求人不足の失業23年ぶり解消 7~9月、日銀試算

総合求人不足の失業23年ぶり解消 7~9月、日銀試算

求職者数に対して企業の求人数が足りない状態が解消したことが、日銀の試算でわかった。今年7~9月平均の完全失業率が、求職者と企業の条件が合わないために起きる「ミスマッチ失業率」を下回った。逆転は1992年7~9月以来23年ぶりで、職種など条件にこだわらなければ働ける状況だ。日銀は企業の人手不足感が強まり賃金や物価を押し上げていくとみている。

日銀は10月末に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、「ミスマッチ失業率」を推計した。労働力人口に対する失業者の割合を示す完全失業率は理由によって2つに分かれる。求職者数に比べ求人数が足りないことが理由の失業率と、求人があっても職種などの条件が求職者と合わないため起きるミスマッチ失業率だ。

7~9月平均のミスマッチ失業率が3.390%だったのに対し、完全失業率は3.367%だった。理論的には、企業の求人数が求職者数を上回っている。日銀の黒田東彦総裁は6日の講演で「労働市場は(働く意思と能力がある人が全員仕事に就いている)完全雇用と言ってよい情勢にある」と指摘した。

企業の求人数が求職者数を上回ると、働く人の賃金は上がりやすくなる。企業が他社より高い賃金を払って必要な人材を確保しようとするためだ。黒田氏も「労働需給が引き締まった状態が続き、賃金にも上昇圧力が生じる」とみる。

賃上げで家計の所得が増えれば消費は活発になる。消費拡大で業績が好転した企業は賃上げや仕入れコストの転嫁がしやすくなり、物価全体も上がりやすくなる。

企業の人手不足感の強まりは、長い間失業している人の減少にもつながっている。日銀の試算によると、失業期間が1年以上に及ぶ長期失業率は直近データとなる今年4~6月に1.15%を記録。比較できる2000年以降で最低となった。長期失業率が最低を更新するのは8年ぶりだ。

景気回復に労働力人口の減少も重なり、求人不足による失業はほぼ解消した。ただ、ミスマッチ失業率は低下傾向とはいえ3%台前半とバブル経済期より高い水準のままだ。

第一生命経済研究所の星野卓也エコノミストは「大学卒業者らは事務職への就職を希望するが、生産拠点の海外移転やIT(情報技術)の普及で事務職の需要はなかなか戻りにくい」と指摘する。一方、高齢化に伴い医療・介護や建設業は人手不足が続いている。

ミスマッチ失業率の高止まりは潜在成長率を押し下げる要因にもなりかねない。規制緩和や職業訓練の強化などでミスマッチを減らす取り組みが求められそうだ。