日本女子大の「主婦再就職教育」がスゴかった ほぼすべての修了者が再就職できる!

女性雇用日本女子大の「主婦再就職教育」がスゴかった ほぼすべての修了者が再就職できる!

ブランクがある主婦は、いったいどのような武器を持って就活に挑めばよいのだろうか。再就職支援に携わるプロに、主婦にとっての「本当に役立つ資格とスキル」について聞いた。

今回、話を聞いたのは、日本女子大学(東京都文京区)。今、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」の主人公が創設に尽力した日本初の女子大として話題だが、同大学がいち早く取り組んだのは女子教育だけではない。実は、「女性のキャリア教育」の先駆けでもあるのだ。

就職希望者20名全員が仕事を得た

同大学は、2007年以来、離職女性の再就職支援を行っている。そのプログラムの名は「リカレント教育課程」(以下、リカレント)。就業経験のある4大卒女性(年齢不問)を対象とした1年間の通学課程で、2015年9月までの全入学者は399人に上る。

全入学者の平均年齢は38.9歳。約半数が主婦であり、小・中学生の子どもがいる人も多いにもかかわらず、就職実績が驚異的だ。全修了生の就職希望者は約8割で、そのうち79.1%とほぼ全員が就職をかなえているのだ。今年3月修了者(14回生)の就職率は、100%だった。修了生23名中、就職希望者20名全員が仕事を得たのである。

ちなみに、例年、中堅企業で採用されるケースが多いが、14回生は国公立大学や独立行政法人などに就職した人が多かったそうだ。

この就職力の秘密は、カリキュラム内容にありそうだ。ビジネスの現場で必須とされる「英語」、「IT」、そして履歴書の書き方や面接対策などを学ぶ「キャリアマネジメント」が必修科目となっている。特に今、重要なのは「IT」だという。「再就職したいなら、まずはIT。30~50歳代でITができないと採用してもらうのは厳しい」と、生涯学習課リカレント教育課程の茂木知子氏はアドバイスする。

では、どのくらいのレベルを狙えばよいのか。リカレントでは、必修科目の「ITリテラシー1・2」を通じてしっかり勉強し、例年ほぼ全員がマイクロソフト認定のMOSエクセルのスペシャリストに合格するそうだ。中にはエキスパート(上級)に合格する人もいるという。選択必修の「ITリテラシー3」まで取れば、専用ソフトがなくてもHP作成が可能となる。

この技術を生かし、自作のウェブサイトを企業に見せ、採用が決まった人もいるそうだ。今年の春に大学の研究室に採用が決まった58歳の女性も、この授業のおかげで就職直後に任されたHP作成ができたという。リカレントではいずれも就活の直近で習得するため、「最新のIT技術を勉強した証」として企業にPRできる。

役に立つ「リスクマネジメント」

選択必修科目も資格準備講座が充実している。特にリスクマネジメントに関する授業は「勉強してよかった」「役立った」と評価が高い。

一つは、「記録情報管理者資格準備講座」で、総務や人事関連への就職に生かされている。そしてもう一つは、「内部監査の実務講座(公証内部監査人準備講座)」だ。最終的には実務経験がないと取れない資格だが、この授業で学んだことが評価されて企業の内部監査室に採用となり、現在正社員として働いている女性もいるという。

「日本企業はリスクマネジメントの分野への対応が遅れているので、そこまで手が回らない中小企業などでこうした知識は重宝されるのではないか」と、生涯学習センターの高頭麻子所長は話す。いずれも、今非常に社会的ニーズが高い資格であり、資格は取らずとも勉強しておけば、どの会社に入っても「学んでよかった」と思う知識だという。

このほか、「貿易実務」受講者の中には、在籍中に貿易実務検定B級に合格し、貿易関係の仕事に正社員で採用された人などもおり、資格を生かして再就職に成功する修了生は多い。

採用する側は、資格をどれだけ重視しているのだろうか。ニチレイビジネスパートナーズに話を聞いてみた。同社は、主にニチレイグループの給与計算や人事記録を行っており、事務職が中心。中途採用が基本で、これまで人材紹介会社を通じてスタッフを確保してきたが、今春初めてリカレントに求人を出し、48歳の女性をフルタイムの契約社員として採用した。

企画開発グループの渡辺龍氏は、「関連業務の経験に加え、簿記や社労士の資格を有し、PCスキルも高かった点」を評価したといい、資格についてはこう話す。「資格の有無では判断しないが、意欲や前向きに学ぼうとする姿勢のベンチマークになる」。また、「自腹で学ぼうと踏み出したことはスゴイ」と言い、リカレントへの入学自体も資格と同様に強い意欲の表れとして評価している。このほか、同様に重視したのは、「求める人物像であるか」(渡辺氏)。真面目に業務にコツコツ取り組む人材を求めており、マッチしたので採用を決めたそうだ。

実は今、このように本人の頑張りや人柄を重視する企業は同社だけではない。茂木氏も、「企業の規模にかかわらず、採用基準が年々人物本位になっている。努力や実力を重視する傾向にある」と感じている。しかも、女性活躍推進という時代の流れもあってか、最近リカレントでは、雇用形態は様々だが、フルタイムの採用が決まりやすくなってきているそうだ。
これから働き始めたい主婦には嬉しい話ばかりだが、茂木氏は「ブランクのある主婦が再就職するのは簡単なことではない」とくぎを刺す。

特に、人気の事務職を目指す場合は圧倒的な勉強量が必要だ。リカレントでは3~4つ資格をとって卒業する人はザラ。就職者の73.5%が事務職に就いているが、これは1年間トコトン勉強した成果なのである。

操作テクニックだけでは再就職できない

前述したIT系の勉強も決してラクではない。IT技術の変化は目まぐるしく、若かりし頃に情報処理系の資格を取得していても、今や通用しない場合が多い。社内の専用ソフトで仕事をしていたため、エクセルやパワーポイントにふれないまま今に至っている人も少なくないという。40代後半の女性の中には、ウィンドウズやマウスを使ったことがない人も。

こうした”浦島太郎状態“からの出発というだけでもツライが、リカレントは授業内容も濃いので受講生は皆ハードと感じるようだ。PC スキルを学べる講座の多くは操作テクニックが中心だが、実際は資料作成やプレゼンの力をセットで求める企業も多い。そのため、操作法にとどまらず、仕事で必要なスキルも教えるという。

著作権や情報漏えい問題といった情報倫理の知識を授けることを始め、「ロジカル思考を鍛えるため、わざと難しい課題を与える」(「ITリテラシー2」担当の藤田智子先生)。入社して難しい仕事を与えられてパニックになっては困るからだ。

たとえば、パワーポイントの操作を教えた後は、「信頼できるウェブサイトから何らかの元データを探し、それを分析してグラフなどを挿入したパワーポイント資料を作りプレゼンする」といった課題を出すそうだ。

ウェブ上で受けられるテストも、自分で調べて考えてほしいので、どこを間違ったかは教えるが、解説付きの回答は修了直前まで与えない。藤田先生は、「常々、わからない時は声をあげろと言っている。意思表示は会社でも重要」と言い、社会人としての態度も教育している。

このほか、「先生に質問する中で人に何かを聞くというスキルも磨かれる。仲間との交流を通じ、主婦同士とはまた違ったコミュニケーション力も身につく」(茂木氏)。このように、体系的かつ実践的な教育・指導が受けられるのが、通学課程の良いところ。独学と通学で迷っている人は、参考にしてほしい。

高年齢でも希望が持てる再就職支援

合同会社説明会は例年10社以上の参加企業などがあり、ブースでは人事担当と話すことができる。ここでスカウトされるケースも

リカレントの高い就職率は、充実した再就職支援によるところも大きい。最大の恩恵といえるのが、独自求人だ。年齢が高くなると書類で落とされがちだが、独自求人に応募すれば「身元保証」をしてもらえるので一般応募よりも有利となる。修了生の質の良さから求人リピートする企業も多く、前述のニチレイビジネスパートナーズはこう話す。

「重要な採用チャネルの一つになった。人材紹介会社は、年収の3割から3.5割を採用時に一括払いするのが相場だが、リカレントはこの紹介料がない。人材紹介会社が連れてくる人と遜色ない人を無料で採用できる」

修了生との懇話会やセミナーなど様々な再就職イベントがあるのも特徴。とりわけ年2回開催される合同会社説明会は、企業と直接交流ができる貴重な場だ。中にはここでスカウトされる人もいるという。

受講料は1年間で24万円(入学金2万円が別途必要)。入学機会は4月と9月の2回だったが、2016年4月からは、4月開講・翌年3月修了のみの募集となる。詳細は11月上旬にHPで案内があるので、再就職の“武器”を手に入れたいと真剣に考えている人は、チェックしてみるといいだろう。