総合アフリカ人材の徹底活用法、教えます 中国、インド企業も苦戦。決め手はソーシャルメディア
日本企業のアフリカ進出が加速している。
例えば、東アフリカの拠点、ケニアではホンダが二輪車の販売を強化するため現地法人を新設し、現地生産に取り組んでいる。また、「丸亀製麺」を運営するトリドールは外食店運営に乗り出し照り焼きチキンを売りにした1号店をこのほど開店。日清食品は長年研究を続けたアフリカ人の味覚に合わせた袋麺を発売した。
進出が加速する一方で、多くの企業が必ず直面するのが現地スタッフのマネジメントの難しさだ。「何も言わなくてもまじめに働く日本人」と同様の働き方を外国人に求めるのは危険だ。
そう言うと読者の方々からは「そんなことは分かっている」と返されそうだ。確かに、時間に正確でない、指示しないと動かない、残業は拒否するなど外国人社員のマネジメントで苦労した体験をしたり、聞いたりすることは多いだろう。
だが、アフリカ現地社員のマネジメントの難しさは想像を絶する。アジア新興国の比ではない。格段の差があると言っていい。その手ごわさには商売上手でしたたかだと思われているインド人や中国人でも苦戦しているほどだ。狐と狸の化かし合いの狡猾合戦が繰り広げられている中、「アフリカの発展のため、アフリカの人々と手を携えて事業をする」と崇高な理想を掲げるだけでは、格好のカモにされるのがオチだ。

今回はアフリカでビジネスする企業の心得を、ケニアでの経験と事例を元に解説していこう。
「君も必ずだまされる」と日本人社長が指摘
「蛇の道は蛇」ということわざ通り、アフリカではアフリカなりの戦い方が重要となってくる。そのためには以下、3つの心構えが必要だ。
- 必ず「だまされる」と覚悟せよ
- 「働かない」のが前提だと思え
- 情に流されてはいけない
まず、最初は「だまされる」だ。
のっけから現地人の悪口を言うようで心苦しいとは思うが、現地でビジネスをしたことがある人ならば、この現実は必ず痛感していることだろう。
正確には、ダマされるというよりも、彼らにはそんな悪気はない。例えば「妹が急に入院しておカネが必要だ」「親族の子供が学校に行くのにおカネが必要になった」など嘘か本当か分からない話で、給料の前払いを求めてくる。彼らからすれば、経営者をだまそうとしているのはではなく、言ってみて貰えるものなら貰っておこう、という感覚なのだ。
こうしたことが一般の従業員だけならまだ理解もでき、子供のような作り話だと、一蹴することもできるだろう。やっかいなのは欧米や日本に留学経験があり、高度な教育を受けグローバル企業で働いたピカピカの経歴があるエリートであっても油断できないことだ。
私自身、ケニアで現地エリートに投資をして、中古車の販売サイトを立ち上げたことがあるが、社長となったそのエリート自身が、投資したお金を私的に流用していた苦い経験がある。その事実は別の社員から給与の不払いが指摘されたことから発覚した。
投資前、ナッツの製造・販売会社「ケニアナッツ」をケニアで立ち上げ大成功した佐藤芳之氏に直接アドバイスをもらったことがある。その時に第一に言われた言葉が「必ずだまされるから覚悟した方がいい」だった。話を聞いてもピンとこなかったが、実際にアフリカでビジネスを始めて痛いほどよく分かった。
次の鉄則は「働かない」。これは想像を絶する。アフリカの多くの国では失業率が高く、仕事のポジションを得られる人は限られている。そうした中、職場を得て固定給を得られるようになるのは、ある意味、特権階級みたいなものだ。それならば、さぞかし一生懸命働くだろうと思いきや、これが大きな間違いだ。
「一生懸命働くフリを一生懸命にする」
これが実態だ。ケニア人は英語が公用語で英国式の教育を受けているため当然のことながら英語でのプレゼンがうまい。日本人からすればしっかりと理論的に話をしているように感じるし、こちらの言う英語も完全に理解する。だが、安心して仕事を任せていると、不思議なほど仕事の成果が薄い。
「誰に会って何を交渉して、こういう成果を上げてほしい」と事前に丁寧に説明をしても、思うような成果を上げてくれない。「交渉はしたが、相手が納得しなかったから早々に引き揚げた」などは、まだ、ましな方で、「相手に会ったが、指示した交渉を全くせず別の話をしてきた」とか、「(会っても全く意味のない)別の担当者を紹介され、その人にただ会ってきた」とか、「一度電話したら、アポを断られたので、あっさりそのままあきらめた」などという具合で、仕事が一向に進まない。
いや、これらもまだましな方で、アポ入れ自体しておらず「指示されたことは記憶にあるが、忙しくてやっていない」などと平気で言い訳されることもある。
単にサボっているなら対処のしようがあるが、「アフリカ的」なサボりはかなりやっかいなのだ。
3つ目の鉄則は「情に流されない」こと。
これは「だまされる」と「働かない」にも関係することだが、相手の言うことを信じ、相手の状況を理解しようと思えば思うほど情に流されがちだ。例えば「親族の葬式で今日は出社できない」と言われることは日常茶飯事。一体、何人の親族がいるのだろうと思うほどのだましようなのだが、10回に1回くらいは本当なので、そうと分かるとつい情に流されてしまう。そしてまただまされるづけることになる。
以上、まずは鉄則について説明してきたが、ではどう対処すればこの鉄則を守れるのか。独特の手法が必要になるアフリカでのマネジメントについてさらに詳しく解説していこう。
出身部族を多様化する
まず、採用過程で意識すべきは社員の出身部族だ。アフリカの多くの国では複数の部族が混在する。例えばケニアだけでも大小合わせて30以上の部族がある。最大の部族はキクユ、次いでルオ、カレンジン、マサイ、ツルカナなどの部族がある。
ある意味、部族は国家のつながりよりも強い。ルワンダでのフツ族とツチ族の事件にも象徴されるように、時として同じ国家の中でも部族間が強烈にぶつかり合うことも少なくない。
だが、企業組織においては、あえて出身部族を多様化する方がマネジメントしやすい。
アフリカでトヨタ車の製造、販売など幅広い事業を展開する豊田通商でもこの手法を導入している。ケニアでビジネスセンスがあると言われるのは最大部族のキクユだが、キクユ族だけで固めない。また、ケニアにはインド系も多いので、経理など決済部門は彼らに任せるなど工夫している。
部族ごとに対立して組織がまとまらないようにも思えるかもしれないが、多様化することで社員同士が競争心を持ち、切磋琢磨するようになる。仕事をさぼっている、不正を働いているなどの報告もおのずと上がってくる。単一部族にしてしまうと、緊張が緩み、社員同士の関係が深くなり、悪事を働きやすい土壌を作ってしまう。
次にトップマネジメント方法だが、これには大きく2つがある。欧米型のトップダウンと日本型の協業だ。トップダウンは社員に細かくミッションを与え達成度を測り、一切の言い訳を排して冷徹に評価をする方法だ。
ケニア最大の携帯会社サファリコムを急成長させたマイケル・ジョセフ前CEO(最高経営責任者)は南アフリカ共和国出身のエンジニア。彼が取った管理手法がトップダウン型で、社員の隅々にまでその考えが行きわたっている。ジョセフ氏は「もし、社員が働かないならそれは上司の責任だ。上司が部下をマネジメントできないなら幹部の責任。幹部がだらしないならCEOである私の責任だ」と明言していたと聞く。
トップダウンは欧州の影響を受けているアフリカ各国では比較的受け入れやすい方式だ。だが、日本企業で徹底してトップダウンを実践できるところは少ないだろう。日本の本社自体が徹底したトップダウン型ではないので、海外支社がよっぽど独立していない限り、導入は難しいだろう。
そこで考えられるのが協業型だが、この導入には膨大な労力と時間がかかる。経営者と労働者が一体となり分け隔てなく働く。仕事の意味を懇切丁寧に説明し、公私に渡って面倒をみる。それでも働かない場合は経営者自ら、仕事をしてみせ手本となる。日本企業が得意とする手法で欧米先進国を始め、文化や価値観の近いアジア各国やある程度、社会が成熟している南米地域などでは一定の効果が期待できるだろう。
だが、3つの鉄則でも触れたようにアフリカでは全く効果がないと断言してもいい。経営者が労働者に寄り添っていけばいくほど、彼らはますます働かなくなる。「あなたがやるから、私はやらない」と判断されかねず、懇切丁寧に説明をすればするほど「あなたはこう言った。だけど、こうは言わなかった」と巧みな言い訳に使われてしまうだけだからだ。
また、公私に渡って付き合うなどとんでもない。仮に自宅に社員を招いたあと、その社員が不祥事などで会社を辞めてしまえば、何をされるか分からない。逆恨みをされ自宅を放火されるようなことも信じられないだろうが、実際にはよく聞く話だ。
協業型は理念遂行が目的のNPO(非営利組織)においては、日本人が実践している例もある。だが、根気強く、時間をかけて、徐々にスタッフのマインドを変えているのが実情だ。実際にNPOを主宰している日本人の話を聞くと「そこまでするのか」と涙ぐましい話ばかりで気が遠くなる。
では、日本企業はどう管理するのがいいのか。
私の結論は、できるだけトップダウンを徹底させた上で、言葉は悪いが密告制度を社内に導入することだ。現地の企業に投資をしてみて、先人たちから教わった手法の一つだ。
アフリカ社会は我々が想像する以上に、コミュニケーション伝達手段が発達している。携帯普及率は高く、特に日本企業が雇用するような社員については100%と考えていい。メールやフェイスブックなどのソーシャルメディアの普及度合いも高いし、また、そうしたコミュニケーションを日本人以上に好んでいる。
社員の管理でもこれを利用するのだ。
まず、人間関係を把握する。試しに重要だと思えるような情報をあえて特定の1人に流してみる。すると話が巡り巡って、意外な社員にまで情報が伝わる。これを何度かやっていると、誰と誰がどう繋がっているという人間関係マップが浮き彫りになってくる。
この人間関係を利用して、時には仕事の進捗を確認し、時には不正がないかチェックする。さきほどの部族間の多様性もきちんと確保すれば、経営者にとって不都合な情報が自動的に密告される状況を作れるのだ。
私もこれは実践した。例えば「働きの悪い社員がいるので、人員削減を考えている」という話を特定の社員に流せば、しばらくしてサボっている社員の情報がどんどん入ってくるという具合だ。
コネクションは重要、だが使い方に注意
アフリカでビジネスをする上でとても重要なのは現地の有力者とのコネクションだ。もちろん、コネクションは日本であっても海外であってもビジネスの基本だし、まして、未知の市場に参入する上では欠かせないものだ。
だが、アフリカでのコネクションは他地域以上にその使い方に注意をすることが重要だ。
日本企業の多くは、まず現地に駐在している日本人や日本貿易振興機構(JETRO)などの公的機関から情報を入手することだろう。弁護士や会計士、コンサルタントなど、まず事業をスタートするときに欠かせない人材を求める。
信頼でき現地で長年ビジネスをしている日本人からの情報は精度が高いだろう。これはもちろん疑いがないが、その先が問題だ。日本人が紹介したケニア人の会計士は確かに信頼できるかもしれない。だが、その先は心もとない。その会計士が紹介する現地スタッフは必ずしも信頼できるとは限らない。さきほどの述べた通り、アフリカでは部族や親族のつながりが多く、仮にある1人のスタッフに採用をすべて任せてしまえば、彼の親族や部族ですべてを固められてしまう可能性がある。
もう1つ、コネクションで注意すべきは政府要人との関係だ。ブルンジなどアフリカでは政府要人が強大な決定権を持っていることが多く、そうした人との関係がないと全くビジネスができないこともあるくらいだ。だからと言って、安易に政府要人とのコネクションを利用してしまうと後で困ることもある。ビジネスをスムーズにスタートできたのはよいが、その後、コネを持った人から何かとたかられるようなことが起こるからだ。
また、政権が一気に変わってしまうこともある。仮に前の政権と密接な関係を築いてきた場合は、逆に不遇な目に逢うことになるだろう。市場からの撤退を余儀なくされることも実際には耳にする話だ。
いずれにしても、すぐに相手を信頼せず、常に「だまされているのではないか」と冷静に確認をして一定の距離を保つことが肝要だ。
ここまで、アフリカでのマネジメントの特徴と難しさ、その対応方法を解説してきた。
常に相手を疑い、密告までさせる。そこまでしなければいけないのかと思う人もあるかと思うが、それがアフリカの現実だ。
アフリカ大陸は中国、インドに並んで10億人を超える巨大市場だ。ただ、中国やインドなど日本が戦ってきたアジア市場とは戦い方のルールが違うことを理解しておいた方がいいだろう。
ただ、強調しておきたいのはアフリカの人々の考え方が間違っているとか、悪人であるとかいうことでは決してない。日本人の文化と常識とは大きく違っているので、そこを理解して対策を講じる必要があるということなのだ。
元々、部族単位で太古の昔から生活をしてきたアフリカの人々を、欧州列強が勝手に国境を引いて分断、植民地化した。そうした歴史があるから、政府や企業などの組織を信用し奉仕するということは難しく、頼れるのは地縁、血縁、部族になる。
さらには、先進国との圧倒的な経済格差も厳しい現実として存在する。多くのアフリカ人がその日、その日の生活に追われ、必死に生きている。そうした環境下では「苦労せずになるべく楽をして、とにかく儲けたい」と思うようになるのは仕方のないことだ。そうした人たちに「計画性を持って仕事を遂行してほしい」とだけお願いしても、仕事が進まないのはある意味で当然だ。
悪い話ばかりのように思えるだろうが、実際には今回紹介したマネジメント手法から真にまじめで働きぶりのいい現地社員が見つかるのも事実だ。優秀な社員を得られれば、会社は飛躍的に成長する。リスクは高いが、いい人材を得られれば高いリターンを得られるのがアフリカでビジネスをする醍醐味でもある。
アフリカで上手にマネジメントをしている企業も実際には多い。アフリカ人材を活用できるようになれば、その企業はほかのどの地域に進出しても上手に現地の人材を活用できるようになるだろう。その意味で、アフリカ人材を制する者は世界を制すると言っても過言ではないと私は考える。