、いきなり社長が会いに来るということで、会う時間をつくってくれる。普通のアプローチだと、「可能性はないね」という段階から始めなくてはいけない相手でも、意外とこのやり方でうまくいったりすることがありました。
週3日労働を受け入れるか?
参加者:私が勤めているIT企業では、今後新世代のミレニアルズが増えるから、そのミレニアルズをいかに魅了するかが大事だ、という話をしています。前の世代の人たちに比べると、私生活も大事にしつつ、でも仕事もしたいという世代のことです。
アメリカでは、ミレニアルズへの対応が重視されているようですが、登壇者の皆さんは、最近の若い人は価値観が違うなってお感じになることがありますか。もしあるとすれば、それに対してどのように対応していらっしゃるのかを、うかがってみたいです。
佐々木:僕たちは以前、「ゆるい就活」というイベントをやったことがあります。毎日でなく週3日働いてください、というようなものです。このイベントで集まった方を実際に採用したところ、すごく優秀な方でした。
今日も、週3日で働きたいという人が会社に来ました。とても優秀な人です。そうしたことからも、ライフスタイルとしての週3日労働という働き方は、当然ありだと考えています。
池見:「最近の若い者は……」というフレーズがありますよね。これはエジプトのピラミッドの中にも書かれているそうです。はるか昔から、若い人たちのことを年配者はそう思っていたのですね。
いまのお話で僕が思ったのは、HR(ヒューマンリソース)事業会社として、groovesは多様性を受け入れざるを得ない、ということです。
池見:これから日本の人口、生産年齢人口が減っていくなかで、地理的制約や性差、ワークスタイルなど、いろいろな違いのすべてを受け入れてでも、優秀な人を採用していかなければならない、そういう時代が来ていると感じています。
『ワーク・ルールズ!』を読んで、試してみたいこと
参加者:『ワーク・ルールズ!』を読んで、さっそく自分の会社で試してみたという施策がもしあれば教えてください。また、社員がそれにどう反応したかということも併せて、教えていただきたいです。
当社のことを先に申し上げると、マネジャーが全社員に対してジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を示すということを始めました。現場からすると、社員候補を紹介してくれと言われても、会社がどんな人を欲しているのかわからないというのが実情のようでして。
『ワーク・ルールズ!』のなかに、各チームのマネジャーが全社ミーティングなどの機会に「こういう人がほしい」と言ったほうがいいというような記述があり、それを試してみました。
角川:うちもジョブ・ディスクリプションをやっています。でも、本の中で僕らが面白いな、と思ったのは、ちょっとしたきっかけを与えて思うような行動をとってもらえるように仕向ける話(ナッジ)です。
何かをさせたくないときに、「何々をしてはいけません」という張り紙をするのではなく、それをしないように自然に仕掛けるというものです。
たとえば、僕らの会社ではナッツを食べ放題にしていて、1日4キロ消費します。この費用として月間30万円かけていますが、これを抑えようと思ってナッツのカットを小さくしました。やり始めたばかりで、まだ効果の検証には至っていませんが……。
佐々木:具体性に欠けるお話をして恐縮ですが、『ワーク・ルールズ!』に書いてあることを突き詰めると、結局メンバー1人ひとりが、やらされているのではなく、やりたいから仕事をやっているというところがある。そうした「やりたいからやる」という環境をつくることが、すごく大事だと思います。
ですが、実際にそういう環境をつくるとなると、マネジャーの負担が恐ろしく大きくなるでしょう。しかもマネジャーは、権威に頼ってはいけないという制約がある。
『ワーク・ルールズ!』を読んでから、「大変だ」と言ってくるマネジャーに対して、「そう、大変なんですよ、あなたの仕事は」と返していいんだ、と思える強さができたように思います。本書は、その方向性を貫こうと思うきっかけをくれたというのはあります。
田中:僕は『ワーク・ルールズ!』を読んで、悔しく、かつ気持ちが悪くなってしまいました。この著者がまだ考えていないことを考えていかないと、先がないように思えたんです。悩ましいですね。
いろいろ似たようなことをやっているようなので、「このやろう!」と僕は思ってしまいました。
質問の答えにはなっていないかもしれませんが、「この人たちがすでにやっていることは、俺はしない」という気持ちにもなり、なぜか燃えてきたという感じでした。
池見:僕らは、会社の売り上げや粗利などをすべて公開しています。アルバイトの人も含めて、24時間誰でも見られるようにしています。良いことも悪いことも、会社の状況をすべて公開するというのが、僕らの方針です。こうした情報公開にはデメリットもありますが、『ワーク・ルールズ!』を読んで改めて、これはやって良かったし、これからも続けていきたいと思いました。
また、この本を読んでこれからチャレンジしたいと思っていることが2つあります。1つは、Googleが取り組んでいるような定量的・科学的な人事を、他の会社の人事部門の方も簡単に実行できるようなサービスをつくりたいということです。
もう1つは、人事という業務にエンジニアをきちんと巻き込みたい、ということです。Googleはエンジニアベースの会社なので、本書には、エンジニアの観点から見た人事施策や改善案がたくさん書かれています。
それに対して、僕らの会社ではこれまで、エンジニアが強くかかわるのは開発だけでした。マトリックス組織のようなかたちで、人事のプロジェクトや改善項目をエンジニアと一緒に解決していくことに可能性を感じました。
山田:皆さん、お忙しいなか、最後まで議論に参加してくださって、どうもありがとうございました。