雇用の荒廃/「求人詐欺」の対策強化を

総合雇用の荒廃/「求人詐欺」の対策強化を

雇用現場の荒廃ぶりを裏付ける統計と言えないか。
ハローワークの求人票の労働条件が実際と食い違うという相談が2014年度は約1万2千件に上り、前年度を3割上回ったことが厚生労働省のまとめで分かった。

 このうち3分の1以上の4360件で、「求人票より低い賃金で働かされた」「始業時刻より早い出社を求められた」といった食い違いが実際に確認されたという。
求人側の姿勢が問われるのはもちろん、公的な機関が扱う求人票の信頼性、ハローワークの役割や位置付けにも関わる深刻な問題だ。
ハローワークの求人票がこの実態であれば、インターネットや広告、企業説明会などを通じた求人情報の真偽も大いに懸念される。食い違いはさらに深く、広がっていると受け止めざるを得ない。
雇う、雇われるの関係で求職者はどうしても受け身にならざるを得ない。弱い立場につけ込む虚偽や誇大な求人情報に釣られ、やめることもままならず泣き寝入りしている人も少なくないはずだ。
就職や雇用の入り口である求人の荒廃は、長時間労働や賃金未払いなどで社員やアルバイトを酷使するブラック企業の問題にも直結する。
「求人詐欺」とも指摘される虚偽の記載が、ハローワークの場で堂々と流通する現実は放置しておけない。事態を重く見て、早急に監視と対策強化に取り組むべきだ。
求人票の問題は以前から指摘されてきた。求人で労働条件を明示することは職業安定法に定められた義務だが、虚偽の内容で求人票を出した企業を処罰する規定はない。
最低賃金を下回る賃金の提示など明確な法律違反が分かるケース以外は、求人票の受け取りを拒否したり、強い指導に踏み込んだりすることはできない、というのがハローワーク側の言い分だった。
紹介窓口業務の限界とも言えるが、非正規労働者の増加、ブラック企業の社会問題化など雇用をめぐる情勢が大きく変動している中、従来の感覚で役割を捉え、対応を続けている場合ではない。
悪質な求人の相談を受け付ける専用ホットラインの広報と活用に力を入れ、実態把握をさらに進め、監視を強化する取り組みが求められる。
ことし9月に成立した青少年雇用促進法には、法令違反を繰り返す悪質な企業の新卒求人をハローワークが拒否できる規定が盛り込まれた。
社会的関心が高まっている今こそ新法が目指す方向性をさらに進め、求人情報提示の段階から働く側の保護を優先できるよう、関連法の規制強化を急いでもらいたい。
ブラック企業問題が注目されるきっかけになった居酒屋チェーン、ワタミグループをめぐる過労自殺訴訟は先日、会社側と創業者が謝罪し、1億3千万円の賠償金を支払うことで和解が成立した。
従業員を使い捨てにするような企業姿勢が社会的な批判を浴び、経営に深刻な影響が出る事態にまで発展した。
労働者の権利軽視は厳しい社会的制裁、法的制裁につながることを全ての企業関係者は肝に銘じるべきだろう。