総合明治大学が女性の再就職支援に乗り出した 「学部以上MBA未満」の知識を5カ月で
結婚、出産、介護とさまざま理由でキャリアを中断し、もう一度社会復帰にチャレンジする“出戻りキャリア”を目指す女性たちに向けたプログラムが明治大学で始まった。これまでにも都内の女子大学などで行っている女性の再就職支援プログラムだが、明治大学は「学部以上MBA未満」の内容で、再就職後に管理職となる人材の育成に力を入れる。
120時間のプログラムを修了すれば、大学での学習実績を証明する「履修証明書」を受け取ることができ、希望者には同大学の関連会社から職業紹介も受けられる。
「ブランクが長くては…」本人も企業側も不安
9月上旬、明治大学駿河台キャンパスの教室に、賑やかな声が響いていた。教室にいたのは「スマートキャリアプログラム」の1期生たちだ。4月から始まった約5カ月間のプログラムの最終日で、この時間は就職活動に向けた面接対策など、仕事復帰のための講義を受けていた。
講義冒頭でプログラムに参加した感想を問われると、「このプログラムに参加したおかげで自分の進むべき方向性が明確に見えてきました」、「自己と向き合う時間が多かったおかげで、いろいろな面で自分が研ぎ澄まされた気がする」など、就職に向けて前向きなコメントが飛び交った。
いったん家庭に入った女性がもう一度社会で働くには、かなりの勇気が必要だ。パソコンは使えるか、退職前と変わらぬクオリティの仕事を自分が提供できるのかなど、思い悩む点は多くある。ブランクが長ければ長いほど、その不安は大きくなる。一方で、不安な気持ちは雇う側の企業も同じだ。一から教えなくてはできないような人材では、採用するにはリスクが高すぎる。この両者の不安を和らげるのが、同大学が打ち出した「スマートキャリアプログラム」だ。
充実のプログラムは“学部以上、MBA未満の授業内容”
プログラムでは、主に商学部とビジネススクール(専門職大学院グローバル・ビジネス研究科)の知的財産や人的財産を利用し、“学部以上、MBA未満の授業内容”を実現した。受講生はマーケティングや金融、財務の知識に加え、ライフキャリアマネジメントなど、もう一度働くうえで必要な講義をしっかりと受けることができる。
「金融・財務の知識がゼロの人でもわかるように教えています」と話すのはビジネススクールで教鞭をとる木村哲教授だ。木村教授が担当する「金融・財務リテラシー」の講座は、家計のリスクマネジメントなど受講生にとっても身近な内容から入り、財務諸表の見方や株式の知識など、専門的な領域へと学びを広げていく。
また、「マーケティング実践プロジェクトゼミナール」は、実際の企業から課題をもらい、受講生がチームを組んで取り組む講座だ。1期では人気コスメブランドのドクターシーラボや山崎製パンから与えられた課題に対して解決策を考え、最終的には両本社でプレゼンテーションも行った。
また、「マネジメント・サロン」では、実際にビジネスの世界で活躍する女性経営者をゲスト講師に招き、直接話を聞く機会を設けている。「ただ授業を受けるだけでなく、履修後もつながる新たなネットワーク構築の場にもなっているようだ」と話すのは明治大学社会連携事務室の望月利昭氏。就職だけでなく、起業を視野に入れる受講生もいるという。
プログラムは約5カ月間。大学または短期大学を卒業し、就業経験のある女性ならば誰でも応募できる。また、大学・短大卒でなくても、就業経験があり、個別の入学資格審査を通過した場合は、同等の学力があるとみなされ許可がおりる可能性がある。
修了要件は、必修科目72時間と選択科目48時間、合計120時間以上の講座を履修することだが、1日2コマ(10時30分~12時、13時~14時30分)、週4日で満たすことができる。受講費用は9万8000円。内容からすれば決して高い金額ではない。
「1期生は20代から50代まで幅広い年齢層の受講者が見られた。子育てや介護などの理由で数年もの間、家庭に入っていた人をはじめ、育休中の人もいる。このプログラムが、能力ある女性のみなさんの再就職に向けた一歩を後押しできればと願っている」(望月氏)。
修了生には大学の関連会社、明大サポートによる就業支援サービスを提供し、入学から実際の再就職までトータルでサポートする方針だ。
講義は14時半まで、宿題もなし
履修証明制度とは、社会人が大学などで専門的な知識を増やし、その成果を職業キャリアに活かすという観点で創設された文科省が推奨する制度だ。明治大学ではこれまで、主に夜間のプログラムとしてこの制度に基づくプログラムを開設していたが、もう一度社会に出ようと頑張る女性を応援するため、2015年の春から平日昼間に受講する「スマートキャリアプログラム」を開講した。
家庭生活との両立がしやすいように講義は毎日14時半には終わる。宿題などの持ち帰りがないようにと、すべて時間内で講義が完結するように工夫されているのも特徴だ。1期生は42人。木村教授は「本当に有能な人たちが受講している。昼休みには受講生からの質問が殺到し、学びへの意欲の高さはMBAの学生と変わらない。ブランクの溝を知識で埋めて、力をつけて社会へと復帰してほしい」と語る。プログラムの途中ですでに就職が決まった人もおり、就職先として企業側の反応も上々だ。
9月には10月から始まる2期生の募集も始まっている。こうした取り組みは今後、女性の仕事ブランクを埋める場として、再就活女性、採用側の両者から期待が高まりそうだ。