つらい「7K職場」が劇的改善した3つの理由 30歳までに女性の7割が辞める会社が激変

女性雇用つらい「7K職場」が劇的改善した3つの理由 30歳までに女性の7割が辞める会社が激変

こんにちは。女性活用ジャーナリスト/研究者の中野円佳です。この連載も12回目を迎え、今回で最終回となります。

ついに連載最終回となりました!

拙著『「育休世代」のジレンマ』が世の中に出てから、丸1年が経ちました。本を出して数カ月経った頃に、「女性たちから共感の声は得られても、結局彼女たちのいる会社が動いてくれないと多くの問題が解決されない」と感じました。

私が約8年務めた新聞社を辞めた理由のひとつは、より広く女性と育児とキャリアの問題について、世の中に発信して実際に解決につなげたいという思いがあったからです。この連載も随分多くの人に読んでいただくことができ、感謝しています。

退職してからのこの半年は、実際に日本のカイシャが「女性活用に失敗しない」状態になるには何が必要なのかということにも真剣に向き合ってきたつもりです。チェンジウェーブという会社のメンバーとして、企業側からの女性活躍推進やダイバーシティ推進関連のご相談を受けてきました。

その中で感じたのは、結局のところ女性だけでなく会社全体で「働き方」の問題に取り組まないと、効果は限定的にしかならないだろうということです。今回は、働き方の問題と女性活躍の関係、そして働き方改革に成功している企業の事例とそのポイントを紹介したいと思います。

女性の離職率や登用率が低いのは「働き方」の問題

女性が会社であまり活躍できない理由を掘り下げていくと、主に次の3つに整理できることが多いと感じています。

① 結婚や出産といったライフイベントが発生した後に、今のような働き方は続けられないと感じ、それが離職につながっている
② 離職はしていなくてもその不安により、長く働き続けるイメージが沸いていなかったり、管理職になりたいと思えなかったりして、女性自身の登用に対する意欲が低い
③ 上司から見ても意欲が低い・責任感がないと見えることなどによって、成長機会が男性に比べて少なく、実際に登用されるだけのスキルを持ち合わせていない 

こうやって見ていくと、会社側の働きかけなどで一時的に女性の意識やスキルを引き上げたとしても、①のライフイベント後は働き続けられないような働き方である限り、構造的な問題は変わらないと感じます。

企業は、女性活躍推進新法で女性管理職の数値目標を掲げることを促されています。今後、その目標を達成すること自体は、もしかしたらそう難しくないかもしれません。でも、構造を変えずに目標を何とか達成しても、上がれなかった男性からのバッシングもあり本人たちも辛いでしょうし、その後に続く女性も出てこない可能性があります。一度目標は達成しても、再び数値が下がってしまうということになりかねないと感じます。

女性の意識改革や、スキルアップ研修などを効果的に導入することは重要ですが、根本的には「働き方改革」を併走させないと真の女性活躍は達成できないと感じます。ただ、注意が必要だなと思うのは、ここで「女性が長く続けられるために働き方を変えよう」というロジックにすると「長時間働ける男性なども仕事を抑えろというのか」ということになってしまいがちです。

人材不足を肌で感じている企業や女性向け商品を売っていきたい企業は「女性が増え、活躍するメリット」を痛感していると思います。ただ、多様性そのものがもたらすイノベーションなどは実感しにくいこともあり、「何のために女性活躍を推進しないといけないのか」に納得できていない会社も多いと思います。

そんな中では、「働き方を変える」ことのメリットが、女性にもあるし、ほかの人すべてにもあるという方向性で、結果的に女性活躍推進の素地が作られていくことが理想だと思います。今日はその意味で成功している企業の事例を紹介したいと思います。

7K職場のあの会社が変わった!

私は新聞記者になったばかりの新人時代、IT業界を担当していたのですが、この業界は「3K(きつい、厳しい、帰れない)」どころか「7K」と言われていました。規則が厳しい、休暇がとれない、化粧がのらない、結婚できない…などが加わるそうです。

なので、2年前、「人を活かす会社ランキング」の上位にSCSKという社名を見つけたとき、一瞬目を疑いました。私が取材していた時期は住商情報システムとCSKが合併してSCSKになる前でしたが、7Kと言われたIT業界でこのランキングの上位に入るなんてことがあるのかと思いました。

実際のところを知りたいと思い、当時からお世話になっていた役員の方を含め、これまで何人かに取材をさせてもらっています。SCSKの残業削減に向けたさまざまな取り組みは、メディアで紹介されているのですが、月の残業時間は合併前の2008年の35時間から2014年度に18時間まで減少。有給休暇取得日数も平均13日から19日へと改善しています。

私はこの改革の成功要因を次の3つだと思っています。

取材に応じてくださった同社の福永哲弥専務は、「収益を追求する中で、業務改革を踏まえての効率性向上も考えられないと中間管理職として評価されないという認識は浸透したと思う。ただ、どうやって削減しなさいという、箸の上げ下げまで経営サイドや人事から指示をすることはしなかった。実際に自分の部署でどう収益を上げながら労働時間を削減するかは現場のリーダーたちが判断し、彼らが優秀だったから達成ができた」と評していました。

3つ目は、子育て中の女性やそのほかの制約ある社員を特別視せずに、管理職を含めた全社員を対象とし、働き方改革のメリットを全員が感じられる仕組みになっていたこと。これが非常に重要だったのではないかと思います。

当初、残業削減や有給休暇取得の目標に対して「本当にやるの?」「そんなこと言われても忙しいのに」と半信半疑だった管理職。彼らが動き出し、潮目が変わったのは改革を開始してから4カ月たった8月以降だといいます。

それまで、長期休暇を取るに取れなかった管理職が思い切って夏休みを取ってみると、自分がいなくても仕事が回ること、家に帰ると家族が喜ぶこと、リフレッシュした後に職場に戻ると生産性が上がると感じたこと、などを実感したとのこと。そこから管理職たちが部下を休ませること、早く帰すことに本気になっていったといいます。

女性の離職率が大幅に改善

SCSKでは、当初から「生産性」が必ず改善するという定量的な見込みがあったわけではありませんでした。でも、「人は財産」という考えのもとにこの改革を実行し、結果的に合併時から売り上げや利益は上がり続けており、1人当たり営業利益なども改善しています。

「生産性」の観点から言うと、システム会社が効率よく質のいいものを作ってくれるというのは、顧客企業にとっては「工数が減る」ということなので、顧客利益にも合致していました。システム会社にとって最も赤字につながりやすいのはいわゆるトラブル発生によって工数が想定以上にかかり、費用を回収できない「不採算案件」です。頭がフレッシュな状態でシステム開発に向かうこと、企業として時間がかかっている案件を早めに特定することなどが不採算案件を減らし、利益率を改善させた面もあるかもしれません。

売り上げが上がっているのは当然、景気動向や業界環境とも関係があるので、SCSKの利益が上がっているのが、残業削減や健康経営の効果だと結論付けることは難しいと思います。ただ、長期的に見て、コスト面でも明らかにSCSKに利益をもたらしているといえるのは「優秀な人材の採用・確保」でしょう。「人を活かす会社」として有名になり、内定辞退率や離職率が格段に改善しているそうです。

① 働き方改革が絶対に必要だというトップの強い信念

② 実際にどのように削減するかは部門ごとの裁量に任せるとしたこと
③ すべての社員がそのメリットを「実感」したこと

 

ひとつ目については、「人」こそが収益の源泉になるIT業界において、昼休みに自席で突っ伏して寝ている人がいる、トイレに入るのにも並ばないといけないなど明らかに生産性の低下につながっている状況が、親会社から就任した当時の中井戸信英会長兼社長(現SCSK株式会社代表取締役会長)を突き動かしたと言います。

中井戸氏のもと、本社移転、残業削減運動、健康増進運動などが進められますが、とにかくトップダウンが徹底しています。残業代を削減したいためにやっているわけではないというメッセージを伝えるため、残業削減目標を達成した部署にボーナスを出す、顧客企業や社員の家族に手紙を出すなど、トップのコミットあってのユニークな施策を打ち出しました

ある程度残業が減った2014年以降も手綱を緩める気配はなく、現在は残業が20時間、40時間…と目標よりも20時間超え社員が出るたびに、勤怠管理の承認プロセスが部長、本部長、最後は社長と上がっていく仕組みになっているそうです。これは現場の社員や管理職にとっては避けたい事態でしょうから残業削減をするインセンティブになりますし、それでも発生するときは、何かトラブルが起こっているということ。

結果的にそうした「異常事態」を上位層に報告することとなり、トラブルを早めに把握し、役員レベルで解決の手を打てるなど企業のリスク管理にもつながっているようです。

強制ではなく部門ごとの創意工夫も成功の要因

2つ目は、残業削減の方法について権限移譲をしています。強制的に一律の方法を入れるのではなく、現場の管理職が部門ごとの事情に合わせて創意工夫を促している点が成功要因ではないかと感じます。

実際に有効だった施策は、業務の見直しや会議の資料を作るときのルール策定などだったとのこと。人事が提案した施策以外にも現場から出てきたアイデアで効果が高そうなものを社内で共有するなどして残業削減の動きを横に広げています。

ちょうど企業合併があったこともあり、どこまでを社員が担い、どこからを外注先に業務委託するか、業務配分や評価制度も含めて見直すタイミングがあったこと、社員同士が意見を出し合いながらすり合わせていくフェーズだったのも幸運だったかもしれません。

取材に応じてくださった同社の福永哲弥専務は、「収益を追求する中で、業務改革を踏まえての効率性向上も考えられないと中間管理職として評価されないという認識は浸透したと思う。ただ、どうやって削減しなさいという、箸の上げ下げまで経営サイドや人事から指示をすることはしなかった。実際に自分の部署でどう収益を上げながら労働時間を削減するかは現場のリーダーたちが判断し、彼らが優秀だったから達成ができた」と評していました。

3つ目は、子育て中の女性やそのほかの制約ある社員を特別視せずに、管理職を含めた全社員を対象とし、働き方改革のメリットを全員が感じられる仕組みになっていたこと。これが非常に重要だったのではないかと思います。

当初、残業削減や有給休暇取得の目標に対して「本当にやるの?」「そんなこと言われても忙しいのに」と半信半疑だった管理職。彼らが動き出し、潮目が変わったのは改革を開始してから4カ月たった8月以降だといいます。

それまで、長期休暇を取るに取れなかった管理職が思い切って夏休みを取ってみると、自分がいなくても仕事が回ること、家に帰ると家族が喜ぶこと、リフレッシュした後に職場に戻ると生産性が上がると感じたこと、などを実感したとのこと。そこから管理職たちが部下を休ませること、早く帰すことに本気になっていったといいます。

女性の離職率が大幅に改善

SCSKでは、当初から「生産性」が必ず改善するという定量的な見込みがあったわけではありませんでした。でも、「人は財産」という考えのもとにこの改革を実行し、結果的に合併時から売り上げや利益は上がり続けており、1人当たり営業利益なども改善しています。

「生産性」の観点から言うと、システム会社が効率よく質のいいものを作ってくれるというのは、顧客企業にとっては「工数が減る」ということなので、顧客利益にも合致していました。システム会社にとって最も赤字につながりやすいのはいわゆるトラブル発生によって工数が想定以上にかかり、費用を回収できない「不採算案件」です。頭がフレッシュな状態でシステム開発に向かうこと、企業として時間がかかっている案件を早めに特定することなどが不採算案件を減らし、利益率を改善させた面もあるかもしれません。

売り上げが上がっているのは当然、景気動向や業界環境とも関係があるので、SCSKの利益が上がっているのが、残業削減や健康経営の効果だと結論付けることは難しいと思います。ただ、長期的に見て、コスト面でも明らかにSCSKに利益をもたらしているといえるのは「優秀な人材の採用・確保」でしょう。「人を活かす会社」として有名になり、内定辞退率や離職率が格段に改善しているそうです。

特に高かった女性社員の離職率については、女性新卒採用者の30歳までの累積退職者数の割合が2006年は70%であったものが、2015年には27%にまで改善。2013年には女性ライン職登用目標も掲げていますが、社員の女性からは「働き方改革をするという会社の本気度がわかったので、管理職になることも前向きに捉えられた」という声が出ていました

「うちの業界では働き方を変えるのは無理」と感じていた人も多いと思うのですが、特にきついことで知られるIT業界のSCSKが改革を成功させたことで、人材獲得競争に焦りを感じたほかの同業他社も動き出しています。業界や業種の固定概念を打ち破る企業が出てくると、世の中が変わっていき、女性活躍を阻む要因も払しょくされていくのではないかと感じます。

メンタルヘルス、生産性……

繰り返しますが、SCSKは、女性のためにこうした働き方改革を実施したわけではありません。最近いろいろな会社の方々とお話していると、実際に長時間労働は女性だけではなく、さまざまな人にネガティブな影響を及ぼしていると感じます。

男性でも家庭と仕事の板挟みになっている人は増えています。前提の働き方が変わらない中で時短社員が増えると、しわ寄せが残りの人たちに行って疲弊してしまうという問題もあります。

管理職の方からは、「育児中の人は全力で働けない期間の見通しがある程度立つけれど、働いている本人がメンタルヘルスなどを抱えたケースではより見通しが立ちづらく、必要な配慮も複雑になる」という声を聞きます。メンタルヘルスを予防し、すべての社員が生き生きと成果を出せるような組織にすることが、結果的に女性活躍も推進するということになればいいなと感じています。

「皆が基本的には18時に帰る」という社会が実現したら、多くの問題は自然と解決していくのではないかと感じます。この連載はひとまず終了しますが、引き続きさまざまな発信活動と所属企業のお客様支援を通じて、日本の会社の働き方改革、そして女性活用に貢献できればと思っています。またどこかでお会いしましょう。