総合非正規比率4割超え:政府の正社員化要請は期待薄々 〜 政府の役割は社会保障・労使制度改革
一昨日付けの毎日新聞ネット記事や読売新聞ネット記事でも既報の通り、厚生労働省が今月4日に発表した「平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」によると、非正規労働者の割合は、昨年10月1日時点で40.0%で、初めて4割を超えた〔資料1〕。
<資料1>

(出所:厚生労働省「平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」)
上記の発表と同じ日、厚労大臣名で、全国中小企業団体中央会に対して、非正規労働者の正社員転換・待遇改善に向けた取組に関する要請がなされた。その趣旨は次の通り。
(1)非正規労働者は、正規雇用労働者と比べ、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発の機会が少ないといった課題。非正規労働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善を強力に押し進めていくことが重要。その結果、雇用の質が高まり、生産性の向上が期待。
(2)不本意ながら非正規労働者として働く方への対策を強化する観点から、①より安定した雇用を実現するために、「労働契約に期間の定めがない」、「所定労働時間がフルタイム」及び「直接雇用」という要素を満たす「正社員」への転換を図っていくこと、②非正規雇用で働く方々の希望等を踏まえながら、勤務地限定、職務限定、勤務時間限定などの「多様な正社員」への転換を推し進めていくこと、③希望や意欲・能力に応じて賃金、教育訓練、福利厚生等の面で待遇の改善を進めていくことが重要。
(3)政府としても、ハローワークによる正社員就職の実現や、正社員転換、職業訓練等に取り組む事業主に対するキャリアアップ助成金による支援など生産性向上に向けた能力開発の取組等を行っているところ。各企業も、自社の就業実態を勘案しながら、非正規労働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善に資する取組を行うことが望まれる。
(4)貴団体におかれても、この取組の趣旨を御理解いただき、傘下団体・企業等に対する周知啓発に向け、何とぞよろしく。
政府も、こうした要請に効力があるとは決して思っていないだろう。経験的には、全く効果はない。この程度のことしかできないのが、今の政府の限界だが、これは仕方のないこと。正規比率を増やせ!などと政府が企業団体や企業に強制できるわけがない。
経済全体が底上げされることは、経済構造上からも考えられないし、中小企業や非正規労働者にまで波及するためには好況が相当期間継続していく必要がある。現実味のある経済見通しを考えると、どんなに頑張ってもせいぜい『緩やかな成長』しか見越せない。それに見合った政策転換を目指すことが必要となる。
マクロ労働市場の構造は、徐々に変化してきている〔資料2~4〕。正規比率を高める“是正”に努めるのではなく、この実態に合った社会保障や労使交渉に係る制度改革を行っていくしかない。経済社会実態は制度を慮ったりはしない。だから、制度が経済社会実態に追従していかなければならない。
そのためには、財源が必要となる。政府が企業団体や企業に要請すべきは、そうした財源確保のための制度改革に関する理解と協力。政府は、それをきちんと行った上で、所要の法律改正案を国会に提出し、国民の審判を仰ぐべきだ。政府の行うべきことは、そういうこと。実は、政府全体としてはこれを重々認識しているはずだ。
しかし、それでもなかなかできないのは、官僚の意識の問題というより、政治家の意識の問題。特に与党の政治家たちに強い危機感がなければ、こうした大きな改革はできやしない・・・。
<資料2>

(出所:厚生労働省「「非正規雇用」の現状と課題」)
<資料3>

(出所:厚生労働省「「非正規雇用」の現状と課題」)
<資料4>

(出所:厚生労働省「「非正規雇用」の現状と課題」)